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【DbD】ナースの背景が描かれたアーカイブストーリー(背景物語)を見てみよう『学術書Ⅵ』【デッドバイデイライト】

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こんにちわ。きまぐれ(@kimagure_DbD)です。
当ブログでは、DbD(デッドバイデイライト)に関する情報をお届けしています。初心者さん・中級者さん向けに分かりやすい解説を心掛けております。どうぞよろしくお願いいたします。(※総プレイ時間約3000時間程度の若輩者です)

 

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きまぐれ

本日は学術書Ⅵで解放される『ナース』の背景が描かれたアーカイブストーリー(背景物語)をご紹介していきたいと思います。

 

ナースのアーカイブストーリー(背景物語)「クロータス・プレインの浄化」

記憶906

今夜の精神病棟には救いがある。そしてサリーはまともな人間ならば誰でもそうすることをする――全力でその救いにすがるのだ。胸にのしかかる重圧は溶けてなくなり、一度だけの飢えた呼吸が許される。汗と埃まみれのリネンの香りが思考から追い出され、トマトと新鮮な土の記憶に置き換えらえる。両足が彼女を廊下の先へと運ぶ。踵が打ち鳴らされ、広がる影へと共鳴していく。彼女は壁の染みや窓枠の破損を視界に入れることを拒む。記憶から引き出すこともできるが、この瞬間はそれは存在しないものとなる。

 

 

サリーは廊下の先へと辿り着き、床に刃のように差し込む月の光に照らされた病室を覗き込む。ベッドの上に座っていた少女が近づく影に気づき、たじろんだ。サリーが月明りの中に歩みこむと、ようやく少女は握りしめていた紙の束を離した。サリーは少女へ同情的な笑みを見せる...「心配性の少女」。病棟のファイルでは彼女の名はマリオンと記されているが、医療従事者は患者それぞれを"コード」"で識別している。「強硬症の少年」、「汗だくの変わり者」、そして「心配性の少女」。誰もが適当な言葉へと要約される。

 

 

サリーはベッドの縁に座り、不安な少女の乾燥した弱々しい髪を編む。今日は交流ルームには行ったのかしら?「心配性の少女」は枕を抱きしめる。ずっとここにいたわ。微かなうめき声が廊下を通って耳に入ってくる。間もなく平和が壊れる最初の兆候だ。サリーは髪を編み続け、必死にそれを無視しようとあがく。ルームには窓際に椅子が置いてあるって知ってる?コマドリが木に巣を作っているのが見えるのよ。「心配性の少女」は廊下の方を見つめる。微かなうめき声を聴きながら、彼女の肩が強張っていく。サリーは少女の肩を優しく撫で、無言で同情心を伝える。そして間もなく、廊下の先から叫び声が聞こえてきた。

記憶907

サリーは廊下を叫び声の上がる元へと進む。それぞれの部屋にいる患者たちも叫びに反応し、泣き叫んだり金切声を上げたりしてその"間奏曲”へと参加する。壁に頭を打ち付ける音もそこに加わる。音は次第に増幅し、混沌と化していく。そしていよいよクレッシェンドの最後に辿り着くかのように、患者たちは吠える。サリーはとある病室へと駆け込み、ベッドに縛り付けられた身の毛もよだつほど傷だらけの女性へと歩み寄る。彼女の叫びは陽気な笑い声へと変わっていく。看護師さん、歌は楽しんでいただけたかしら?私は"狂人達のコンチェルト"って呼んでるのよ。

 

 

病棟の全体が覚醒している。活気、不安、滅茶苦茶な患者たちの金切声や唸り声が廊下に響き渡る。サリーの胸は詰まったようになり、呼吸が苦しくなる。なぜ...なぜ皆を苦しめるの?「壊れた女」は傷だらけの顔を覆った包帯の下で笑みを浮かべる。二つの穴からはそれぞれ色の違う、青と橙の瞳が光る。あら、看護師さん。笑いたければ道化師が必要でしょう?サリーは無視すべきだということを知っている。口論しても何も得るものはない。それでも自分を抑えきれない。患者達は人間だ。病気であるかもしれないが、同情心は与えられてしかるべきだ。その理念はサリーが何年にもわたり、何度も何度も自分に言い聞かせてきたことだが、それはもはや単なる台詞のようなものになってしまった。荒れた唇から押し出される、慎重に練習を重ねてきた言葉の羅列。それこそが、「壊れた女」が友人と軽口を叩き合うかのように含み笑いをする理由なのかもしれない。同情心が与えられてしかるべきだ?彼らのほとんどが生み出すのは痛みだけじゃないか。他の者が生み出すものは無の他にならない。

記憶908

サリーは「壊れた女」の笑みを見ながらも不快感を抑え込もうとする。他の患者がこの世に何も貢献していないと批判はするけど、それならあなたは何をもたらしているの?「壊れた女」はベッドの上で起き上がり、落ち着きのない操り人形のように拘束具を引っ張る。私は千人の伝道者よりもこの世に多くをもたらしてるさ。病気を見ても甘やかさずに、それを食らうのさ。目から涙を拭って――浄化してやるのさ!「壊れた女」はサリーの注目を引いたことを理解している。人類が生き残るためには管理が必要なのさ、看護師さん。それなのに...感染の悪化を許してしまった――その証拠はここの壁に染み込んでるよ。「壊れた女」はそこで言葉を止める。その主張がまとまるまで。精神異常者の叫びや呻き声が廊下を響き渡る。

 

 

サリーは混沌とした雑音が彼女の元に届くたびに神経が強張っていくのを感じる。口論を望む気持ちは小さいが、義務は果たさなければならない。あなたもその壁の中にいる、違う?あなたもその感染の一部にならないの?「壊れた女」はその質問を待っていたかのように笑みを浮かべる。私はその解決策さ。感染した場にいることが運命づけられているんだ。あんたと同じように私も看護師だっ」た。でも私が奉仕を捧げたのは患者ではなく大儀だったのさ。1本の注射だけで弱者を人類の遺伝子から排除してやった。やつらが苦しんで死んでいくところを見届けながら、私は自分の行動が公正な科学に基づくものだとわかっていた。理解できる者は少ないけどね。そして法廷で私の理論がなんて言われたか知ってるかい?狂気だってさ!

 

記憶909

日々が過ぎていく。しかしサリーは正確に何日かがわからない。気づけばいつも精神病棟で、狂った、暴力的な、そして薄弱な人間に対応している。廊下の先ではまた「悪い男」が拘束具から抜け出した。狼のように、弱者に襲い掛かることしか考えていない。そして獲物を見つけたようだ。「悪臭の息子」の裸体の足首を掴んで引きずっている。頭からは血が滴り落ちている。サリーには「悪臭の息子」が生きているかはわからない。応援を呼ぶと、サリーは鎮静剤の注射器を」持って廊下を駆け抜ける。他の看護師は助けに来てくれない。経済的な制限で人」材も限られている。死に向かって駆け寄っていると感じるが、彼女の行動は無意識なものにも思える。傍観者にでもなったかのように。「悪い男」は「悪臭の息子」の足首を離し、サリーの方へと注意を向ける。そして背後の角から近づく太り気味の用務員、ハーヴェイ・カヴァナーには気づかない。ハーヴェイは、多くの患者にそうしてきたように、「悪い男」を床に叩き伏せる。サリーは鎮静剤を「悪い男」の首に注入する。「悪い男」はその場で力が抜け、困惑した感情を目に浮かべて崩れ落ちた。

 

 

老朽化した廊下に沈黙が訪れる。サリーは足元の状況を見つめる。カヴァナーは、大きな身体を上下へと揺らし、息を整える。その太い腕は静かに眠る「悪い男」」を抑えつけたままだ。無意識なのか死亡しているのか、「悪臭の息子」はカヴァナーのブーツが鼻に押し付けられたまま横たわっている。彼の頭から出た血の跡が、隣の部屋から9メートルほどこちらに伸びている。サリーは笑う。そうすれば叫ばずに済む。

記憶910

サリーは「壊れた女」の部屋にいた。「壊れた女」のオッドアイは日光の反射で 同情的な輝きを放っているが、その口から放たれる言葉は鋭い。昨日の凶悪な事 件は情けなかったね。ああいう男達は生まれながらああなのさ...市民社会には向 いていないんだ。あのでかい狂暴なやつは、顔を見ればわかる。そしてもう一人 の方は、ああ、あいつは上手く隠してるね。でもやつの苗字は知ってるかい?それですべてが説明つく。

 

 

サリーは静かな湖とユリを思い浮かべようとするが――だめだ...彼女の眼に映るのは、汚れた病棟の壁と、血まみれの包帯だけだ。爽やかな風が気を紛らしてくれるようなことはなく、「壊れた女」の声がさらに深く染み込んでくるだけ。看護師さん、結婚してなかったかい?新聞の記事を覚えているよ...これは嘘偽りない話だけど、彼の不運な死に涙を流したんだ。きっと可愛い子を産んでいたことだろうね。純粋な遺伝子を持つ未亡人が今ここで、この世の汚物に奉仕しているなんて――何があるかわかったものじゃない。

 

 

サリーは包帯を巻き終えることなく立ち上がる。おぼつかない足取りでドアの方へと歩む。頭をよぎる考えを押し出そうとする。そんなことを考えるべきではない。しかし――残酷すぎる。彼女の愛は純粋だった。夫は純粋だった。しかしこの病棟に住むもの達はそれとはほど遠い。それでもこの病んで捻じれた獣達は彼女が失った男性にこそ与えられしかるべき配慮と注目を享受しているのだ。

 

 

息をするたびに喉がつかえる。視界がぼやける。逃げ出したいが、意味がないことを理解してしまっている。様々な考えが渦巻く中、一つの明白な認識が現れる。彼女が狂人達を病棟に閉じ込めているわけではない。この狂人達に彼女が囚われているのだ。

 

 

彼女は容赦のない床へと崩れ落ちた。

記憶911

青々とした平原にまばらに咲く紅色のユリ、そして点々と生える松の木に湖は囲まれていた。サリーの記憶にあるよりもその色は鮮やかで、雨が降ったばかりのような香りがするが、空は雲一つない。彼女の横ではアンドリューがシートの上に腰掛け、日光に当たった彼の金髪がほぼ白く見える。彼女は彼に買ってもらったドレスを着ている。僕の愛の象徴。カードにはそう書かれていた。口数の少ない男が贈る言葉にしては、大きな意味を持つものだった。

 

 

皮膚の硬い手から芝生の跡を拭うと、サリーに向き合った。そろそろ帰ろう。湖は明日だってここにあるさ。草原を冷たい風が吹き抜け、汗と埃まみれのリネンの香りを運んでくる。彼女は彼の手首を両手で掴む。あと1分だけ、お願い。あと1分だけでいいの。

 

 

鋸が木を切り刻む音が聞こえてくる。乱暴な一振りごとに音が大きくなる。彼女はアンドリューの手首をより強く握りしめ、頭を彼の肩へと押し付けて身構える。巨大な樹木が後ろの地面に倒れ込み、小枝や土が舞い上がる。一本、また一本と倒れ続け、大きな音とともに地を揺らす。サリーは土埃の中で咳き込み、その間もずっとアンドリューにしがみつく。

 

 

彼の腕を一筋の血が流れ落ち、彼女の指へと到達する。見上げると、夫の頭は砕かれ、血や脳の破片が零れ落ちている。残された白い片目が、意図的に彼女を見つめる。僕たちには可愛い子が産まれていただろうに、サリー。

 

 

彼女は彼の胸の赤くおぞましい物の中へと倒れ込み、涙を流す。手に掴んだ肌は崩れ、塵へと変わっていく。彼は彼女の手から逃れていってしまう。彼女であったもの、ドレスもなにもかもが脆く崩れ去り、風に飛ばされていく。

 

 

彼女が病棟の床で目を覚ますと、カヴァナーの汗ばんだ手が彼女を揺すっていた。

 

記憶912

彼女はまた廊下にいる。臭い、染み、踵が鳴る――何も変わらない。時折、唸り声や叫び声が付近の病室から聞こえる。狂気と恐怖が短い爆発を起こし、押し寄せ混ぜ合わさる――"狂人達のコンチェルト"だ。

 

 

サリーは「心配性の少女」の病室へと入り、彼女のベッドの足元に座る。少女はたじろいだが、すぐに起き上がった。月明りに照らされ、控え目ではあるが暖かい笑みを浮かべる。サリーは少女の髪を3束に分けて手に取り、編み上げていく。今日はムクドリを見た?しかしサリーは少女の返答を待たない。今日も隠れていたんでしょう?そしてムクドリ達は?あなたがこの部屋を出る頃には死んでいるわ。

 

 

少女の肩が強張り、サリーも自分の肩が強張るのを感じる。心を落ち着かせようと、深呼吸する。「心配性の少女」の髪を持ち上げると、小さな身悶えするような動きの小さな生物達を見つける。少女の髪にはシラミが這いまわっている。サリーは手を引っ込めると、少女の頬を平手打ちした。汚い!

 

 

お互いに瞳を見つめ合い固まる。お互いの中で混乱と驚きが起きる。「心配性の少女」の悲痛な顔に涙が流れる。頬を濡らしていく。サリーは一歩下がった。謝ることを考える。晒されているストレスのことを説明しようかと考える。だが、彼女の中の何かがそれを拒否する。汚い子ね!彼女は部屋から足早に去っていった。

記憶913

サリーは無表情で「壊れた女」のベッドの隣に座っている。ここで女がわめくの を聞いている時間が次第に増えてきている。「壊れた女」は、自分の傷のついて いないほうの手首に繋がっている拘束具を弄る。浄化には色々な形があるのさ。 誰もが犠牲を払わなければならない。女は指を内側へと向けると、傷のついてい ない肌の部分が引き裂かれるまで引っかく。最もグロテスクな不適合者達——恥 ずべき遺伝子を持つ者達には過激な手段が必要なのさ。そうしなければ...結果は 周りを見ればわかるだろう?

 

 

サリーは身動きせずに座っている。意識を保っていると確認できるものは、彼女の疲れ切った目だけだ。「壊れた女」は友人とお茶をしているかのように喋り続ける。私なら何ができるかわかる?特製の注射の材料を教えてあげることができるよ...私が看ていた患者に使ったものだ。ちょっと注入してやれば、浄化の炎が体内で燃えているかの如くのたうち回るんだよ。人間とは言えない汚物には相応しいと思わない?聞いてるのかい、看護師さん?やつらに奉仕なんてしなくてよくなるんだよ。

記憶914

サリーは病棟が迫ってくる感覚を覚える。偏執症の狂人達の囁きが、ヒビから漏れ出てくる。疑問が湧き上がる。あとどれほどこの廊下を歩いていられるだろうか、これに終わりはあるのか?車椅子に座り、壁を熱心に見つめる「強硬症の少年」の横を通り過ぎる。彼はサリーの方へと視線を向けるが、彼女のことを見ているわけではない。試練が始まったのか?彼は叫ぶとそれに驚いたのかのように口を閉じ、そして笑い出す。

 

 

太った用務員、ハーヴェイ・カヴァナーが病室から出て来て、笑顔を見せてきた。首元の肉はぶら下がり、彼が動くと汗でテカる。腕は毛深く、その体毛は襟元からも見えている。彼の視線はサリーの足元から上へと移っていき、彼女の胸で止まる。サリーが見ていることに気づくと、視線を素早く床へと移し、せわし、なく唇を舐める。

 

 

廊下の先を見ると、数か月ぶりに拘束具を解かれた「不潔な少女」が優雅にスキップしている。壁に手をなぞらせて、ご機嫌に鼻歌を歌いながら。サリーが近づくと、彼女は顔を前へと突き出す。しわがれた声をしばらく出し、隔膜を震えさせ嘔吐物を床に吐き出した。それに満足して笑みを浮かべると、先へとスキップしていった。

 

 

サリーは嘔吐物を掃除することなど考えずに先へと進む。「裸足の愚か者」がほ」うき入れの近くに座っているのが目に入る。口からは太い血の筋が零れ出てい」る。正確なリズムを刻み、彼は顎をドアの枠に6回打ち付け、歯茎をほじって歯を抜き出す。そしてサリーを、これほど奇妙なものは見たことがないとでも言いたげなように見つめた。サリーは廊下の先を見る。

 

 

無限に伸びていく。彼女は立ち止まり、抑えようとしていたものを受け入れた。これ以上この病を広めてはいけない。

 

記憶915

サリーは「壊れた女」の指示通りに注射器を満たす。濃厚でどす黒い液体が渦巻く。星のない夜のようだ。彼女を動けなくしたどうしようもない不安は安寧の海の底に沈んでいった。

 

 

一歩一歩踵が鳴るが、彼女はまるで浮いているかのように感じる。彼女がすることは定められたこと。ほんの少しのそよ風があれば彼女は進むことができる。彼女には病が手に取るように見える。何もかも汚染してしまっている。しかし最もおぞましいのはそれに直面することを拒否する者である。自分が犬であることを知らない犬。そして彼女は「壊れた女」の部屋へと向かった。

 

 

分別ある人間にもかかわらず、自身の不純さに対して盲目であることは奇妙なことである。汚れを肌から剥がし落とそうとも、鏡から見つめてくる不揃いな目を裁くことができない。いくら身を傷つけようとも遺伝子は取り除けない。そのような場合は過激な手段が必要だ。

 

 

サリーは注射器を握りしめ、これから起こることへの覚悟を決める。病棟には概れが染み込んでしまっている。すべてを浄化するのならば、一刻も早く始めなくてはならない。