本日は学術書Ⅷで解放されるオブザーバーのお話「真夜中の無限の庭園」をご紹介していきたいと思います。
【DBD】学術書Ⅷで解放される「オブザーバー」の物語を見てみよう
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アーカス13
テラ・717のハディとジョーダン、テラ・1315のヘイリーとジェイデン、それともあるいはテラ・238のハンナとジャスティンが登場するシリーズはどれも、「地獄の使者」ではなく「FM使者」という番組名で、エンティティの正体やその崩壊、の行方、そして他の世界への影響についての洞察を深く取り上げている。他のテラ世界には独自の、時に相反する「使者」シリーズのバリエーションがあり、す」べてを確認して解釈することは難しい。しかしそのような不一致があると言えど、も、どの番組においてもエンティティに捧げられた非道な儀式を暴露しようと奮闘するきょうだいが主役のようだ。
今私は、これらの冒険にインスピレーションを与えた本物の記憶を求めて裂け目を調査している。それらの記憶が、本物のインスピレーションにどれほど近いのかを知るために。それに、ハディとジョーダンがここに、エンティティに捕らわしれているのではないだろうかとさえ思う。ここにいるとすれば、彼らの記憶が何らかの形で、ここを脱する方法を見出す手助けになるのではないだろうか。今のところ本物の記憶に近づく手だては何も見つかっていないが、テラ・717由来の別のエピソードを見つけた。その中でハディは、本人が言うところの「重なり」という現象について話している。それは他のエピソードで「ポロー」、「コイル」、「ブリード」などと呼ばれている。
一体この現象が本当は何であるか。現在、その洞察を得られるどうかを確かめるために、「使者」のエピソードと「重なり」についての彼らの説明を詳細に記録している。これまでに発見したのは、ほとんどすべてのエピソードに登場する場所は世界が暗黒の次元と交わる地点で、その交差点が悲劇や不運を引き寄せているらしいという事実だ。エピソードによっては「壊れた人」や「トラウマを抱えた人」が暗黒の「呪われた」場所で生まれた気から、奇妙な力を得ることができるとさえ主張している。いわばこれらの人々は、最終的に「ブリード」(その現象の呼称として私の一番のお気に入りだを使い、"ヴェール"の向こう側の事実を知ることができるのだ。
テラ・719の「使者」シリーズもまた、注目に値する。著者の詳細な記述が、私がこの場所で置き去りにされた霊魂の記憶を調査することで発見した事実はもちろんのこと、故郷の世界で我々が行ってきた現存する次元と古代人についての研究に、最も近いように思うからだ。1つずつ、あるいはエピソードごとに、救いの道へと近づいている...あるいは、狂気へと。どちらであれ、先にたどり着くほうに。
血の小部屋。FM死者。別世界。その1。
ハディはニューヨーク・マンハッタンの小さなデリに入り、小さな売店に近づくと、義兄のジョーダンの前に封筒をドサッと置いた。兄は早めの朝食に食べてい」たスクランブルエッグを噛むのを止めて聞いた。「これは一体?」
「私たちを援助する人の正体が分かったの!」ハディが封筒を開け写真を取り出すと、そこに映っていたのは黒いスーツに身を包んだ白髪交じりの中年男だった。
ジョーダンは肩をすくめて言った。「誰だよ?」
「スリン・リベラ。サウンドエンジニアとして戦略情報局のとある極秘軍事計画を担当した。ノイローゼになって何年も施設に入った後、億万長者で慈善家のコービー・ダックスが世話役を引き受けたの。同じプログラムの他の人も似たような問題を抱えていた。その人、この近くに住んでるのよ。でも気になるのが・・・なぜスリンは私たちを援助するのかしら?」
ジョーダンは腕を上げハディの後ろに立っている男に向けて指を刺した。自分で聞いてみたらどうだ!ハディはすぐそばに立つ写真の男に顔を向けた。スリムはジョーダンのそばにある席に。俺の事情には関わるな!二人には忠告しておく。詮索するのはやめたほうが身のためだ。事情っていうのは具体的に?ハディが聞く。
ジョーダンは緊張して卵を少しだけ口に入れ、ゆっくりと噛んだ。「刺激するのはやめろ。詮索をやめたほうがいいなら...やめたほうがいい...それで俺は構わない」
「どうして私たちの叔父を知っているの?」ハディは兄の質問には答えずに続け、た。「なぜ私たちを助けるの?あなたが私たちを送り込んでいるあの場所はみんな、一体何なの?」
スリンはしばらくハディをじっと見てから言った。「君たちの仕事と特別な能力にとても興味があるとだけ言っておこう」
ジョーダンは卵を飲み込んで肩をすくめた。「そうか...なるほど...俺はそれで納得したけど」
「私は納得いかない」ハディは表情を硬くして返事を待った。「あなたが私たち、を援助する理由が知りたいの」
スリンは落ち着かない様子でデリの店内を見渡すと、ハディとジョーダンに向き直った。「俺の忠告を聞いてウサギの巣穴に入るのはやめておけ。今のところはな。君たちにはまだその準備ができていない。それなのに、危険な連中にその姿をさらしている」
「どんな連中?」ハディは目を細めて男を見た。「警察のこと?それとも軍隊?」一体何の話をしているの?」
スリンは重々しく首を横に振った。「警察や軍隊にも応じないような連中の話だ。政府や企業を作り出し、骨の髄まで利用したあげくに、用が済んだらゴミのように捨てる」
「その連中の目的は何なの?」スリンの答えに納得せず、ハディが言った。
スリンが立ち上がる。「俺の件に関わるなと言っている。番組に集中しろ。俺の送る手がかりとな。時期が来ればすべてが明るみになるだろう」
ハディは男の写真が入った封筒を持ち上げた。私が先走りすぎている・・・そういうことなの?
「この件には関わるな」スリンはそう繰り返すと、店を出ていった。
ハディとジョーダンはスリンがデリを出る様子を黙って見ていた。それからジョーダンはハディの確固たる顔を見て悟った。妹の表情は、絶対に真相を突き止めてやるという決意を物語っていた。
血の小部屋。FM死者。別世界。その2。
「ほら、お兄ちゃん!先走るわよ!」ハディはジョーダンを連れて郊外にある老朽化した家の玄関先にやってきた。「ジム・ダン中佐は戦略情報局でスリン・リベラと一緒に任務についていたの」ハディが次の言葉に続く前にドアがギーっと音を立てながら開き、中からブロンドのショートヘアをした小太りの中年女性が、現れた。
「何か用かしら」
ハディは笑顔で答えた。「どうも。ポッドキャストの取材で、ダン中佐にお話を伺いたくて来ました」
女は一歩下がった。「これってドッキリか何かじゃないでしょうね?」
ハディは首を横に振った。「いいえ、違います」
「ジムは7年前から行方不明なの。誰も行方を教えてくれないし、残されたのはうわさだけ」
ジョーダンは少しずつ女に近づいた。「僕たちのポッドキャストが役に立てるか」もしれません。あなたが中佐の話をすれば、それを聞いた誰かが力になってくれ、るかもしれない」
「彼の話をするですって?」女はしばらく言葉に詰まってから、頷いて言った。「ええ...わかったわ...それでジムが帰ってきてくれるなら」
ハディとジョーダンは家の中に入り、案内されたキッチンにある小さな丸いテーブルに座った。
「ジムが教えてくれたことしか話せないけど」と言うと、女は大きく息を吸い込んで、神経を落ち着かせるようにゆっくりと吐き出した。「彼が勤めていた戦略情報局は...いわば...陰謀説のようなものなの」
彼女は一呼吸おいてから続けた。「知ってた?『陰謀説』という言葉は軍の作り上げた言葉で、それまでは存在しなかったってジムが言ってた。政府の語り口を疑うようになったということね。でも今は...『陰謀論者』と呼ばれるのが嫌でみんな何も疑わなくなってしまった。
女は笑い、それからこう付け加えた。「本当に見事よね。でもそれこそが、誰も政府を疑わなくなった理由なのよ...漏洩された文書を掲げた内部告発者が何人も同じことを言っていたとしてもね...汚名を着せられたくないから疑わないし、疑問も抱かないのよ」女は笑い、それからこう付け加えた。
彼女は信じられないといった様子で頭を横に振り、少し笑って言った。「ジムは、よく言っていたわ。『陰謀説』の始まりが陰謀説なんだって・・・とにかく・・・私に言ったのよ。世界には他の場所とは違う特別な場所があるんだって。その場所は、物理法則に逆らい、人類の理解を越えて、まったく別の世界につながっている...別次元にね。政府はそれを『重なり』と呼んでいた。クレイジーな話でしょ。
ジョーダンが頷く。
ハディは何も言わなかった。前にその言葉を聞いたことがある。当時調査していた謎のカルト集団は、いつの日か人類を別次元の存在へと進化させる古代神のようなものを信じていた。このカルト集団と政府がその現象に同じ呼称を付けるの」は、奇妙な偶然だ。
「ワームホールみたいな?」ジョーダンが質問した。
女は首を横に振った。「ジムが言っていたのはそんなものじゃなかった。『重なり』についてはあまり話さなかったけど、その存在を目の当たりにして彼が思ったのは、別の世界が...どう言ってたかしら・・・そう、私たちの世界を飲み込んでいるって...まるでその『重なり』がどんどん大きくなって、私たちが宇宙の消化管を降りていくような...それに・・・こう言っていたわ・・・その『重なり』は引き抜くんだって...他の世界から、いろんなものを」
それからしばらく女は黙り込み、考えにふけっていた。「彼は明らかに変わったわ。怒りに満ち、当たり散らかすようになった。それまでそんなことは一度もな」かったのに。私に話を打ち明けなくなったの。そして、うわさが出始めた」
「うわさってどんな?」ハディは身を前に乗り出して聞いた。
女は黙ったまま考え込み、それから口を開いた。「政府が彼らを長期間『重な」り』に留まらせるために、彼らに対して何かをしていたっていううわさよ。それだけじゃないわ。政府は別世界から誰かを引き抜いたとも聞いた。想像できる?別世界や別次元から来た人間だなんて」
女は目に涙を溜めていた。「政府は、ジムは私のもとを去ったと言ったわ・・・でも」私はジムという人間を知っている・・・ジムの身に何かが起きたから、政府は私が言うことを陰謀論者として片づけているのよ。でもこれだけは言わせてー」
女がそう言おうとした時、突然銃声が鳴り響き女の口から大量の温かい血があふれ出た。粉々になった歯と唾が、言葉の代わりに吹き出る。それから女は目を見開いて、前にうなだれた。
ジョーダンは罵声を上げ、瞬時にハディを床に押し倒した。銃弾が家のあらゆる方向から撃ち込まれていた。
弾が怒った蜂のように頭上を行きかうなか、ハディは兄を見上げて言った。「私」たち・・・先走りすぎたようね」
「まったくだ!」
血の小部屋。FM死者。別世界。その3。
「血の小部屋。FM使者。別世界。その3。ギラギラした銃口から銃弾が放たれるリビングルームから、ハディは兄に続いてる家の地下室へと向かった。2人はつまづきながら暗い階段を降りた。長方形の窓から一筋の太陽の光が差し込んでいる。隠れようとした時にはすでに暗殺者が階下で待ち受け、ライフルの銃口をこちらに向けていた。ハディとジョーダンは手を握り合って目を閉じ、即死を覚悟した。大きな銃声が響き、目を開けると、2人ともまだそこに立っていた。
暗殺者はあり得ないという表情で目を大きく見開いて2人を見つめ、その場にくずれ落ちると、煙を出すリボルバーを持ったスリンが現れた。「早く」と彼は言った。
きょうだいは躊躇なくスリンの後について階段を上り、いくつかの死体を横切ってドアの外へ出た。兄へ続いて覆面の黒いセダンに乗り込むまでに、ハディが数えた死んだ暗殺者の数は7人だった。強い切迫感のなかでスリンはエンジンをか、け、アクセルを踏み込んでその場を離れた。沈黙を破り、ハディが問いただす。「あれは全部本当なの?うわさも、世界の交差も、『重なり』も?
スリンは2人を叔父の待つホテルに送り届ける道中、運転しながら道路から目を一切離さなかった。「その質問には今は答えられないし、君には次のエピソードに集中してもらわなければならない。ここに来たのは古い地下鉄の廃駅を調べることが目的だろう。その課題だけに取りかかったほうがいい」
「それが『重なり』なのか?」ジョーダンが聞いた。「だから事故があれほど多かったのか?それで廃止になったんだな?」
スリンは躇してから、重々しく頷いた。
「あなたと億万長者は、どうして古い地下鉄に興味を持つの?」ハディが言った。
スリンはため息をつき、言葉を探すのに時間を置いてから答えた。「同僚を探しているんだ。俺たちは世界中のとある地域を調査していたが、そのうち数人は戻らなかった。そして戻った者は...戻ってきたが...心身はズタボロで...混乱して...頭がおかしくなってしまった奴さえいる。俺は真相が知りたい。戻らなかった奴、らの身に何が起きたのか。奴らはきっと生きている。どこかで迷子になっているんだ...世界と世界のはざまでな」
「つまり彼らを見つけるために私たちを利用してるってこと?」ハディはきっぱいりと言った。
「ギブアンドテイクだ。互いに協力し合う関係だよ」
ハディは首を振って言った。「もっと知りたい。これじゃ足りないわ」
スリンはため息をつき、セダンを路肩に寄せてエンジンを切った。しばらく考え込んだ後で、バックミラー越しにきょうだいを見て言った。「俺は、『重なり』に入るための、いわば・・型破りな訓練を受けたんだ...だがそれは不可能だった・・・それはまるで、不可能なエネルギーが引っ張るかのような....何と言えばいいのか...地獄....そう、自分から地獄を引き出すみたいな・・これ以上の説明をしようが」ない。感じるのは純粋な間だけだ。だが、戦略調査局は考えた。心の発達段階であれば、可能になる・・砕くことができる・・・砕いて、『重なり』によるストレスに耐えられるように上書きできると」
「子供を道具にしやがって!」ジョーダンは嫌悪感をあらわにして唾を吐いた。
スリンはバックミラーから目をそらせ、何も言わずに視線を下ろした。
「それで、私があなた達の新しい道具ってことね」ハディが言った。少しの間、ハディは黙って直近の調査について考えていた。古い精神病棟で、他の世界に関するメモが書かれた日記を見つけたことを思い出す。不死の世界に捕らわれた。人々の記憶と、アーティストや作家が何らかの形で、その別世界と彼らの考える本人の想像力(実際は第三の目)を馴染ませることができる方法に関する考察を明らかにした日記。奔放な想像力を持つ堕落した狂人による妄言としてハディが「片づけたのは、おかしな理論だった。その患者が書いた何かに、彼女は思い当たることがあった。真実は物語の中にある。
ハディはひとり言のように呟き、もう一度そのノートを読み直して見逃しているJ情報がないか確かめてみようと思った。ノートならモントリオールのアパートに置いてあるし、次の調査の前にステファンに寄り道をさせることだってできるだろう。
「君たちには分からない」スリンは続けた。「これは行方不明の仲間を探すという単純な話ではない。『重なり』には俺たちが理解すべきことがあるんだよ。新しい種類のエネルギーがあるかもしれない....新しい世界の見方があるかもしれない...宇宙はー」
ジョーダンが笑って割り込んだ。「あるいは...何もないかもしれない...ただの生き地獄以外は」
血の小部屋。蜘蛛。
血の小部屋。蜘蛛。頭の中で見たことがある。蜘蛛だ。やって来る!私たち全員のために来るのだ!大きなやつも、小さなやつも。恐竜サイズの巨大なやつだっている。私には幻覚の中で、街を突進して通り抜け、無知な連中に真実と理解をもたらす蜘蛛が見え
る。
だが今...今あの蜘蛛は...安全な場所にいる...隠れている・・・私の頭の中に。そして私は、それらが私の耳や頭蓋骨を這い回り、卵を産み付け神経をかじるのを感」じ、待っている...蜘蛛たちが突如世界へと飛び出して、人類が超越に達する手助けをするその時まで、私は待っている。それがどういう意味であるかは、実は私にも分からない。だが、毎晩眠りにつく前に、蜘蛛が私にそう言うのだ。
洞窟を覚えている...それがいかにして起きたかも、全部覚えている・・・濃く暗い霧の中にいた。小さな生き物が私の中で大きくなり、私を飲み込み、真実の幻を見せ、愛の言葉を囁く...百万ものおしゃべりな声が言う。私がその者だと...選ばれし者だと...我々が知ってるとおり、全世界を変える人間であると。それなのに・・・
不信心者たちによって投薬されている!彼らは私の中で育つ命に毒を与えようとしている...私の子供たちを殺し、私が生まれながらにして運命づけられた人生の目的を果たすことを阻止するのだ。ついには私を狂人呼ばわりまでしていると聞いた。狂人?私が?どこをどう見て狂人だと言うのだ?狂人が中で育つ命を守ろうとするだろうか?狂人が中で育つ命を、自分の欲しいものや必要なものを差し置いて優先するだろうか?
そんなわけがない!狂人なのは彼らのほうだ。彼らにこそ薬が必要なのだ。このバカげた施設で、正気でいるのは私しかいない。私は皮膚の下を這う蜘蛛のため、に何だってやってきた。私の足元で寝そべっているこの医者が、あの子たちに危害を加えることはないだろう。蜘蛛たちの準備は整っている。私の頭蓋骨から押し出てきて鼻や口から追い出せば、私は今以上の存在になる。
彼らはなぜそれを疑うのか!なぜ分かってくれない?私が何者で、どう進化したいかを、一体どうして理解しないのだ?蜘蛛が私から飛び出しを飲み込めば、私は啓示となるのに。
テラ・アラクネ。その1。
105.7FM。フォールズシティ・ラジオ・クラシック。マットリバースが市内で起きた停電についての最新情報をお届けします。未確認の報道によると、フォールズシティ電力社が蜘蛛のような生き物による襲撃に見舞われているとのことです。インターネット上ではこれまで見たことのないような生物テロによる攻撃だ人といううわさが囁かれていますが、今のところ責任の所在を認める団体もなく、公には何も確認されていません。
現在、電力会社の発電機が爆発して激しく炎上したことで電力供給が停止し、市の西地区が停電になっているということは確認が取れています。市警の報告によると、これらの不明な生物によって同社付近にいた自動車が数台襲撃を受けましたが、非常に危険な状態だということです。少なくとも3人の運転手の死亡が確認され、4人が重体です。警察は自動車の運転手に対し、電力会社付近の道路と93サウスを迂回して通行するように呼びかけています。
今回起きた襲撃に関する最新情報は以上です。今後も事態が展開するにつれ情報をお届けする予定です。さてそれでは、チャンス到来ウェルスマネジメン」ト社の金融アナリストが最新のアドバイスを紹介する、「マネークッキング」のコーナーに戻りましょう...未来が何をもたらしてくれるのかは、分かりませんから。
テラ・アラクネ。その2。
テラ・アラクネ。その2。105.7FM。フォールズシティ・ラジオ・クラシック。フォールズシティ総合病院の広報担当によると、正体不明の蜘蛛による毒が原因の症例件数が尋常ではなく、警戒レベルが上昇しているということです。
蜘蛛は背中に明るいオレンジ色をしたらせん状の模様があり、拳ほどの大きさで、当局は”地獄背グモ”と名付け、出くわした際には2メートル以上は離れるよう推奨しています。この事態に連邦政府当局は懸命に対処する一方で、これがテロリストによる攻撃なのか、それとも新しい種が突然現れるも妥当な科学的説明のつかないという、「自然進化」と呼ばれる現象なのかを見極めようと努めています。他の諸説では、例えばアプリコット島にある極秘の生物兵器研究所から逃げ出した、人為的なライム病の変異型を持つ兵器化されたダニのケースのように、政府が実験に失敗したという声もあります。停電になる地帯が拡大するにつれ、状況は非常事態の域に達しつつあるように見えます。
市の検視官によると、数十体の遺体から明らかになったのは、地獄背グモの毒は炎症性の腫物と膿がゆっくりと体を覆い、時間をかけて死に至らしめるということです。また、被害者のなかには狂暴化する症例もあると見られ、引き起こす原因は熱や副腎過剰のほか、正気を完全に失ったとしか言えないような症状も見られるということです。感染した患者は全身が腫物に覆われ、実質身動きが不可能になるまで細心の注意を払った対処が求められます。フォールズシティ電力社の代理人によると、同社は発電機の修理と電力供給の回復に精力的に取り組んでいるものの、奇妙な黒い霧によって修理作業に遅れが生じているとのことです。また同社に勤める社員は匿名でSNSを通じて、霧から奇妙な音が聞こえ、それが何らかの形で蜘蛛に蜘蛛に関係しているようだと述べています。
とある報告では、ある社員が霧を吸い込んだ後に、蜘蛛が体を突き破って出てきたとのことです。また、別の報告では、最初の襲撃前に発見された鹿の死体から、何千匹という数の蜘蛛が這い出してきたとの情報も入っています。
もう一度繰り返します...現在発生している霧には、生物学的な宿主を必要とする極小の卵が含まれています...皆さん冷静に、そして親や地獄背グモに遭遇した際には十」分にお気をつけください。今後も追って状況をお伝えします。それまで、チャンス到来ウェルスマネジメント社がお贈りする「マネークッキング」のコーナーに戻りましょう...今日の悲劇は、明日の絶好のチャンスですから。
テラ・アラクネ。その3。
105.7FM。フォールズシティ・ラジオ・クラシック。再びフォールズシティ報道局からお届けします。今ラジオを付けられた方に改めてお伝えしますと、現在、当地域一帯で奇妙なかく乱が起きています。さまざまな形や大きさをした出所不明の蜘蛛が住宅街に向って前進していますが、当局は住民に対し冷静に対処するよう求め、この異常事態を収束するべく軍隊が派遣されたとのことです。
なお、世界中の各国でも類似した現象が発生しているという報告がありますが、確認は、されていません。当番組では皆様に必要な情報を提供するべく、入手できる情報は何でも入手を試みております。
そして...お待ちください...今新たな情報が入り、ました...十代の若者グループが波止場近くにある缶詰の廃工場に立てこもり、明らかに犬ほどの大きさをした蜘蛛に襲われている様子をライブ配信しているとのことです。若者グループのうち2名は当番組プロデューサーを務めるサブリナ・マイルカスの息子、イライアスさん、そしてエランさんと見られるようで、サブリナは2人と必死に連絡を取ろうとしていますが難しく...サブリナによると、息子たちの友人たちも確認できたということです...
ケイシーさん・・・アリエラさん...オリビアさん・・・それにおそらく・・ニーナさん・・・霧について既に情報が入っていますが、彼らの映像によるとケイシーさんがその霧を吸い込み、頭痛や吐き気を訴えているもようです・皮膚の下を何かが追っているとも・・・現在、当番組では現場で何が、起きているかより把握するために、彼らの配信に接続しようと試みています。しばらくお待ちください。
テラ・アラクネ。その4。
105.7FM。フォールズシティ・ラジオ・クラシック。8月7日午後8時現在、戒厳令が敷かれています。軍が安全の確保と民事を取り仕切ることになり、すでに出所が不特定の生物攻撃であることを発表しました。分類できない蜘蛛が我々の都市を、国を襲っています。家から出ないようにしてドアをバリケードで囲い、さらなる指示を待ってください。蜘蛛は本物で、非常に危険です。政府が国民の皆さんの安全を確保し、これ以上の被害者が出な-
失礼しました。ホワイトハウスとの通信が途切れたようです。えー、お待ちください....当番組のプロデューサーから、古い缶詰工場に立てこもった若者から新たな情報が入ったとのことです。エランさんとイライアスさんから情報提供があり、オリビアさんが地獄背に噛まれ、周りへの危険を考慮し別部屋で隔離されているもようです。中継によるとケイシーさんは身体じゅうが腫れあがり、特に首元の腫れがひどく、皮膚の下を小さなものが動いているとのことです。ニーナさんは行方不明とのことですが、現在分かっていることは...コメントを読むかぎりですが...蜘蛛に外へと引きずり出され、連れ去られたということです。
えーっと...サブリナいわく、息子さん2人が外に出てニーナさんを探す準備をしていると、いうことです。2人と中継がつながるかもしれません...お待ちください....エランさん・・・聴こえますか...そっちはどういう状況でしょう...エランさん
テラ・アラクネ。その5。
105.7FM。フォールズシティ・ラジオ・クラシック。蜘蛛が友達を連れ去った波止場の方向へと向かう、兄のイライアスの後を追いかけたんだ。ペンキの缶とライターを武器として持って...でも一体アレが何なのか、分からないんだ…まるで母なる自然に送り込まれたかのような・・・分からないけど...世界に危害を加えていJる僕たちを止めるために...とにかく...友達が見当たらなかったから缶詰工場に戻ったら...ケイシーの体から何千匹という数の蜘蛛が飛び出してきてそれで...残った彼女の体を食べていて...だから火をつけて、消したんだ...僕たちはまだここにいる...だけど長くはいられない...こいつらは・・・地獄から来たのか・・・もっと暗いどこかなのか...そんな場所があればの話だけど...
私たちは、エランと彼のお兄さんとの通信が途絶えてしまったようです。彼らの 無事を願い、祈るほかありません。そして今...当番組には街の混沌とパニックを 伝える報告が続々と届いています。スーパーでは飲料水や物資を求め殺到した数 百人が入り口に押し寄せ、母親とその娘が圧死しました。今一度、リスナーの皆 さんにお伝えします。これ以上の悲劇を生まないためにもステイホームを徹底 し、政府にこの状況を任せてください...待ってくれ...今のは一体・聴こえるぞ・・・ あのシューっという音って聴こえるか...クソ…