

・ジェーン・ロメロについて知りたい!
・どんな固有パーク持ってるの?
・背景物語も教えて!
とDBDのサバイバー、ジェーン・ロメロのについて詳しく知りたい方向けの記事となっています。
ジェーン・ロメロ「固有パーク
| パーク名 | カテゴリー | 実用度 |
| 連帯感 | 自己治療 | ★★☆☆☆ |
| 平常心 | 隠密 | ★★☆☆☆ |
| 真っ向勝負 | キラースタン | ★★★★☆ |
連帯感

| 発動条件 | ・医療キットを使わず生存者を治療する |
| 効果詳細 | ・負傷時に医療キットを使わず生存者を治療すると、(40/45/50)%の変換率で自分の傷も回復する。 |
平常心

| 発動条件 | ・発電機の修理が完了 |
| 効果詳細 | ・発電機の修理が完了した後、(6/8/10)秒間赤い傷マークを残さなくなる。 |
真っ向勝負

| 発動条件 | ・3秒間ロッカーの中に入る |
| 効果詳細 | ・3秒間ロッカーの中に入ると発動可能になる。真っ向勝負が発動可能な状態で勢いよくロッカーを飛び出すと、有効範囲内にいる殺人鬼を「3秒間」怯ませる。 ・疲労のステータス効果を(60/50/40)秒間発生させる。 |
| 注意点 | ・真っ向勝負は疲労時には使用できない。 ・頭の上にカラスが飛んでいる場合は使用できない。 |
ジェーン・ロメロ、背景物語

ジェーン・ロメロは有名女優ロレッタ・ローレンスの娘であったが、母親のことは全く覚えていなかった。ジェーンがまだ赤ん坊の頃、両親は母親が撮影のために頻繁に家を留守にしているというのが主な理由で別居したためジェーンは売れない視覚芸術家である父親に育てられた。
自分の人生に関与しようとしない母への恨みと、スクリーンで存在感を放つ母への羨望。 2つの相反する感情を持ったままジェーンは成長した。
十代の頃、ジェーンは密かに母の才能と張り合おうとした。劇で演出や演技を担当し、テレビCMのオーディションを受け、父のアトリエの手伝いもした。高校3年生で参加した全国弁論大会で最優秀賞を受賞したとき、ジェーンの実力に注目したラジオ局からインタビューがしたいと連絡があった。
生放送中の自然な魅力とウィットに富んだ受け答えがスタッフの印象に残り、ジェーンは局でのパートタイムの仕事を依頼された。
大学でのコミュニケーション学を修めて卒業した後は局の仕事を辞め、流行を発信するバラエティー番組の仕事をするようになる。
だが、歯に衣着せぬ物言いとアドリブでの発言は番組を取り仕切る上層部からは歓迎されず、5ヶ月後にはクビを言い渡された。以前勤めていたラジオ局の番組にも話をしてみたが、ジェーンの企画はリスクが高すぎるとして断られた。
4ヶ月後、ジェーンが出演していた番組の再放送を見たという、あるプロデューサーから1本の電話がかかってきた。クイック・トークという落ち目の番組のテコ入れを図るため、司会者をもう1人探しているという。
生放送というのは長時間の拘束に加え、安い給与や職の不安定を意味していたが、番組へ出演し意見できる機会を与えられるということでもあった。
ジェーンはクイック・トークの下品で人を煽るような方向性に異議を唱え、個人的な問題を扱った、視聴者の共感を呼ぶ内容を推薦した。
ジェーンの誠実な語り口はすぐに視聴者の心を捉え、視聴者数は順調に伸びていった。
2年後、1時間枠のジェーン・ロメロ・ショーが始まる。全国放送のこの番組は、ジェーン自身の親から放棄されたことへの葛藤など、タブーな話題も取り上げた。
ジェーン・ロメロ・ショーは数々の記録を塗り替え、ジェーンのイニシャルであるJ・Rは美容クリームからアクセサリーに至るまで登場し、ジェーンの代名詞となった。
しかし、それだけでは満足できなかった。自分の軌跡を世間に知ってほしいジェーンは、幼い頃の母親の不在をつづった回想録を出版する。
回想録はたちまちベストセラーとなったが、厳しい批評にさらされた。批評家の意見は、個性のない退屈な自己啓発で味付けされた悲劇の秘話だった。
ジェーンは批判を重く受け止めた。それは自分自身の成功にも関わらず、心の裏側にある声は、その成功に疑問を感じ始めていたからだ。
彼女の成功はさらに過密なスケジュールと、視聴者の期待に答えなくてはならないという重いプレッシャーを生み出す結果となった。
特に忙しかったある週、ジェーンはいつものコーナーを中止し、代わりに2時間の離婚特集を組んだ。ジェーンのストレスが限界に達したのは、母親が自分の番組に出ることに合意したことを知ったときだった。
平静を装ったまま番組を開始するジェーン。大部分は何事もなく進行したが、セットに登場した母親が観客に暖かく微笑むと、不快感で胃が飛び出しそうになった。
それまでずっと自分を苦しめてきた激しい嫉妬がジェーンを飲み込んでいく。引きつった笑顔のまま番組を進行させるのも限界に達したのは、母親のロレッタがジェーンの発言を遮ってこう言った瞬間だった。
「自分たちは本当の親子じゃない。」
その後、インタビューは大混乱のまま終わった。
番組終了後、ジェーンはニュージャージーに住む父親の家に向かって車を走らせていた。
最近の自分はどう考えてもおかしい、父親といろいろなことについて話す必要がある。大渋滞を避けて海岸沿いの高速に乗ったジェーンは、一日中悩まされていたこめかみに感じるズキズキとした痛みを止めようと何錠か頭痛薬を飲んだ。
その後リラックスし始めてラジオを点けると、クラシックが流れてきた。車はゆっくりと走っていた。道路が凍結しているせいで、帰り道を急ぐ車が渋滞を起こしている。夜の闇があたりを包む。
暗闇が視界の端をぼやけさせ、ヘッドライトの光が赤い渦巻に変わる。ジェーンは強く瞬きをして、視界の輪郭に目を凝らした。
だが、目を閉じるたびにまぶたは重く、鈍くなり、もう開くことができなくなった。
翌朝、ジェーンの車が警察によって水中から引き揚げられた。何週間にもわたって入念な捜索が行われたが、ジェーンの遺体は発見されなかった。
ジェーン・ロメロ・ショーの放送と制作はジェーンの葬儀が終わるまで中断され、葬儀にはジェーンの両親も出席した。人々がジェーンの死を悲しむなかJ・Rグッズの売れ行きは急増し、1ヶ月後には番組の全エピソードが再リリースされた。
ジェーンの永遠なる安らぎを願う、オープニング・クレジットが添えられて。
アーカイブストーリー「学術書Ⅱ」
記憶5823
ジェーンは求職中だ。
仕事はある。
地元の食堂でウェイトレスをしている。
だが、 他の種類の仕事が必要だ。
役割。
演じる役。
何か。
正しい道を歩んでいると実感させてくれる何か。
自分には学生のバラエティーショーを演じる以上の実力がある。と実感させてくれる何か。
演劇は愚か者のすることだ!成功する者は一億人に一人もないだろう。父親は言う。祖父は同意するが、ついでに一言加える...
夢を追う勇気がある者は、99%の確率でその億に一になれる。勇気を持て。勇気は運をこちらに引き寄せてくれる。ジェーンは祖父を愛している。祖父に誇り思って 欲しい。彼が正しいことを示したい。
億に一になってやる。
記憶5824
メキシコ人ウェイトレスは、メキシコ語と、メキシコ訛りのある英語で喋る。
誰がこんな台本を書いた?メキシコ語なんて言語はない。それはどうでもいい。言いたいことはわかっただろう。彼女の顔は苛つきで火照る。訛りなんて必要ない。
どうして?
どうして訛り?
なぜただのウェイトレスではだめなのか?英語を喋るウェイトレス。どうしてこの台本ではウェイトレスがメキシコ人でないといけないのか?どうしてこれがシーンに重要なのか?
ジェーンは監督を見つめ、彼の意図を理解しようとする。趣を与えるためだってどういう意味?趣を与えるなんて思えない。固定概念を増長するだけ。だがジェーンは何も言わない。
何も言わないのは、社会正義の戦士としてブラックリストに載りたくないからだ。少数派不満分子なんて言われたくない。スペイン語の訛りを少し混ぜて、彼女はオーディションを終える。
記憶5825
ジェーンは友人のドゥエインとビールを分かち合う。ドゥエインはジェーンに、なぜエグゼクティブクリエイターにひどい台本の共著者として雇われたのかを話す。
彼の呆れた考えの代弁者として雇われたのだ。彼のアフリカ系アメリカ人の歴史に対する無神経な文化的認識を正当化するために。
このエクゼクティブクリ エイターはマイノリティ映画を撮りたいと思っている。流行っているから。認められるのに手っ取り早いから。ヘボライターのためのお手軽出世街道。
たくさんのライターがこのヘボに、あらゆる面で彼の台本が間違っていると指摘した。
構成が悪い。
侮辱的。
退屈。無神経。
ドゥエインは、伝統文化に対して無理解な台本を否定した。このクリエイターが文化の盗用で非難されるのを避けられないように、彼の名前をプロジェクトに加えることを拒否した。
マイノリティの物語の「栄えある」解釈を正当と認めるのを拒否した。クリエイターはドゥエインを社会正義の戦士と呼んで名誉を傷つけた。そして解雇した。
ジェーンは友人のために悲しげにため息をつく。少なくともその台本は映画化されない。ドゥエインはちらりと疑惑の眼差しをやる。このへぼには金持ちの友達がいる。
大金持ちだ。
彼はまた台本を書く。
監督する。
そして制作する。
有力筋の友達がいるヘボは何でもできる。こうしてひどい映画が作られていく。彼らは酷い映画で乾杯する。ジェーンは笑う。面白いからではない。それが事実だからだ。
記憶5826
働かなくなってから何ヶ月も経つ。電話もない。オーディションもない。何もない。
ジェーンはからっぽのテレビ画面を見つめる。子供の頃は自分がテレビに出るのをよく想像していた。だが今は全く想像できない。
何かがおかしい。自分が成功する未来がもう見えない。機会があればいいのに。ただ一度だけの機会。億にーになるための、一度の機会。
だが彼女向けの台本はほとんどない。固定概念が邪魔している。エージェントは気にしないでいいのに。年齢の範囲に当てはまる、すべての女性役に推薦してくれればいいのに。
ジェーンはどんな女性役でもできる。主役でも脇役でも。それなのにオーディションは、セクシーなラテン人だったり、滑稽な移民だったり、訛りのあるウェイトレスだったり。
ただの女性・アメリカ人女性だったことはない。
女性。
アメリカ人。
それだけなのに。ジェーンは真っ白なテレビを見つめる。番組のスターである自分を想像しようとしたができない。
電話が鳴る。
エージェント。
オーディション。
舞台の大役で給料もいい。一瞬、ほんの一瞬だけ彼女は億に一になった気分になる。
記憶5827
ジェーンの携帯が鳴る。彼女は歩道で立ち尽くす。これが最後なのに、電話に出たいのか出たくないのかわからない。
もう落選はできない。この役だけは。この役はとても重要なのだ。
ジェーンは携帯を耳に当てる。電話に出る。聞き覚えのある声がする。
エージェントだ。
彼はジェーンにオーディションでどれだけ受けが良かったか伝える。どれだけ皆がジェーンを素晴らしいと思ったか。彼は他のことを話し始める。
ジェーンは「でも」を待つ...お馴染みのあれ...どんなにたくさんの賞賛も、たった一つの言葉で全部破壊される...
でも...
それは来ない。ジェーンは細々とした連絡を聞き、礼儀正しい落選の知らせを待つ。けれどかわりに聞こえたのは...
受かったよ...
ジェーンは自分の耳が信じられなかった...役に受かったよ...ジェーンは独り言を呟く。受かった。信じられなくて顔が麻痺して いく。
ジェーンは叫ぶ。
通りがかりの人がこちらを向く。ごめんなさいね。
記憶5828
ドゥエインはカフェでジェーンのリハーサルの手伝いをする。休憩に入ると、ドゥエインはジェーンに、ヘボライターは今中国の物語を手掛けていて、彼の最新の中国嫌悪を正当化させるために、中国人ライターを必死に探していると伝える。
ジェーンは笑う。
金はあるヘボ。
そうやってひどい映画が作られる。ジェーンはドゥエインに、舞台はうまくいっていると言う。訛る必要はない。ミニスカートを履いたり、バカバカしい固定概念を増長する必要はない。
昔やらされていた愚かな行為を、今はする必要がない。
本物の仕事。
意味のある仕事。
家族にも伝えられる。
彼女は幸運を願いながらテーブルをコンコンと叩く。ドゥエインは笑って、その儀式は効果があるのかい?と聞く。ジェーンは肩をすくめる。ドゥエインはジェーンの成功が嬉しいと言って、雑誌からの切り抜きをジェーンにわたす。
「クイック・トーク」の公開オーディション。
ドゥエインはジェーンを推薦しておいたと言う。ジェーンなら完璧な司会が出来るだろうと。ジェーンはドゥエインに感謝するが、今は舞台に全力を注いでる。
残念だ。
君は僕が知っている中で一番リアルな人間だ。ショーに必要なのはそれなんだ。リアルであること。
記憶5829
こけら落とし前の最終リハーサルで、滑り込みの台本変更にも関わらず、ジェー ンは役を演じきった。ジェーンはアドレナリンと、今までに経験したことのないような大きな流れを感じる。
最後の台詞を言い終えると、監督は拍手をする。そしてジェーンに近づく。
驚いたと。
印象的だったと。
感動したと。
でも...
ジェーンの役はアクセントがあったほうがいいと思うと。何?その要求はジェーンを傷つけた。
粉々にした。
どうして?
理解できない。
ウケ狙いだよ。
そっちの方が面白いだろ、と。この役にアクセントはいらない。この役はアクセントなしで十分だ。でもコミックリリーフになる。
コミックリリーフ?
それがこの監督にとっての彼女の価値。プロデューサーたちにとって。この業界にとって。コミックリリーフ。
ジェーンは監督を見つめる。
監督が笑い出すのを待つ。
監督が冗談だと言うのを待つ。
決して言われない謝罪を待つ。
ジェーンはため息をつき、先祖の力が血管を巡るのを感じる。裏切る事を許さない力。アメリカ人である事をあらわす痛々しいイメージが増長されるのを許さない力。
ジェーンは監督に向かって首を振る。馬鹿なコメディアンでも探して。ジェーンは舞台から怒って降りる。己の道を辿る者は、可能性が億に一だとしても成功するんだって?
そんなの嘘だ。
~おしまい~
アーカイブストーリー「学術書22」
記憶 4573

ジェーンは虚ろな目でテーブルの上座に座っている。隣では番組のプロデューサーたちが取り扱うストーリーのアイデアをあれこれと吟味している。カリフォルニアの裕福なコミュニティで犬を救助する話。
生き別れになった双子が歯医者の会議で再会する話。まるっきりケーキに見えないケーキを作る話。ジェーンはため息をつき、こめかみをこすった。番組がここまで来たのは、ケーキなんかの話をしたからじゃない。
つまらない話題は要らないわ。何か中身のある話はないの?シニアプロデューサーのテレンスがノートパソコンの画面を目を細めて見つめた。
あるかもしれない。ブルックリンに住むある母親が行方不明になった娘の情報を探している。娘さんはドキュメンタリー映画作家。北部の刑務所で父親の殺人犯にインタビューをしている間に行方不明になったそうだ。
この話には面白い要素がたくさんある。人を失う悲しみとかギャングの暴力とか人種差別とか。ジェーンは彼の素っ気ないドライな話し方に顔をしかめたか、身を乗り出した。
それから?
えっと・・・
母親は自分で調査していて・・・
かなり突拍子もないことを言っている。
刑務所の看守にも話を聞いていて、刑務所で急に寒気がし出したとか、彼女が姿を消してから囚人たちが狂暴になったとか・・・放送できないような内容をね。彼女をスタジオに呼びましょう。
直接インタビューをして二人の関係に焦点を当てるの。彼女が話題から逸れないよう私が誘導する。奇妙になりすぎた部分はカットすればいいでしょ。
エグゼクティブプロデューサーがやっと携帯の画面から顔を上げる。反対だ。超常現象の話じゃ、スポンサーは首を縦に振らないよ。
この番組の視聴者向けじゃないからね。チャーリー、こんな興味深い話、放送すべきでしょ。チャーリーが肩をすくめる。
これは生放送じゃないからな。確かに突飛な部分は編集にカットさせればいいもんな。このインタビューの後に犬の救助の話でも流せばバランスが取れるだろうし。
ジェーンが何か言おうとするが、それを飲み込む。彼女はチャーリーと交渉するタイミングを心得ている。そして、巧みなインタビュー術も。
記憶 4574

ヌール・カッシルは目を大きく見開いて、忙しいセットの様子を眺めている。
ジェーンはゆっくりと息を吐き、自分がクイックトークのセットに初めて立ったときの緊張感を思い出す。
たくさんの人がいて慌ただしく見えるかもしれないけど、覚えておいて。ステージに立ったら、あなたと私だけだから。自分がここにいるのが信じられないの。
毎日あなたの番組を見ているので・・・ジェーンが微笑む。
楽しんでくれてるのなら嬉しいわ。彼女がゲストと一緒にスナックを乗せたテーブルの方へ行こうとすると、せかせかした制作アシスタントがやって来て、別の場所へ移動させようとする。カッシルさん、メイクアップに行ってください。
ヌールが頷くとアシスタントが彼女を別の部屋に連れていく。ジェーンも自分の楽屋に向かう。そこではテレンスがクリップボードを手にして待っていた。
ジェーン、彼女との事前インタビューは大変だったよ。彼女は娘の失踪に関して持論をどうしても話したいようなんだ。できれば刑務所の話は避けたほうがいいな。
でも会話がそっちに進んだら、話すことになるでしょうね。
彼女はクリップボードを手に取り、出番の前に情報を頭に詰め込む。そして鏡でサッと自分を見てから息を吸ってステージに向かった。テーマソングが流れる中、観衆が拍手と歓声で彼女を迎える。彼女はトレードマークの笑顔でそれに応える。
彼女はオープニングの軽い冗談を言い終えると、少し間を取って観客を落ち着かせ、真剣な表情を浮かべた。今日の最初のゲストは、波乱万丈の人生で悲しい出来事を経験してきました。
それは苦悩、喪失、そして希望の物語です。さあ、拍手で迎えましょう。ヌール・カッシルさんです。観衆の温かい拍手に迎えられ、ヌールがステージに上がってジェーンのそばに座り、二人が話し始める。インタビューは物語の初めまで遡った。
ヌールの新しい国への移住、90年代にニューヨークで直面した困難、娘の誕生。彼女は幼かったころの娘について話しながら、必死に平常心を保とうとする。
そして熱心に話を続ける。ほとんど質問をする必要がないほどだ。観客はヌールの一言一言に耳を傾けている。でも、ジェーン。私が本当に話したいのは、黒い霧のことなの。彼女のイヤホンからチャーリーの声が響く。ジェーン、その話題は避けろ。ジェーンはそっとイヤホンを抜き、前のめりになる。
黒い霧?ヌールは勇気を出してカメラを見つめた。看守から黒い霧のことを聞いたんです。黒い霧について何か知っている人がいたら、どうか知らせてください。すると突然ジェーンのテーマソングが流れ始めた。
ヌールはショックを受け、少し傷ついた様子でジェーンを見つめる。ジェーンがブースのほうに目を向けると、ガラスの向こうのチャーリーが手で首を切る素振りを見せる。この部分はカットだという意味だ。ヌール、今日は話を聞かせてくれて本当にありがとう。アシスタントがヌールにステージを降りるよう合図する。
彼女は立ち上がってジェーンを抱きしめ、当惑した表情でその場を去った。人間の粘り強さに満ちた素晴らしい話でしたね。次は、愛犬のおかげで火事から救われた女性に話を聞きましょう。彼女は犬への恩返しとして、自分のコミュニティで犬の救助活動を始めたそうです。
記憶4575

ジェーンはチャーリーのオフィスに飛び込み、ドアをバタンと閉めた。
素晴らしいインタビューだったのに・・・あんなふうに彼女の話を遮るなんて信じられない。テレンス、折り返し電話するよ。切らないで。彼にも聞いてほしいの。
スピーカーに切り替えて。チャーリーは動じることなく椅子の背にもたれかかる。ジェーン、最後の部分はカットされたよ。最初の方にいいネタがいっぱいあったから、それを使ったんだ。
テレンスがスピーカーから割り込む。でもね、オンライン制作チームに連絡がうまく伝わっていなかったらしくて…最後の部分を含むバージョンがソーシャルメディアに投稿されたんだ。みんなの話題は黒い霧のことばかりさ。
チャーリーは歯を食いしばる。俺の番組を台無しにされたらたまらない。陰謀論を取り扱うAMラジオの意味のない番組じゃないんだからな。
ジェーンはすっと立ち上がり、チャーリーの目をまじまじと見つめる。この番組はタブーな話題も取り上げることで、ここまで来たんでしょ。
モーニング・トゥデイがこの件を取り扱うと思う?ヘザーが検討するとでも?チャーリー、私たちは特別な番組を作っているの。
それに、今回の件は話題になってるんだし、スポンサーだってきっと理解してくれるはずよ。ジェーン、番組は立ち直れないかもしれないぞ。一度奇抜なイメージがつくと、視聴者からはそれしか求められなくなる。
この件から挽回できるようなネタはあるのか?スピーカーから再びテレンスの声が流れる。それが・・・面白いことにね、単にうるさい反応もあるけど、この件に関してかなり興味深い電話がかかってきている。友人や家族が失踪したという人たちがいて・・・みんな黒い霧が関わっていると言うんだ。
チャーリーが冷笑する。だから何だ?奇妙な話を流せば、奇妙な電話がかかってくるもんだろ。それだけじゃない。感情の爆発だとか恐怖だとか気温の低下だとか、何人かと話をしたけど、みんなカッシルさんの話とまったく同じなんだ。テレンス、俺たちは怪奇な話はやらないよ。
ジェーンはドアに向かった。テレンス、この件についてまとめたものを送ってちょうだい。この件は私が追うわ。それからもうひとつ。チャーリー・・・これはあなたの番組じゃない。私の名前がついてるでしょ。私のやり方でやらしてもらうわ。
記憶4576

それから1か月の間に制作チームは丸1週間番組を埋める数のインタビューを手配した。ジェーンは事前のインタビューや話の類似点やゲストの気持ちなどを確認して、念入りに準備をした。夜は毎晩、寝返りを打ち、十分に眠ることもできなかった。
目を閉じるといつも、黒い霧がベッドや防音スタジオや楽屋のドアの下に立ち上がってくるのが見えた。もし自分が消えた本人だったら、誰が私の話をしてくれるだろうか・・・?
彼女がインタビューの方向性を決めたのも、眠れぬ夜を過ごしているときだった。友人や家族を失った人には、彼らとの思い出話に重点を置いてもらおう。ある女性は元同僚について語り出した。
それは彼が失踪するずっと前のこと。彼は内気な男性だったが、暴君のような上司に立ち向かう勇気を持っていた。ジェーンは彼がどんなに物静かで優しかったか尋ねる。
そしてどれほど強い道徳心を持っていたかを。彼は正義を貫くために多額の和解金を拒否していた。その女性は毎年数人の同僚と集まる際にかつては昔の上司の悪口を言い合っていたが、今では元同僚ドワイトとの楽しい思い出を語り合っていると話した。
ある母親は心を痛めながら娘の失踪について語った。彼女の娘は有望な若い科学者で、彼女は娘のことを理解しきれなかったが、心から愛していた。
彼女は娘が通っていた学校のこと、娘が失踪した後にその学校が彼女のノートを使って植物学の入門カリキュラムを作成したこと、そしてそれが何人もの子供たちに自然科学を学ぶ楽しさを気づかせたことを話した。
ある若い男性は市立図書館に人生を捧げた母親のことを話した。話題は母親の失踪に移り、ジェーンは不可解な話も避けずに続けた。男性は母親が姿を消したあと毎日図書館に通っていたが、地下室に行くたびにこの世のものとは思えない恐怖を感じていた。そしてジェーンに思い出話に戻るよう促され、母親のことを回想した。彼の母親が近所の子供たちに文学を学ぶよう励ましたこと。子供たちに本の読み方や読書の楽しさを教えたこと。宝物のように本を大切にしていたこと。
そして、何百人もの若者が市内各地から彼女の葬儀に駆けつけたこと。日本から交換留学中のある大学生は、アメリカに来る前に出会った英語の先生のことを話した。その先生のおかげで教室は言語と文化への愛で溢れ、生徒たちは毎日楽しく英語を学ぶことができた。
その後、その大学生を含む多くの生徒が優秀な成績を収め、英語圏の国に移住して生活を楽しんでいると語った。話の鍵となる要素は、いつも同じだった。奇妙な失踪。不自然な出来事。
黒い霧。番組ではそのどの部分もカットされずに放送された。しかしソーシャルメディアの反応は以前とは違っていた。それはもはや物語の不気味な側面にこだわるものではなく、失われた大切な人々を讃える内容だった。週末に数字が発表され、初めてジェーンの番組がその時間帯で1位になった。
それも断トツの1位だ。
彼女の家にはチャーリーから花が届いたが、彼女はそれを送り返した。賞の噂も囁かれる。全てジェーンのやり方で得た結果だった。しかし、まだ何かが彼女を悩ませていた。彼女はあちらこちらにあの黒い霧が漂うのを思い浮かべずにはいられない。テレンスが楽屋のドアをノックし、彼女が彼を部屋に入れる。
やあ、ジェーン。
今週番組でやった内容のことなんだけど。
ネットワークは何て言ってる?そういう話をしに来たんじゃないんだ。それはチャーリーに任せればいい。実は君に感謝したくて・・・
感謝?どうして?
テレンスはポケットに手を突っ込んで、ぎこちなく身をよじる。僕は本物の仕事をするためにこの業界に入った。人々の真摯な姿を伝えるためにね。
なのに、ネットワークの別の番組で20年間務める間、「ママ」と鳴く猫やら流行のダイエットやら、くだらない話ばかりに関わってきた。
でも君の番組は違った。今週は特にね。ジェーン・・・君と仕事ができて光栄だよ。ジェーンが椅子から立ち上がり、テレンスを抱きしめる。
ありがとう。
今の私には、その言葉を聞く必要があったみたい。
記憶4577

冗談でしょ。ジェーン、いいかい、これは俺のアイデアじゃない。
上層部のものなんだ。ジェーンがチャーリーをじっと見つめる。
そこにいつもの素っ気ないチャーリーはいない。妙に不安げだ。|もう誰も不可解なことなんて話題にしてないでしょ。
またそういうことを掘り起こして欲しいの?
ロケ撮影?
そんなことしてこなかったのに。
誰かは知らないが、役員の誰かがあの話を放送したことに激怒してるらしい。
奇妙な噂をきっぱりと否定したいと言っている。刑務所に行って誰もいない建物を見せて、不可解なものは何もないことを見せればいい。
そして金曜の放送の最後に入れるんだ。私がイヤと言ったらどうなるの?番組から下ろされるの?テレンスが腕を組む。そんなことしたら、僕も含めてチームの半分を失うことになるぞ。
チャーリーはコップの水を飲み干し、もう一杯注ぐ。彼のこんな姿をジェーンは見たことがなかった。彼の額に汗粒が光る。ジェーン、今の君は最高の視聴率を誇っている。
番組の数字を見ると、正直言って、俺もこんなことには反対だ。いいアイデアだとは嘘でも言えない。
でも・・・チャーリーは声を低くする。彼らがなんとしてもこの話を葬ろうとしている様子からすると…逆らわないほうが身のためだ。資金提供者からの要求だからね。かなりの力を持っている…お願いだ。現地に飛んで、誰もいない廊下を少し撮影して戻ってきてくれ。
チャーターしたジェット機で往復すれば、夕食前には戻ってこられるさ。ジェーンの頭に馴染み深い恐怖が蘇ってくる。
チャーリーの表情を見ると、彼も同じ恐怖と戦っているようだ。今回は引き下がらないだろう。かなり追い詰められている。わかった。やるわ。手配してちょうだい。
さっさと片付けてしまうから。でも、ひとつ貸しができるわね。チャーリーは深いため息をついた。ありがとう。さすがジェーン、頼りになるな。
それに最悪の事態でもないだろう?会社のジェット機に数時間乗って、数分撮影して帰ってくるだけの話だ。もっと嫌な時間の過ごし方ならたくさんある。
ジェーンは唇を噛んだ。そして頭に思い浮かべる…
あの刑務所。
あの霧。
あの寒さ。
あの感情。
そうね。最悪の事態って何かしら。
~おしまい~