・山岡凜について知りたい!
・学術書20の物語を読みたい。
・アーカイブムービーも見たいな!
とDBDのキラー、山岡 凛のアーカイブストーリーについて詳しく知りたい方向けの記事となっています。
山岡凜アーカイブムービー「学術書20」
学術書20で物語と一緒に解放された、アーカイブショートムービーになります。こちらも合わせてご覧ください。
山岡凜アーカイブストーリー「学術書20」
記憶 3916
父は凛の真向かいに座り、静かに夕食を取っていた。凛は時々父をちらりと見やる。じろじろと視線を向けることを咎められないよう慎重に。何か様子が違っていた。
仕事の後は特に無口な父ではあるが、今日は何か思い詰めているようだ。料理を突き刺しながら、独り言をつぶやいている。まるで誰かに返事をしているようだ。
母は何事もないかのように振る舞いながら、凛に一日の様子を聞いてくる。普通にいい一日だったよ。肉の欠片を皿の端から端に動かしながら彼女は言う。
嘘だ。しかし、母の心配の種を増やしたくはなかった。母も最近、様子がおかしい。寝起きが悪く、何度か彼女が泣いているのを耳にした。
食べ終わると、凛は皿を片付けてから宿題に取り掛かった。今日の稽古は済んだのか?父の声にビクッとなる。スタッカートの利いた鋭い声。
この後でやるつもり。父は一瞬怒りで顔を歪めたが、すぐにそれを抑え込んだ。忘れずやるんだぞ。
記憶 4058
凛は木の床に座っていた。周囲の壁は変な形に歪んでいる。屋根があるにも関わらず、雨が彼女の頭上に降り続ける。
落雷か交通事故かのような衝撃音が彼女の背後から鳴り響いた。彼女は慌てて振り返る。先程まで壁だった場所に扉が出現していた。そして扉の中に立っているのは刀を持った人影。
凛は跳び上がって走り出す。地面は滑らかな木製からツルツルとしたコンクリートに変わり、一歩進むたびに滑らないよう全神経を集中させなければならなかった。
自分の足音に加えてかすかに風切り音が聞こえてくる。肩越しに後ろを見ると、人影が徐々に迫りつつあった。コンクリートを突き破ったゴツゴツした根が彼女のつま先を絡め取る。
凛は地面に倒れ込む。肘と膝に痛みが走る。這って逃げようとしたが、足首を掴まれ引きずり戻された。
彼女は振り返って両手を挙げ、せめて身を守ろうとした。顔を上げて相手を見る。父親だ。
それは間違いなく父であったが、表情は別人のように歪み、不気味な笑みを浮かべていた。父親は刀を持ち、まさに稽古で教えられた通りにそれを振り上げて凛にとどめを刺そうとしている。
歯擦音が聞こえてくる。何か言葉を発しているようだが凛には聞き取れない。聞こえるのは口から気流が漏れ出す音だけだ。
男の背後に広がる闇から巨大な白い何かが恐ろしい速度で迫ってくるのが見えた。凛は指をさして警告しようとする。しかし男は笑って、刀を頭上に振り上げた。
あるものが視界に入り、凛は腕を下ろした。蛇だ。凛は叫ぼうとしたが、声が出ない。蛇が父と刀を丸ごと飲み込むのをただ見ているしかなかった。凛は息を切らしながら目を覚ました。
記憶4112
ただの夢でしょ、凜。か弱いが安心感のある母の声。凜はベッドで横になる母の隣で床に座っている。普通の夢には思えなかった。
膝を抱えて、その上に顎を乗せる。これまで学校を休んだことはなかったが、昨夜はほとんど眠れなかったせいで、通学中に自転車に乗りながら気を失ってしまうかもしれない。
母親がため息をつく。半分はあきれて、もう半分は痛みのせいでお母さんも昔は悪い夢をよく見たわ。
そうなの?どんな夢だった?
そうねぇ、いろいろよ。お父さんがクビになる夢とか、あなたを失う夢とか。悪い夢を見るときはね、ストレスが溜まりすぎてるって体が教えてくれてる証拠なのよ。
何をすれば悪い夢を見なくなった?特に何もしてないわ。脳が必要な分だけ成長したんじゃないかしら。抱えていた悩みが解決したのね。
凜はこちらに向けた母の顔を見る。母は明らかに辛そうなのに微笑んでいる。
でもね、クモの夢は今も見るわ。クモの夢?そう、大きくて毛むくじゃらのクモの夢。ぎょろっとした大きな目のクモが天井から落ちてきて一母の手が伸びてきて凜の頭を掴むと、指で髪の毛をぐしゃっと乱す。
凜が頭を引いて笑いながら言う。もう、お母さん!凜、今日は何もせず休みなさい。宿題も稽古も忘れて、今日はゆっくりすればいい。大丈夫よ、すぐに怖い夢なんて見なくなるから。
記憶4175
雨はいい意味だって書いてあるよ。
凜は弁当から七海の方に顔の向きを変えた。彼女は夢占いの本を膝の上で支えながら、もう片方の脚には弁当箱を置いてバランスを取っている。
春の雨が新たな始まりを告げるみたいな感じじゃない?
千秋が笑う。
刀を持って追いかけられる夢が生まれ変わりを意味するなんて信じられない。刀については、なんて書かいてあるの?七海が弁当を床にこぼしそうになりながら、ぎこちなく本をめくる。
それは・・・あんまり関係なさそうかな。凛は小さな声だが力強い口調で友人に言った。いいから読んでみて「刀は力や強さの象徴で、大抵の人は自分が刀を持つ夢を見ます」だって。
千秋が手に持ったチョコレートバーで七海を指して笑う。ほらね、凛。その刀を奪っちゃえばいいんだよ。今度またその夢を見たら、力を奪ってやりな。
自分で見る夢を変えるなんて無理だよ。いつも同じ内容なんだ。学校のチャイムが鳴り、七海が床から跳び上がってメガネを押し上げた。
ほら行くよ、遅れちゃう。千秋はチョコレートバーを振りながら今度はそれを凛に向ける。お菓子のクズが廊下の床に散らばった。
凛が遅刻なんて気にすると思うの?今や不良の仲間入りだよ、きっとサボる気だって。そうでしょ?あのときは体調不良だったんだってば。
はいはい体調不良ね、わかってるって。
私、森本先生嫌いなんだよね。サボろうよ。
記憶4222
凜はまた夢を見ている。木の床だ。天井から雨が降ってくる。背後で衝撃音がする。今回は振りむくこともしない。
正体は分かっている凜は立ち上がって走り出す。全身がゼリーでできていて、水中を走っているような感覚だ。地面を見渡し、あの根っこを探す。
見つけた。飛び越えようと試みる。根っこをよけることはできない。その根は曲がりくねって空中でうごめき、彼女を掴んで地面に引き寄せる。
あの痛みが再び体の節々に枝分かれし、彼女の体はまた仰向けに転がされる。見上げると、そこにはまたあの笑みを浮かべた父がいる。蛇の威嚇する声が徐々に大きくなる。
彼女は父に向かって叫ぼうとした。どうして?その問いに答えるように父の口が動くも、実際に声は出てこない。
そして彼が一撃を繰り出そうとする瞬間に蛇がまた父を丸飲みにし、凛の目が覚めた。ベッド横の時計を確認する。朝の三時だ。今日はもう眠れないだろう。凜は座って壁をじっと見つめ、夜が明けるのを待った。
記憶4260
母から強く勧められ、彼女は今日も家に閉じこもっていた。
しかしその母は自分のそばにいられるような状態ではない。母には睡眠が必要だ。
だから凛は台所や自分の部屋、リビングを行ったり来たりして歩き回った。一日をどう過ごすべきか決めあぐねて。
5回か6回目に冷蔵庫を覗き込んだ後で、父の書斎が頭に浮かんだ。何かに駆り立てられた凛は、気づくと父の机に置かれた書類に目を通していた。
時計を見る。父が|帰宅するまで時間は十分にある。凛は書類を手に取ってめくり始めた。興味を引くものはない。書類を慎重に元の場所に置く。
くまなく机を探っていると、底の方に隠された何かを見つけ手を止めた。それは古い革表紙の本だった。彼女はそれを拾い上げめくった。
山岡一家、そして山岡の呪い。バタッと本を閉じると、馴染みのない怒りが込み上がってくるのを感じた。なぜ父はこれを持っていて、隠していたのか。凛は机の引き出しを閉じ、不自然な点がないか確認してからドアに向かう。
次の瞬間、凛は固まった。視線をドアの上に向ける。それまで気付かなかった。あるいは以前はなかったのかもしれない。そこには夢の中で見た刀が掛けられていた。
記憶 4306
パラパラと降り出した雨で頭皮が冷やされ、また夢の中にいることに気づいた。
凜は身体を起こし、また走り出す。同じ振り付けだ。走って走って走り続ける。
そろそろ根っこでつまずくはずなのに。違った類の恐怖が彼女に忍び寄る。新たな領域だ。怖いはずなのに、恐怖を予測できることが慰めでもあった。
走っていると向こうに別の人影が見える。それに近づくにつれ、彼女は走る速度を落とした。その体は大きく、彼女の前に立ちはだかった。その男に会うのは初めてだったが、凜はすぐにそれが誰であるかが分かった。
山岡崋山だ。
男を見上げると、憎しみがこみ上げてくる。彼さえ死んでいれば自分はこの世にいなかったし、この家に生まれてくることもなければ、責任を負うこともなければ、あんな父親を持つこともなかったのに。
しかし、そのことについて自分がどうにかできるわけではないことを彼女は理解している。もうすぐ父親がやってきて自分を殺そうとし、蛇が父を止めるだろう。
そう思っていたら、崋山が刀を抜いて差し出してきた。受け取れということだ。それを使って自分の父親を殺すために。
後ろから父の足音がだんだんと近づいてくるのが聞こえる。パニックになった凜は刀を掴み、父の攻撃に備えて振り返った。
父親は一人ではなかった。後ろに別の男が立っている。父よりも年配の男が、彼女にやめるよう目で訴えかけてくる。
凜は背後から熱のように発せられる崋山の憎しみを感じた。つまり、あれは山岡崋山の父親なんだ。
蛇がシャーっという威嚇の音を上げながら再び現れる。凜は構えを解くと、蛇の攻撃を待った。あとは父親が飲み込まれ、夢から目覚めるはずだ。
そしてまた壁と睨めっこをしながら夜明けまでやりすごし、母親が目の前で衰えていくのをただ眺め、得体の知れない問題に蝕まれていく父親の姿を傍観する。蛇が動きを止め、その場を見渡す。
今回は父親も、そして全員が蛇を見た。凜の中の何かが、行動を起こすときだと彼女に告げていた。凜は再び構えると突進した。父親を討って、繰り返されるこの悪夢を終わらせるのだ。そして止まり、刀を落とす。こうして闇が訪れ、彼女は飲み込まれた。
~おしまい~
山岡凜の基本情報
項目 | 内容 |
名前 | 山岡凜 |
固有パーク | ・怨霊の怒り ・霊障の地 ・怨恨 |
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