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【DbD】ヒルビリーアーカイブ物語『お前という名の男』学術書Ⅴ-解放【デッドバイデイライト】

ヒルビリー

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きまぐれ

本日は学術書Ⅴレベル3をクリアすると解放される、ヒルビリーのアーカイブストーリーをご紹介していきます。

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ヒルビリー基本ステータスと固有パーク

移動速度 4.6m/s 脅威範囲 32m
背の高さ 高い 難易度 簡単

 

パーク名 解放レベル 優先度
不屈 30 ★★★☆☆
光より出でし者 35 ★★★☆☆
ガラクタいじり 40 ★★★★★

ヒルビリーアーカイブストーリー「お前という名の男」

奇形の子として生まれたヒルビリーの悲しく眼を背けたくなるような過去が描かれています。

記憶3728

暗い独房の中で近づいてくる足音が聞こえた。

笑い声や噂話だ。

父が他の誰かといる。誰かはわからない。

 

扉に耳をつけると、笑い声が聞こえた。しわがれ声の腹からの笑いだ。

 

総毛立ち胃がきりきりと痛んだ。所長以外にあり得ない。少年は特に父といる時の所長が大嫌いだった。奴らは自分たちが面白おかしく過ごすために。少年に様々な要求をする。

 

父が少年を殺しの道具と呼んで自慢をしている。更なる笑いが起こった。他にも声がする。ショーを楽しむために所長が部下を何人か連れてきたのだ。

 

笑うのを止めさせたくて、叩き潰して細い肉片にしてやりたい気分だった。

 

誰もが彼のことを笑った。

世界中が彼のことを笑う。

苛立ちで歯ぎしりをした。

奴らは笑うべきじゃない。

 

奴らは本来、自分を守るべき存在であることを彼は知っている。テレビでやっていた

テレビを見ている時だけは心が落ち着き仕事をした後の時間を満たしてくれた。

 

テレビは特別だった。一度も持ったことのない友人であり、両親だった。だが社長はテレビの中の所長とは違う別のタイプの警察署長。

 

父と組んで金を綺麗にする類の人間だ。それがどういう意味なのかも知らないが豚小屋のそばで話しているのを聞いたことがある。沢山の金を綺麗にして、裁判官や他の法律関係者と山分けするのだと、あいつらは一緒に金を綺麗にしている。

 

だから父や母が少年に何をしようと野放しにしているのだ。所長が歪んでいるといつも父は言っている。自分の息子の顔と同じように歪んでいると…笑い声がさらに大きくなった。

男達がこのレンガで作った牢に近づいてくる。少年はさらなる虐殺のことを考えて震えた。数人の警官を笑わせるためだけに殺しをすることに疲れていた。

 

心底疲れていたのだ

 

血が沸騰しているような感覚がして。そのまま首を駆け上がっていくのが分かる。少年の顔を押し上げ、頭蓋骨を突き破る勢いだ。突然高音の、口笛を吹くような音が少年の耳をつんざいた。すすり泣きのような音が止むまで何度も繰り返し頭を叩き続けた。

 

一瞬…

ほんの一瞬だけ静寂が戻り、鎖の鳴る音がした。少年が平衡感覚を失い、尻もちをつくと同時にかんぬきが大きな音を立てて抜かれる。扉が開き目が眩むほどの日光がレンガの独房に入り込んできた。

 

少年は腕で目を覆う。父は中に足を踏み入れ少年を掴むと自分の足元に引き寄せた

出番だ!おまわりさん達にお前の価値を見せてやれ!

記憶3729

蒸し暑い家畜小屋の中で、少年は持っているハンマーから血が滴るのを眺めながら

夢の中にいる気分だった。

 

奇妙な感じ…

変な感じ…

不安定な感じ…

 

違う

夢ではない

どちらかと言うとテレビ番組の中で生きている感覚だ。離れたところから自分を見ている。虐殺された牛たちがドロドロに濡れた状態で少年を囲んでいる。

 

7匹が8匹ぐらいが、固まりつつある生暖かい血の中で成すすべも無くもだいていた。

 

頭が叩き割られている。

脳や血が溢れ出している。

少年の周りにハエがたかる。

顔や耳のそばで歯音がする。

 

この虐殺こそ少年の存在意義だとでも言うように、この無意味な虐殺だけが少年の価値だ。唯一の価値なのだ!

 

殺せ!

奴らはお前が殺してる姿を見るのが好きなんだ

殺せ!殺せ!殺せ!

 

ハエ達が少年を笑った。所長やその部下たちと一緒になって役に立たなすぎて名前すら貰えないじゃないか。お前だってそんな名前がどこにある?

 

父は少年を別の牛に向かって押した。まだ終わってないぞ!少年はハンマーを振り上げ

目の中の血を振り払った。

 

奇妙な…

変な不安定な感じがした。

うんざりした気分だ。

こんな人生はもうたくさんだ。

 

あの独房も

肥やしをかき集めるのも

虐殺するのも

終わりのない虐殺も

あの豚達の面倒を見るのも

 

大事に育てられた豚たち…息子に注がれたことのない両親の愛情を一身に受けた豚達

ハエ達が少年の顔の周りで円を描くように取り嘲笑った。

 

幸運のすすり泣きのような音が戻る。豚たちは名前を付けてもらったのに、お前はつけてもらえなかった。

 

デュークとドニー

 

少年がハエたちを叩くと父が肘で押してきた。何してんだお前?そのハンマーで披露できる芸がもっとあるだろう。

 

お前…父は少年はそう呼ぶ

お前…母も少年をそう呼ぶ

 

ふたりはこう考えているのだ。少年は頭が悪すぎて自分に名前がないことがわからないと…

 

本当の名前…少年は知っている。ずっと分かっていた…知っていたのだ

想像の中で自分の名前は「マックス」

「マックス・トムソン」だった。

 

父親が息子を誇るあまり、自分と同じ名前を息子につけたという想像。父と同じ名前を持つことを夢見たのだ。どれほど夢見たことか。父が少年を乱暴に押した。

 

さっさとしろ!

見せてやれ!

今すぐ見せつけろ!

 

少年は顔に血液が集まるのを感じた。

血管が激しい怒りで膨張した。

こめかみが荒々しく脈を打った。

それ以降の記憶は曖昧だ

 

どこもかしこも血まみれで叫び声が響いていた。牛のものではない。人間のものだ。すすり泣きがまた聞こえてくる。少年は混乱し父を捜したが見つからない。すすり泣きが止みすべてがくぐもって聞こえた。

 

振り向くと所長がこちらに突進してきていた。なんてことをしたんだ!少年にはあまり聞こえていない。

 

彼が子供の頃、母が水の入ったバケツに少年の頭を突っ込み。自分を求めて呼んだり泣いたりしないように躾けた時のようだ…

 

全てが曇っていて、歪んできた。現実ではないようだった…

 

所長は少年に体当たりし、その手から血まみれのハンマーを取り上げた。お前が殺したんだ!自分の父親をジム・ドン・レイも!俺の部下だ!俺の部下なんだぞ!

 

少年は所長を押しのけ血に塗れた状態で、家畜小屋から転がり出た。母屋に向かいながら夕暮れの中母を求めて叫んだ!

 

記憶3730

地面に伏して泣く母の歯はどれも折れていた。少年は母を片手で持ち上げると言葉にならない言葉を矢継ぎ早に浴びせた。それは彼が知る言葉の全てだった。テレビで覚えた言葉だ。

 

少年は自分の名前を、本当の名前を知りたがったが母は少年をただ見つめた。混乱し途方に暮れ、絶望した様子だ。

 

ゴボゴボと血を吹く母は命乞いをしている。その顔の端からは歯の欠片が滑り落ちていく少年の言っていることを理解できたとして、母には何も答えられなかっただろう。

 

俺の名前!

俺の名前だ!

俺の名前は何だ!?

 

少年は母を繰り返し地面に叩きつけた。そして自分の頭より高く持ち上げキッチンテーブルめがけて振り下ろした。その重みでテーブルが壊れる。母の足の傷から血が噴き出した。女は意識を失った…

 

罪悪感に見舞われ少年は自分のゆがんだ体を抱いた…

 

なぜ?

なぜ俺を憎んだ?

そこまで二人に憎まれるようなことを何かしたか?

 

母の顔は美しく、同時にひどく醜いものでもあった。美しい皮をかぶった悪だ!少年は母を抱きしめた。その腕にどんどん力が込められていく。すべてが違う形であったならあの忌々しい豚の一匹であったなら…愛情と優しさと時間をかけて両親が甘やかした豚たち

 

2人がデュークとドニーと過ごす間、名前すら与えられず自分のためだけに作られたあの地下牢で、少年は1人這いつくばっていた。少年は母を持ち上げようとしたが血溜まりで足を滑らせた。

 

母は少年の抱擁から逃れようともがく。問いを繰り返すたびに母を締め付ける。腕に力が込められていく。

 

俺の名前?

俺の名前は何だ?

 

母の抵抗が止み、継続的に痙攣した。強張っていた腕や足がだらりと下がる。少年はゆっくりと母を解放した…母の頭がゴツンと音を立てて、血だまりに叩きつけられた。虚ろな青い瞳が宙を見つめている。美しく虚ろな青い瞳。その目がを映していたのはただの怪物であり、物体であり牧場を経営する上で負担にしかならない獣だった。

 

息子であったことはない、一度も息子と認めたことはなかった。少年はその目が大嫌いだった…その…憎しみに満ちた瞳が少年は両目をえぐり出し握りしめた。目玉は牛のものと同じように潰れた。少年は笑みを浮かべた。なぜ笑みを浮かべているのかはわからない

 

顔についた血を拭い、手の中の「ぐちゃっ」とした感覚が心地よいことを知った。

後ろの床を強く踏む音がした。突如として所長がキッチンに押し入ってくる

 

「貴様の愛用のハンマーでその頭をぶっつぶしてやる!」

 

しかしハンマーを振り上げると同時に所長は踏み入れた。生暖かい血だまりに足を取られた少年はパニックを起こして外に逃げ、暗くなった森の中に駆け込む。所長が大声で罵るのが聞こえ。いくつもの銃弾が体をかすめていった。

記憶3731

どれくらい走ったのか…少年には見当がつかなかったが疲れているのは確かだった。

追ってくる所長が大声で喚き散らしているのが遠くで聞こえ、少年の両親に農業の担い手として生かしておくように言ったことを悔いていると、母と父に怪物の子供は最高の働き手になると言ったこと…他にも少年が聞きたくないことを色々と語ってくる。

 

お前の両親は、お前を殺そうとしたんだ!お前に熱湯の入った鍋をぶちまけておきながら、不細工な子供らと我々に語った。

 

お前が自分でコンロの上の鍋をひっくり返したと言ったが、俺にはすぐわかった。あいつらの本性を見抜いていたからな。奇形の子供が生まれたことをひどく恥じて、そのガキに熱湯をぶっかけたのさ!お前を殺そうとな。事故に見せかけようとしたわけだ!

 

少年は耳を塞いだ…

 

ハエが羽音をさせながら嘲笑った。こんな話は聞きたくない…頭の中で…何かが高温で鳴り響きこだまする。

 

止まれ。

止まれ止まれ。

だが音は止まない。

 

すすり泣きも嘲笑うハエ達も、自分以外に聞こえていないことを少年は知っていた。彼には聞こえるはずのない音が聞こえるのだ!父が自分を傷つけたことを知っている。

 

頭を傷つけられた。少年がまだ赤ん坊だった頃に耳をつんざくような大声で怒鳴られたからだ。ひどい言葉を浴びせられた。

 

首が母のへその緒に絡まった時、中途半端ではなく完全に少年の息の根を止めていれば良かった。

 

というような内容だった。

 

少年は少しの間、立ち直る時間を取った。他にも声が聞こえてきた。所長がさらに応援を呼んだのだ。

 

関係ない…全員かかってくればいい。

 

母と父が大事な豚どもを育てる一方で、少年を苦しめてきた罪をあいつら全員が贖うべきだ。

記憶3732

少年が強すぎる力で首を締め上げるので、叫び声はすぐに情けないすすり泣きに立った。人間を殺すのは牛を殺すより簡単だった。ただ人間のほうがだいぶ往生際が悪い。

 

少年はパニック状態の警官の目を見た。知った顔だった。良く知っている相手だった。少年を何度も嘲笑ったやつだ。助けるべき時には嘲笑ったやつだ。今度はこっちが笑う番だ!

 

テレビを見なかったのか?警察は人を傷つけるのではなく助けるものだ!笑ってみろよ!少年は警官を持ち上げた。警官の足が地面を離れる。少年はそのまま警官の後頭部を木に叩きつけた。何度も何度も。

 

さあ笑ってみろ

笑え!

笑え!

 

頭蓋骨がメロンのように割れ片側から脳みその塊がはみ出した。少年は警官を解放するが瀕死状態の警官は真っ直ぐに立つこともままならない。

 

左へ右へ揺れながら少年の前で立ち止まる。男はしばらくの間少年を見た。道具でも見世物でもない。それ以上の何かを見ているような目だ。家畜より知能の高い何か。

 

賢く

殺傷能力の高い存在

警官は途方に暮れ混乱した様子だ

 

テレビで見る心のないゾンビのようだった。体を震わせ混乱した様子で警官は足を引きずり前進した。ぐちゃぐちゃの頭が濡れているのを感じながら。少年は脇に退いて警官を通してやった。そして自分の作品を見つめた。

 

その頭蓋骨からはパテのように血が垂れていた。男が左へ右へよろめきながら月光に照らされるのをじっと見た。男が牛であったなら苦しみから解放して行っただろう。

 

だがあれは牛ではない。別の何かだ!卑劣で堕落した何かだ!少年は男が影の中に消えていくのを見つめていた。

 

「ドスン」という音が聞こえるまでじっと暗闇を見つめ続けた。奇妙な感覚が胸に広がり少年は笑った。反撃をすること、自分の力を本当の価値を見せつけることは気分がいい。

 

記憶3733

所長が躍起になって、自分を探しているのが聞こえる。少年は警官の脳みその一部を握りしめながら、茨に覆われた木のそばで静かに座っていた。

 

牛の脳みそと同じ食感だ!両手にそれぞれの塊を握っていたとしても違いは分からないだろう。少年は握りしめた感覚が気に入った。心を和らげ落ち着かせてくれる。不安を和らげてくれる。

 

ふと大好きな番組のことを考え始める。母と父は少年を黙らせるためにテレビを与えた。少年が自分たちを求めて泣き叫び、壁を粉砕するのにうんざりしたからだ。何も役に立たなかった猿轡でも縄でも少年は常に抜け出せた。

 

だがテレビだけは違った。どんな拘束よりも効果があった。少年をおとなしく座らせ

満足げな様子で静かにさせた。母はテレビが少年を虜にしたことを喜んだ。テレビは少年に様々なものを見せてくれた。自分の生活が他の子供達と全く違うことを。両親が本来どんなものであるべきかを。

 

少年は自分の両親がクラークのうちの両親みたいだったらと願った。優しく接して

正しく育てただけでヒーローを生み出したのだから。自分たちの本当の息子ではないのに立派に面倒を見た。

 

それかあっちの親でもいい。もう一人の少年ビーバー。良い家族を持っている。だが少年はどちらとも違った。クラークでもなければビーバーでもなかった。

 

障害を持った奇形としてこの世に生まれた。発育不良の子豚みたいに弱かった。父は石を詰めた袋に少年は入れて湖に放り込みたかったと言った。

 

手に入らない愛

辛い人生

何もかもが苦痛だった

 

警官たちが遠くで叫んでいる。少年は怖くなりレンガの独房でいつもしていることをした。目を閉じてクラークのことを考えるのだ、そして最も偉大なヒーローが助けに来てくれるのを待つ。

 

テレビと違って彼が来てくれたことはない。毎度のごとく土壇場で勝利し助けを求めている人を救うクラーク。たがテレビは現実と違い少年は孤独だ。獣のような奇形の子供として生まれたから一人ぼっちなのだ。

 

少年は目を開け手の中の血まみれの塊を眺めた。

どうでもいい…

待つのはもう終わりだ。

 

今は彼自身が自分のヒーローなのだから… 

記憶3734

所長は怒りで吠えた。また別の警官がいくつもの肉片になって見つかったのだ。

 

納屋がある庭で牛達をそうしていたように、少年は今自分たちを一人ずつ買っているのだ。所長は少年を地獄の果てまでも追い詰め、この報いを受けさせると誓った。

 

報いを受ける?

俺が?

何年もあの独房に俺を放置していた、お前こそが報いを受けるべきだ。所長は平静を取り戻し誰かに電話を掛けた。電話の相手に犬をよこすように言っている。

 

連れて来い!連れてきたところで何も変わりはしない。何があってもあの独房に戻るつもりはなかったし、あそこを抜け出すためにしたことで。別の牢獄に入るつもりもさらさらない。

 

また閉じ込められるくらいなら1000回死んだ方がマシだ!

 

暗闇から飛び出し所長に掴み掛かりたいが、それこそが所長の狙いであるという予感がした。わざと傷つく言葉を発することで少年をおびき出そうとしているのだ。

 

少年は影の中に腰を下ろし、乾いた歯を片手でかき回した。警官の一人が懐中電灯を持って近づいてくるのが見えた。少年は太い枝を掴みゆっくり立ち上がるとその警官ににじり寄った。

 

野うさぎが宙に飛び出し彼方に消える。警官は野うさぎに懐中電灯を向けた。男が止めていた息を一気に吐き出すと同時に少年は枝をベーブルースの如く振った。頭と首が叩き割られ暗色の内容物が木々や地面に飛び散る。

 

それでも警官は死ななかった。あちらこちらによろめきながら、薄皮でかろうじて繋がっている頭を揺らし必死にあたりを包む。夜の冷たい空気に手を伸ばしていた。首を切り落とされた鶏が無くなった頭を求めて庭中をバタバタ動き回っているようだ。

 

少年は笑みを浮かべ開放感に浸った。一人で笑いながらまた一人警官が綺麗になったと思った。父が長官の金を綺麗にしていたように少年は所長の部下を綺麗にしてやっている。あの父にしてこの娘ありというやつだ!

 

所長の顔を浮かべると少年から笑みが消え、やつは少年を助けられたはずだ。何年もの間その機会があった。奴は手を差し伸べることができたはずだ!

記憶3735

ガキ!

自分の名前が知りたいか!俺は知っているぞ!

出てくればまともに聞こえもしない、そのぶっ壊れた耳に囁いてやる!

 

所長はからかっているだけだ。釣られない。所長は一晩中でも少年を追うことを誓い、犬達もやってくるという。肥しの山で屁をしたコオロギすら探し当てられるいるだ。少年はコオロギも屁をすることを知らなかった。テレビでたくさんのことを学んだがこれは初耳だった。コオロギが屁をする想像して少年は笑った。笑うのは好きだった。

 

少年は警察隊の方に這い寄った。二人の警官が補充され所長ともに少年を追跡しているようだが。犬は見当たらない。犬たちが到着する前にこいつらを仕留めるのが一番だと判断した。

 

警察犬はテレビで見たことがある。やつらはあらゆるものを嗅ぎ当てられる。この警官たちは前の奴らより怒っている様子だった。少年が奴らの仲間を殺したからか…父とやっていた不正な商売に終止符を打ったからなのか分からない。その両方かもしれない。

 

一つ確かなのは奴らに捕まれば苦しめられ、豚のように泣かされるだろうということだけだ。あの豚ども。両親が心底愛した豚達。なぜ奴らはあんなにも可愛がったのに自分は微塵も愛されなかったのだろう…あの豚たちと同じように扱ってくれたら幸せだったのに…幸せに過ごせたしきっと違う成長を遂げていたはずだ…母と父の育て方次第でマントして世界を救うの少年のようにヒーローになれていたのに…

記憶3736

少年は月明かりの下でかろうじて認識できる。二人の警官の背後に忍び寄った。先の尖った枝をゆっくりと持ち上げて飛び出すと片方の頭を殴り、もう一方が助けを求めて大声を出す前にその口に枝を突き刺した。

 

見下ろした先では血が間欠泉のように噴き出している。西部劇のワンシーンが思い出された。もう一人の警官に近づくと相手が振り返り少年を掴んだ。

 

乾いた葉や枝の上を、バリバリと音を立てながら転げまわり互いに攻撃を食らわせた。少年は警官の首に腕を巻きつけることに成功しそのまま締め上げた。あちこちで足が激しくばたつく。その動きが止まるまで少年は腕の力を緩めなかった。

 

所長が部下たちを呼び戻す声がする。戻ってくるように言っている。犬達が到着した。少年は茨と暗闇の中に撤退した。目を閉じて別の人生の創造に浸った。そこでは彼はビーバー少年でテーブルで席についている。父や母と一緒に栄養たっぷりの食事をとりその日の出来事について聞かれた。

 

少年が口を開いた途端様子がガラリと変わる。その声が母の気分を害したのだ。母は少年の頭を叩き押さえつけてタバスコを喉に流し込むと、二度と言葉を発しないように言い聞かせた。父に捕まれベルトの鞭で打たれた少年はカッと目を開く。怪物として生まれてこなければ何もかもが違っただろうに…

 

怪物として生まれる?

怪物とは生まれるものじゃない

作られるものだ…

 

憎しみと残酷さと虐待の苦い体験の中で、そしてタバスコとベルトでそうやって怪物ができるのだ。

記憶3737

父親から聞いたぞ―――。

 

自分の名前が知りたいらしいな。逃げるのをやめれば名前を教えてやるよ!少年は足を止めた。

 

犬の吠え声がどんどん大きくなる。所長の声がする方向を向くと月明かりが枝や葉の間からまばらに差し込んでいた。どうすればべきか分からず衰弱の中を移動した。

 

所長の声がより鮮明に聞こえるようになる。お前が不自然にゆがんだ奇形児だとわかる前にお前の父親はちゃんと名前を付けてやったそうだ。お前の名前は奴に恥をもたらした。だからお前を隠したのさ。名前が知りたければ両手を上げて出てこい!そしたら教えてやる。

 

何が起きているのか少年が理解するより早く、一匹の犬が暗闇から勢いよく飛び出し、鋭い牙の生えた凶悪な口から唾液を滴らせながら、少年の腕に噛み付いた。そこへ現れた素早く動く不鮮明な影の方に向き直った少年は、ハンマーが自分の頭に命中する前に相手の手首を掴んだ。そして犬を木に向かって投げつけた。こんなに力がみなぎる感覚は初めてだった。腕力のみならず、心にまで力が満ちる俺には名前がある。

 

少年が掴んだ手首を振り払うと、ハンマーが音を立てて足元の暗がりに落ちた地面に押し倒された所長はナイフを取り出した。少年はその手首をつかみ無理やり所長自身の腹にそれを差し込んだ。

 

俺の勝ちを思い知ったか!所長め!

見ろ!この力を!

 

所長は血だらけのナイフを引き抜いた。だが少年は反応する暇を与えない。温かい内蔵めがけて手を突っ込みはっきりと認識できない物体を強く握った。所長は激しい苦痛に悲鳴をあげた!

 

クソガキが!!!

 

犬たちが少年に飛びつきそれ以上の攻撃を加える前に、所長から引き剥がした。少年は犬たちを地面に強く叩きつけ仕上げのハンマーを探した。犬たちはゆっくりと立ち上がり吠え始めた。少年は掴んだ枝で犬たちを強打すると反撃される前に高速で距離を取った。

 

永遠とも思える時間冷たく暗い森の中を駆け抜け、農場へと向かった。本来自分が過ごすはずだった家へとまだ遅すぎることはない。地下には秘密の部屋もある。父はそこにカレーを隠したり母と一緒になって少年をいたぶったりした。その叫び声が誰にも聞こえないようにあそこなら誰にも見つからず、長い間隠れていられる自信がある。

 

テレビと一緒ならさぞ快適に過ごせることだろう。そして父の遺品を漁ればきっと自分の名前が自分の本当の名前がわかる。

 

だがその前にまずはベーコンを食べよう。

とっておきのベーコンを調理しなくては。

 

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【Short Movie】ヒルビリー『お前と言う名の男』「Archive short Movie」【Dead by Daylight】hillbilly

 

生立ちと同時に解放された、ヒルビリーのショートムービーになります。

終わりに

本日は殺人鬼【ヒルビリー】の生い立ちをご紹介させて頂きました。奇形の子として生まれたヒルビリーの悲しい過去に思わず感情移入してしまいました…