・木村結衣のアーカイブ物語について知りたい!
・アーカイブムービーも見たい!
とDBDの学術書6で解放される、木村結衣のアーカイブ物語について詳しく知りたい方向けの記事となっています。
木村結衣/アーカイブ動画
物語と一緒に解放された、木村結衣のアーカイブショートムービーになります。
木村結衣のアーカイブストーリー「学術書Ⅵ」
記憶369
エンジン音が闇の中を響き渡る。崩れた仏塔と建物を包む濃くまとわりつくような霧の中を、スピードを上げて走り抜ける中、咆哮が結衣の体中を駆け巡る。道路の脇に壊れたバイクが止められているのに気が付く。バイクからそう遠くない場所でライダーが立ち上がろうとしているが、足が砕けていて崩れ落ちてしまう。
結衣は止まるわけにはいかない。止まることはない。彼女は勝たなくてはならないのだ。たどり着かなければならない。どこへかはもう分からない。故郷の廃墟を駆け抜ける中、左右を見渡す。また先ほどと同じライダーの横を走り抜ける。今度は燃え盛るバイクから逃れようとしている。意味が分からない。何も意味をなしていない。
霧の中で悪魔が叫ぶ。すぐ後ろにいるように感じる。闇の中に紛れ飛びつく機会を待っている。彼女は燃えて闇の中に煙を上げている、ライダーの死骸や血だまりをうまく避けて駆け抜けていく。彼女が弱々しく叫ぶと死んで焼け焦げたライダー達が闇を切り裂く光の柱となり溶けて消えていく。
突然ライダーが彼女の目の前に現れる。結衣はスリップしバイクの制御を失い道路に横転する。体の中がぐちゃぐちゃになってしまったように感じる。あちらこちら骨折している。折れた骨が彼女の肌を打つ突き破り黒く生暖かい液体が吹き出す。立ち上がろうとするがブラックのジーンズから突き出た骨がそうさせてくれない。
彼女が無視したライダーのように彼女は壊れ、どうすることもできずにガソリンに浸された。
記憶370
美里は結衣をじっくりと観察する。霧や闇の夢を見るということは自分を偽物…もっと悪い場合は失敗作と考えているということだ。結衣はうなずく。友人の解釈には一理ある。美里はビールを一口飲む。
光が見えるというのは、貴方を縛り付けているものをいずれ乗り越える。ということを意味しているのよ。事故や死で終わるというのはあなたが何かに死んでほしいと。それを望んでいるということなのよ!結衣はため息をつき、それ以上美里の話を聞くべきか悩ましくなる。
悪魔?鬼?なぜ私を追いかけていたの?
美里は頷く。鬼はあなたが目的を追い求める中で人間らしさを保つのに苦慮しているということは、正しいことと悪いこと正義と邪悪の間に立たされている、ということかもしれない。美里はビールを飲み干しながら、自身を笑う。
記憶371
勝つことが全てじゃないのかもしれないわ!あなたは欲張りなのかもしれないわね。コップ一杯の水で十分なのに海全体を飲み込むとしているのかもしれない。結衣は冷笑をする。
欲張り?お金もなくてあなたにビールはおごってもらってるのよ。酔った美里は結衣に向けて指を振る。結衣…欲とはお金の事だけじゃないのよそれが何であれもっと欲しがること
レース…
トロフィー…
栄誉…
もしかすると自分の実力を証明したい欲望が、あなたの中にある消えたくない何かを消してるのかもね。結衣はため息をつきビールを飲む。馬鹿げた話は十分、もっと飲もう。そっけない笑顔の裏では結衣は悪魔は、エゴや欲とは無関係であると考える。夢を追い求めるのに十分な資金がないという不安が原因なのだ。
勝つことが全てではないのかもしれない…全てではないかもしれないがシークレット4で勝利すれば数週間分の家賃、そして食料とビールの購入日にはなる。一番人気のレーサー真治はいつだって、結衣をレースに参加させないように主催者を説得してきた。女性のレーサーを参加させてしまうとシークレット4の価値を落としてしまう。
男尊女卑だ!
野蛮な思考だ!
時代遅れだ!
しかしそれが彼女の現実でもある。彼女ほど才能のあるものを受け入れられないのだ
才能?真治には才能はない。彼は不正をし侮辱し挑発することで精神的に優位に立つ。結衣は彼のやり方を知っているし彼もいつかは結衣とのレースに挑まなければいけないのを知っている。
しかし今は彼女がレースに参加するのならば彼は辞退すると言い、主催者たちはなぜかタイトルホルダーの彼が参加しないと、金が集まらないと信じ込んでいる。明日のレースには参加しない。でも会場には行って友人のヒロを応援するつもりだ。
記憶372
結衣がヒロに戦いの言葉を吹き込む中、真治は彼女に軽口を叩く。戦いの言葉、闘争心を高ぶらせるような言葉を、祖母はそう呼んでいた。精神を満たし魂を燃え上がらせる翼を持つ言葉言葉…言葉は単なる言葉以上の力を持っている
何かを作り出すことができる
何かを破壊することもでき
何かの力を増す事も出来る
ネズミを神にすることも
神をネズミにすることもできるのだ
真治はヒロが結衣を援助しているから。見せしめにしてやるというヒロは強がって見せるが結衣には真治の脅しの言葉が、ヒロの耳の中に入り込むのが見える。
ヒロの自信を喰らい意気消沈させている。真治は結衣の方へと向き直り彼女の髪型をバカにしウインクを投げかけ「男のレースを見に来たのか?」と問いかける。結衣はそれに言い返さずにその戯れ言を無下にする。
ヒロに勝ってほしいが、彼はもう真治の言葉に蝕まれてしまっている。今にも脆く崩れ落ちてしまいそうだ。結衣は祖母が昔そうしてくれたように…彼の耳に勝利の言葉を囁く。
しかし彼はその言葉をどうすれば良いのかが分からない。まだレースは始まってすらいないのに彼は我を失っていた…
記憶373
午前4時…
結衣はヒロが飛び出しトップに立つのを見守る。真治や他のレーサー達がそれに続く彼女の言葉が効いたのかもしれない。ヒロがコーナーを曲がっていく真治が隣へと追いつきヒロに迫る。さらに接近し腕を伸ばしてヒロの肩に触れるのが結衣には見えた。
ただ触れるだけ押したり怪我をさせようとしているのではなく、イラつかせるため気を散らそうとしているのだ。
ヒロは悪態をつく
集中力を切らす
バイクの制御を失う
間もなく彼の体はアスファルトの上を滑る。共に壊れたバイトが火花とガソリンのあとを撒き散らしながら滑っていくヘルメットは紙やすりのようなアスファルトに押し付けられ、幾層も削られてしまっている。
ヒロを救助しなければならない。しかし他のレーサー達は賞金を争い彼の横を走り抜けていく。ヒロは立ち上がり何を思ったのか道路の方へとふらふら歩いて行く。ヘルメットはもう形を成していなく、顔は骨が見えるまで削られてしまっている、口と唇がなくなっている。唇があった場所にはもう歯しか見えない。
悲鳴が結衣の背筋に恐怖を走らせる。ブレーキを踏んだ車が制御を失いヒロを跳ね飛ばした。彼女の良き友人を…
記憶374
結衣は霧の中でスピードを上げていく。目の赤い悪魔が後ろに迫っている。バイクの制御を失い横転してしまう。足は骨折し弱々しく霧の中を這って行く。彼女へと迫る足音が稲妻のように響く。一歩一歩地面を激しく揺らす。彼女は肩越しに後ろを見るがそこには深くなっていく霧しか見えない。ブーツを履いた何者かが彼女の手を踏みつける。見上げるとそこには彼女自身がいた。
結衣は病院で目を覚ます。隣には包帯に覆われ管が体に繋がれているヒロが横たわっている。当局はあれが違法なレースであったということを知らない。していたのならば全員刑務所入りだ。
結衣にはヒロに伝わっているのかがわからないが元気づけようとする。医師は生きているだけでも奇跡だという。彼女はヒロにもう歩くことはできないと伝えたいが、その勇気が出ない。彼女は何も言わない。何も言えない。一瞬の判断ミスで彼は全てを失った。誰にでも起こり得ることだ。
結衣は目を閉じ一瞬だけ、彼女があの野郎を追い詰めて犬のように殺してやる世界を想像した。
記憶375
二人がお気に入りのラーメン屋へと向かう中で美里が良い知らせを結衣に伝える。主催者たちが結衣にシークレット4に出場して欲しがっている。というのだ。とある講演者が彼女の実力を見たいと言っているらしい。
噂ではある億万長者が熱意のあるものが、夢を実現するのを手助けしたがっているということだ。何も辻褄が合わない結衣の中に、様々な感情が渦巻くが真治に彼の地位を維持させなければならない。と言う非常に強い圧力が彼女をイラつかせる。
しかし彼女は、勝つことに精神を集中させなければならないことを理解している。仕返しではない、復讐ではない、小話や軽口も禁止、ただ勝つことだけに集中する。妙な金持ちを感心させるためではなく家賃や食料の費用を支払うために…
記憶376
結衣が見覚えのある山道を登っていくと、崖の淵に立つ女性が見えた。彼女は女性に向かって手を差し出す何かがおかしいと感じ取れる。女性が少し振り返ると結衣には彼女自身の未来の姿を見ていることに気づいた。
白髪で目は血走り顔を涙が流れ落ちている。年老いた結衣は若い結衣に羨望の眼差しを向ける。そして年老いた結衣は首を振り、振り返ると飛び降りた。若い結衣は淵へと走り寄り下のゴツゴツとした岩場に無数の死体を見る。全てが彼女自身だ。
突然彼女の知らない人生が頭をよぎる。飛騨から去ることもなく、夢を追うこともしなかった人生。父のように教師となった人生。意味がわからない。彼女はその若々しい手で顔を覆い叫ぶ。そしてその瞬間にベッドの上で目を覚ますとべたつき冷たい汗に塗れていた
記憶377
美里が結衣に笑顔を見せる。夢じゃなかったのかもね。別の世界を覗き込んだのかもしれない。全く別の道を歩んだ世界そのうちの一つでは復讐心に満ち、目を血走らせた獣になりまた別の世界では夢を追うことを諦めた臆病者。
結衣は首を振る。そんな魔法のように複数の世界が存在するなんて馬鹿げた話は信じないわ。美里は魔法という言葉を聞くとしかめっ面を見せる魔法じゃないわ!量子なのよ
。量子。馬鹿げている!
美里はピーナッツを頬張りビールを一口に流し込む。夢ならばあなたが離れていっている物、残してきたものに関係しているのかもしれないわね。崖は何を意味するのか?
結衣は祖母のことを思い出す。友人や従兄弟たちとレクリエーション施設にいた時のことを思い出す。リレー競争をした際に親友が転んだ競争相手が大丈夫かを確認するために立ち止まり転んだ少年を助け起こしたために、別のチームに負けてしまったのだ。結衣は激怒し親友とは何週間も口をきかなかった。
結衣は二人のお気に入りの崖に行き親友も来ていることを期待したが、そこにはいなかった。祖母がそこにやってきて結衣の主張を聞いたが、祖母は親友の方を支持した。
結衣はその時の会話をぼんやりと覚えている。祖母は彼女の隣に座りゴツゴツとした岩場を見下ろしながら、心配そうに笑う。
「危険が好きなんだね」
そして危険以上に勝つことが好きなんだね。ずっとそうだったしこれからもそうなんだろうね。でもね結衣…勝つことが全てじゃないんだよ…
聞かせておくれ。友達を全て失ってしまうのだとしたら勝つことにどんな意味があるんだい?誰と勝利を分かち合うんだい?結衣それを笑い親友を弱虫だと言う。祖母は心配を込めて結衣の肩に手を置く…彼女は弱虫なんかじゃないよ…助けを必要とする人のために、勝利を犠牲にしたんだ。
弱虫とは全く逆だと思うよ。共感こそが私たちを人間としているものなんだよ。それをなくしてしまうと勝つことだけしかできない機械だよ。人間性を失ってしまうのなら、世界を手に入れたってどんな意味があるんだい?
結衣は目を閉じる…祖母が正しいことは分かっているが、それでも彼女の中に敗北を産む何かがある。敗北を拒む何かがすべてを犠牲にしてでも勝利を求めさせる何かが…
彼女の最大の強み、そして最大の弱点を引き出すものだ
記憶378
真治のいつまでも終わらない、耳障りな軽口の中でエンジンが震え轟音をあげる。誰もが賞金を目指しているが、結衣にはこれまでになく金が必要だ。高校で英語の補助教員として働いているが生活していくのがやっとで、バイクの修理なんて夢のまた夢だ。
彼女のバイクは、病気にでもかかっているように感じる。バイクの音は気に入っていたが最近それが変わってしまったことに気づいた。少しずれていることがあるし前のように、音が彼女の体に浸透しない他のエンジンはそれぞれ独特な歌を歌っているが、彼女のエンジンは奇妙で場違いな歌を歌っている。
賞金が必要だし、金持ちがスポンサーにつくことも悪くない。とにかくこの愚か者に集中を乱されないこと、真治が侮辱の言葉を投げかけコースから追い出してやると脅してくると。
結衣は彼に笑顔を見せる。お互いに睨み合う。やってみなさいよ。その瞬間にクラッシュして燃えることになるわよ。重みと紛らいもない恨みを込めていう。真治は男の勝負に首を突っ込むなと言う。彼女には彼の意図が分かっている。彼女をイラつかせようというのだ。集中を乱そうとしているのだ。
彼女の中の勝利のビジョンを変えてしまうとしている、真治は勝利は俺のものだと言った結衣はチラリと笑う。私が生きているうちは無理よ。
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