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【DbD】リー・ユンジンの固有パークと背景ストーリー【デッドバイデイライト】

 

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・リー・ユンジンについて知りたい!
・固有パークは?
・背景物語も教えて!

とDBDのサバイバー、リー・ユンジンについて詳しく知りたい方向けの記事となっています。

 

【リー・ユンジン】固有パーク

パーク名 解放レベル 優先度
出世街道 30 ★★★☆☆
大ヒット 35 ★★★☆☆
自己防衛 40 ★★☆☆☆

出世街道

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発動条件 ・他の生存者がフックる吊るされるたび
効果詳細 ・他の生存者がフックる吊るされるたびに、3トークン獲得する。発電機のスキルチェックでグレイトを出すと全てのトークンを消費する。スキルチェックでグレイトを出した際に修理進行度が1トークンにつき1%増加する
詳細解説 『出世街道』効果解説&使い方ガイド

大ヒット

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発動条件 ・パレットで殺人鬼を怯ませる
効果詳細 ・パレットで殺人鬼を怯ませた後、通常150%の速度で4秒間全力疾走する。40秒間疲労状態になる。
詳細解説 『大ヒット』効果解説&使い方ガイド

自己防衛

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発動条件 ・12メートル以内にいる他の生存者が通常攻撃または特殊攻撃を受ける
効果詳細 ・12メートル以内にいる他の生存者が通常攻撃または特殊攻撃を受けるたびに、自己防衛が発動する。発動中あなたの赤い傷マークが10秒間隠される。
詳細解説 『自己防衛』効果解説&使い方ガイド

おすすめ解説動画


【DBD】新サバイバー【リー・ユンジン】パーク解説&合いそうなパーク紹介含む#636

 

こちらの動画はフォグウィスパラーのちくのぼさんの動画になります。「リーユンジン」解説+プレイ動画になっております。ぜひご覧頂ければと思います。

リー・ユンジンの背景物語

打たれ強く野心家であるユンジンの人生は苦難の道だった。それでも音楽業界で成功を掴むために、長年の努力も、自分を犠牲にすることも惜しまなかった。

 

幼少の頃からユンジンはドラムを真似たり、ピアノの鍵盤を弾いたりと、音楽に魅了されていた。ところが10才になった時、大事な楽器を失ってしまう。家族が大きな借金を抱えてしまい、支払いが滞ったからだった。ユンジンの家にあったものは何もかも、家ごとすべて没収された。ユンジンは泣きながら、4才の妹をきつく抱きしめるしかなかった。一家は窓のない、2部屋の地下物件に引っ越した。両親が借金を返すために昼夜働くかたわら、ユンジンは妹の世話役になった。毎晩彼女は歌を歌って妹を寝かしつけ、自分も一緒に眠った。

 

17才の時、ユンジンの高校に有名なレコード会社のマイティー・ワン・エンターテインメントがオーディションのためにやってきた。ユンジンはアイドルの訓練生としては不合格だったが、スタジオでの無給インターンシップに受かった。その後数年間、ユンジンはスタジオからいくつかの大ヒットを出したものの、評価も功績も彼女のものにはならなかった。与えられるべきものを得るため、世間の目に自分をさらすことにしたユンジンは、きらびやかなファッションに身を包み、自分の楽曲にアーティスト名である「マグヌム・オプス」というフレーズを入れ、ループさせた。彼女の曲はファンに認知されるようになり、「NO SPIN」というボーイバンドのプロデューサーを務めることになった。バンドはパフォーマンスがイマイチで、特殊な彼女の手法を必要としていた。

 

NO SPINの売り出しサウンドが気に入らなかったユンジンは、バンドを目立たせるためには不良っぽさが必要だと考えた。スター発掘番組を通して彼女が出会ったのは、ハク・ジウンのエッジの効いた飾らないサウンドだった。ユンジンはジウンを新たなメンバーに迎え、NO SPINを再デビューさせた。第一弾のビデオはリリースして数時間のうちにあっという間に話題になった。

 

バンドが大ヒットしたことで、ユンジンの敏腕プロデューサーとしての評判は確固たるものとなった。ハイファッションに身を包み、豪華なイベントに出入りするユンジンからは、貧しく厳しかった少女時代も遠く昔のことのように見えた。ペントハウスに引っ越し、息をのむようなソウルの夜景が一望できるレストランで著名人たちと食事を楽しむ日々。

 

1枚目のアルバムが記録破りの成功を収め、NO SPINの2枚目はハードルが高くなっていた。新曲をレコーディング中、火災報知器が突然鳴り響いた。自分の身の安全を懸念したユンジンは逃げ遅れたスタッフに構わず、急いで建物から避難した。道端に飛び出して、咳き込む人々の中にNO SPINのメンバーがいないことに彼女はようやく気がついた。ビルを飲み込む巨大な炎は、救急車のホースから着々と放出される水流によって徐々に小さくなっていった。

 

NO SPINのメンバーは火事によって死んだ。ただ1人を除いては。ジウンだ。アルバムは台無しになり、バンドは終わりを告げた。ユンジンは解雇され、ジウンはアイドル訓練生の指導員になって朽ち果てるだろう。だが、彼女はハゲワシに横取りされるのをどうすることもできずに見ている被害者になりたくはなかった。

 

マイティー・ワン・エンターテインメントには知らせず、彼女は新曲を作ってジウンのキャリアを再スタートさせた。ジウンに悲しみをうまく取り入れ、突然の死による苦しみを歌った曲を作らせた。ミュージックビデオでは、ジウンがNO SPINのメンバーひとりひとりに別れを告げる演出をした。ユンジンは巧妙に、ジウンの新たなステージ名で曲をリリースした。その名は、「トリックスター」。彼は伝説の精霊、トッケビのように、恐れと畏敬の化身となった。

 

ジウンの曲は世界的なヒットを収めた。悲しみと罪の意識という普遍的なテーマが、世界的な反響を得たのだった。トリックスターと共に回った世界ツアーでは、各国で成功を掴んでいった。ところが気味の悪いことに、同時期に異様な連続殺人事件が起きていた。この関連性にユンジンは不安を覚えていた。ツアーの日程が被害者の死亡時刻と一致していることに気づいたからだ。NO SPINメンバーの死後、精神的に疲れ、アーティストを守ることに不安だった彼女は、トリックスターの警護を強化した。連続殺人鬼が、トリックスターの病的な音楽に触発され、彼に執着する錯乱したファンだったら?

 

ソウルに戻ったユンジンは、ジウンと新曲に取り掛かった。夜明け前にスタジオ入りしたユンジンは、先にそこにいたジウンを見て驚いた。彼はまるで一晩中曲を作っていたかのように、疲れ切っている様子だった。曲を聴いた時、ユンジンは金切り声とスネアの音が入ったイントロを奇妙に感じた。彼女の好みから言えば、エクスペリメンタルの要素が強すぎる。

 

1週間後、また1人の死が報告された。遺体は拷問されたとみられ、これまでの殺人事件と同様に派手な方法で行われていた。今回の被害者は目玉がえぐられ、ダイヤのカフスボタンが詰められていた。翌日、テレビではどのチャンネルもこぞって被害者について報道し、被害女性のSNSから抜粋した動画を紹介していた。その動画で、女性は彼氏からハートの形をした誕生日ケーキを手渡され、驚きで甲高い声を上げていた。ユンジンは胃に吐き気を覚えた。あの声。聞いたことがある。だが被害者と面識はない。

 

次の朝、トリックスターのオープニング曲を聴いてユンジンの心臓は止まりそうになった。曲の中の金切り声が被害者の甲高い声と一致する。彼は被害者の誕生日の動画からサンプルを録音したのだろうか?いや、それは不可能だ。彼が曲をレコーディングしたのは、事件が報道される前のこと。ブースのガラス窓越しに、ユンジンはジウンをじっと見た。彼はNO SPINで唯一生き残ったメンバーだ。他は全員死んだ。奇妙な殺人事件はツアーの日程と同時に起きている。死の痕跡が、一点に向かって合流していく。彼へと…

 

もし彼が犯人だとすれば…どんなアーティストも、これほどのスキャンダルでは生き残れはしない。ユンジンのキャリアも、いや、人生もおしまいだ。築き上げたものがすべて崩れ去るだろう。波のような吐き気がこみ上げる。脈が速くなり、ユンジンは化粧室へ駆け込んだ。氷のように冷たい水で顔を洗いながら、とっぴな考えが頭をめぐった。もっと簡単に説明がつくはずだ。自分は働きすぎなのかもしれない。あるいは、自分の成功を信じていなかったのかもしれない。彼女の頭がこんな疑いをでっち上げていたのは、成功よりも最悪の事態を信じるほうが簡単だからだ。すべては妄想なのだ。レコーディングブースに戻ったユンジンは、不安な気持ちを考えないようにした。

 

数か月後、マイティー・ワン・エンターテインメントの経営陣からプレッシャーを掛けられた。トリックスターの音楽が暴力をテーマにしていることと、パフォーマンスで披露するナイフを使ったトリックを彼らが非難していたことから、収益の落ち込みはジウンに責任があると言い出したのだ。自分のアーティストに罪を着せられたユンジンは激しい怒りを覚えたが、ジウンの音楽がニッチすぎて売り上げにならないことは認めた。ジウンは、努力したが、最終的に数で負けたということをジウンに伝えた。ユンジンが経営陣に対し真っ先に腹を立てたことで、ジウンは彼女が自分の味方であると信じた。2人にはマイティー・ワンのための次なるヒット曲を作り、それを披露するために、3ヵ月の猶予が与えられた。

 

あっという間に本番を迎え、ユンジンが経営陣のプライベートライブで席に座る時がやってきた。彼女は自分の曲に自信があった。ところが曲が始まるや否や、何かがおかしいことに気がついた。

 

鼻につく濃い煙が、部屋に充満する。ユンジンは咳をしながらあえいだ。しかし咳をすればするほど、吸い込んでしまう。身体が椅子に沈み込み、手足は重くなって痺れ、恐怖に襲われながら見開く自分の目に映るのは、現実化した悪夢そのものだった。

 

トリックスターは血の嵐となって、切りつけ、突き刺し、手足を切り刻んでいた。経営陣は肉のように切り分けられている。彼らが逃げることは不可能だった。ユンジンと同じく、麻痺して動けない。彼女の中で、はらわたが煮えたぎるほどの怒りが膨れ上がった。なぜ自分の直感に従わなかったのか?火事。ツアー中の殺人事件。彼が犯人だったのだ。すべて彼の仕業だった。ユンジンには最初から分かっていた。彼女のキャリアは、マイティー・ワンと共に終わるのだ。仕事を共にした、同僚であり友人である彼らが皆、目の前で死んでいく。あの頃のように、また何もかもを失ってしまう。

 

嫌だ、それを許してなるものか。彼はきっと償うことになる。ジウンはユンジンが苦しむと分かっていた。突然、黒い霧の渦が地面から沸き上がり、彼女は…別の場所にいた。

 

まばゆい閃光がユンジンの視界を奪う。闇の中でスポットライトに照らされると、大勢の歓声が沸き起こる。皆が彼女の名を叫んでいる。「マグヌム・オプス!マグヌム・オプス!」

 

ユンジンは笑みを浮かべながら、その闇を喜んで受け入れた。 

リー・ユンジンのアーカイブストーリー

嘘の反復 記憶443

長時間のフライトで疲れたユンジンは、ノートパソコンの電源を入れるとあくびをした。彼女は二時間前にリオデジャネイロに着陸したばかりだったが、仕事は、 待ってはくれない。メールボックスを見ると、見知らぬユーザーから自分に宛てて12通もの未読メールがある。彼女のことをユンジンだと知っている者はほとん どいない。ほとんどの人は彼女をマグヌム・オプスとして認識している。彼女は メールをクリックする。


彼女とトリックスターを殺す計画が、生々しく詳細に書かれている。トリックスターの一番のファン、と署名がある。殺人予告だ。異常なほど詳しく書かれてい て、ホテルのロビーにいる彼女の写真も添付されている。


NOSPINが亡くなる前なら、そんな脅迫は無視していた。でも今は・・・マニキュアが塗られた手は携帯電話を持ちながら震えている。


脅迫は軽視できないほど深刻だ。彼女は警備員を呼んで緊急のミーティングを開く。外出は、レコーディングとコンサートのリハーサルだけに制限されている。ボディーガードがトリックスターと彼女に割り当てられる。


ホテルの敷地内に留まることに反対するトリックスターを除き、みんなが新しいルールに従うようになった。特に驚きはない。彼女とトリックスターの関係は、数か月前から行き詰っている。彼女が下す決断のすべてに彼は異議を唱え、彼のエゴによって彼女の忍耐は限界まで来ていた。頻繁に意見の相違があり、次回のアルバムは予定より遅れており、彼女は彼のツアーを監督しながら3曲の新曲を制作することになった。


お抱えのセキュリティ専門家は、携帯電話の準備ができていることを確かめている。彼女のリクエストにより、GPSの追跡アプリケーションがすべての社用電話にインストールされた。このことは誰も知らない。トリックスターが彼女の忍耐」力を試すようなことがあれば、このアプリが役に立つだろう。これは彼のためだ。ひいては彼女のためでもある。

嘘の反復 記憶444

ユンジンは、レコーディングスタジオでコーヒーを飲みながら、あくびをこらえる。こめかみがズキズキ痛む。かなりひどい時差ボケだ。それに、熱狂的なファンの絶え間ない脅迫によって、夜に眠ることも妨げられている。


ブースに戻る途中、隣のスタジオが埋まっていることに気付いた。彼女は中を覗いた。レコーディングブースで若い男が笑っている。雑誌を何千部でも売ることができるような呑気な笑顔をしていた。彼女はミックステーブルの男に気付く。そこそこ有名なサン


ディエゴのプロデューサー、アラーノ・ミューズだ。
リオで何をしているのかしら?何か新しい噂話でもあれば、彼女も元気になれるかもしれない。彼女は扉の窓を叩く。


扉がきしみながら開く。


もちろん彼は彼女のことを覚えている。誰もマグヌム・オプスを忘れてはいない。彼は作業中の楽曲を流していたが、彼女は勝手に中に入る。スローなテンポで、型にはまっていて、新しいところは何もないベースラインだ。無難すぎて興味がわかない。すると、この世のものとは思えない歌声が部屋を満たす。ユンジンは、コーヒーをこぼしそうになった。アーティストの歌声はクリスタルのようだ。カ強いのに繊細な表現。


誰かしら?


アラーノは、この若いアーティスト、ルーカスに、キーを一段階下げるように言う。間違った判断だ。この曲は、ルーカスの声域を押し広げるために作られたもので、彼の歌声を退屈で一般的なサウンドに閉じ込めるべきではない。彼女はルーカスに近づき、名刺を手渡す。


本気でアーティストになりたいと思ったら、私に連絡して。


彼女は帰り道に後悔の念に襲われた。あれとまったく同じ言葉を、何年も前にトリックスターにも言った。その当時は、彼と一緒に仕事をするのを楽しみにして、いた。


そんな時期はとっくに過ぎ去ってしまった。

嘘の反復 記憶445

ホテルのバーで、ユンジンは冷たいカイピリーニャを一口飲む。ライムの酸味を和らげるサトウキビの酒。


なぜ彼女は、あの若いアーティスト、ルーカスに名刺を手渡したのだろう?彼女が彼をプロデュースできるわけではないのに。懐かしさで胸がキュンとなる。カ_イピリーニャをもう一口飲んだ。彼女は恋しくなった。新しい才能の発掘することにだ。大胆なサウンドを作り出す、粗削りで創造的なカオス。ファーストアルバムに興奮した。今は状況が異なる。彼女の時間は、肥大するトリックスターのエゴを処理することと、一般的な無限の生産サイクルに従うことに費やされる。


これは成功の代償なのか?身のすくむような音楽を作ることが?言うまでもなく、熱狂的な精神病のファンに脅されている間に、ボディガードや外出禁止についての議論を処理することが?


彼女の人生は、彼女が幼い少女の頃に想像していたものとは全然違う。その当時、彼女にとって音楽だけが唯一の取り柄だった。彼女は、明るいライトで照らされたステージを想像しながら寝室で曲を作った。そのステージとは、安全で、大きな声を出せて、自由になれる場所だった。彼女にとってポップミュージックとは、堂々と自分を解放するための重要な手段なのだ。しかし、今は成功したおかげで、豪華だが自由のない生活を送っている。


カイピリーニャを飲み干す。バーテンダーが一目見ると彼女はうなづく。どんどん持ってきて。彼女はマイティー・ワンの幹部をオンラインミーティングに呼び出し、報告した。リオで3曲の制作を終えた後、トリックスターの担当から外れることを。訓練生の売り出しをプロデュースしていくつもりだ。


マイティー・ワンの幹部が彼女の話をさえぎる。彼らにはもっと緊急性の高い案件がある。ネットで悪い噂が流れている。精神不安定で妄想的なファンがトリックスターのコンサートで人を殺したと言っている。拳を握ると、マニキュアが塗られた長い爪がユンジンの手のひらに食い込む。これでもう手が震えない。


彼女はイメージを守るために、このマスコミの問題を処理するだろう。しかしリオの後で、トリックスターの担当は降りる。マイティー・ワンが望もうと望むまいと関係ない。  

嘘の反復 記憶446

後に目撃されたのは、今年の初めにニューヨークで行われたトリックスターのコンサート後のVIPのパーティーだった。ユンジンはその夜のことを覚えている。コンサートのせいではない。原因は、それ以来心の中で繰り返し思い出す些細なことだ。コンサートのアフターパーティーにトリックスターが現れたとき、前腕に引っかき傷があって、そこから出血していた。今回の噂は、彼女が以前沈黙した。疑惑を再燃させた。


数年前、彼女はトリックスターと予定よりも数日早くマイアミに到着した。トリックスターがリハーサルをしている間に、ユンジンはネットワーキングイベントに参加した。到着してから3日後、とあるフォークシンガーが演奏したバーの近くのダウンタウンで死んでいるのが発見された。顔を隠して黒い服を着た男が、被害者を路地に誘導している防犯カメラの映像が公開された。暗くてぼやけた映像からは、容疑者のことはほとんど分からなかった。しかし、エンジンはあることに気付いて嫌な予感がした。容疑者の首に金色の縁のヘッドホンがかかっていたが、それぞれの耳に2つの大きな「XS」が付いていたのだ。それは最新モデルの「Xerxes」1050xヘッドホンで、オーディオ愛好家にもほとんど知られておらず、さらに買える余裕のある人も少ないような代物だ。トリックスターは、他の高額モデルよりそのブランドを好んだので、彼女にはすぐ分かった。マイアミに向かう飛行機の中では同じものを着けていたが、その後のツアーでは、より低品質のモデルに変えていたので、彼女はさらに疑問を感じた。



ただその当時、彼女は良い状態ではなかった。NOSPINの死から、まだあまり時間は経っていなかった。急性的な不眠症で意識がもうろうとし、ツアーの時差ボケで彼女の状態は悪化するだけだった。最終的には警察に任せることにして、彼女は音楽制作の仕事に集中することにした。しかし、誰かが死んだ。その人が生きているのを最後に見たのはトリックスターかもしれないのだ。ヘッドホン、引っかき傷、夜遅くの外出などは、小さなことだが、疑問は積み重なっていた。


いくつの偶然が重なれば分かるのだろう?


ドアがノックされた音に彼女は飛び上がる。セキュリティの責任者がやって来た。ユンジンは自分の直感に従う。彼と向かい合う。彼が真実を話さなければ、警備員を全員解雇すると迫る。それが効いたようだ。トリックスターが昨夜、ホテルの敷地から出ていったことを知る。ボディーガードは後を追ったが、途中で見失ってしまった。


ユンジンは拳をテーブルに打ち付ける。


なぜホテルを離れたの?一体どこに?それに...目的は?


トリックスターと何年も仕事をしてきたが、彼のことはほとんど知らない。信じられないような利益を生み出す一方で、かなりの犠牲が伴っている。トリックスターが殺人に関係しているなら、彼女も同罪だ。証拠がなくても、それがただの噂であったとしても、彼女の生活とキャリアがかかっている。彼女は二度と音楽を作ることができなくなる。そして最悪なのは・・・それが彼女の責任だということだ。この業界では人を信用しないほうがよいことを、彼女自身がよく知っている。


彼女は手遅れになる前に、答えを見つける必要があった。トリックスターが夜に何をしていようと、彼女が彼を見つけ出さなければならない。確信を得られるまで、彼女の疑念は消えないだろう。

嘘の反復 記憶447

トリックスターのリハーサル中に、ユンジンは警備員を置き去りにした。彼女がやろうとしていることは、厳密には合法ではない。


彼女はドアマンにVIPバッジを見せて、トリックスターの控室に入る。トリックスターが何をしようとしているのか、何か手がかりを見つけることができるかもしれない。華やかな衣装に囲まれて、彼女は手がかりを探す。レシート、メモ、写真などだ。彼女はジムバッグを見つけた。


中には水筒、数枚のTシャツ、それに彼の財布が入っている。財布の中には紙幣も気になるものも何も入っていない...ホテルのルームキーを除いて。おそらく探す場所を間違ってしまったようだ。扉の横で大きな声でしゃべっている人が彼女を「注意する。トリックスターの助手が入ってくるのと同時に、ホテルのキーカードをひったくり、バッグを閉める。


ユンジンは胸のドキドキを抑え、無表情のまま外に出る。助手が何を見たとしても、少なくとも関係者にはあえてそのことは言わないだろう。


ユンジンはキーカードを手に、トリックスターのホテルの部屋に着くと立ち止まる。これをやってしまうと、もう後戻りはできない。だが、トリックスターが何かを隠しているのなら、誰よりも早くそれを知る必要がある。彼女の人生を台無しにしてしまう前に。そこに疑いの余地はない。ユンジンは扉を開ける。




トリックスターの部屋は整理整頓されている。ほとんどここにはいないようだ。彼女は彼の荷物を調べる。奇抜な服が山積みになっている。全身黒のパーカーとスウェットパンツ。黒のフェイスマスク。ツアーで彼が着ているのは見たことがない。


扉を叩く音がする。


ルームサービスだ。ユンジンはフェイスマスクを落とす。また後で来て。


ベッドサイドテーブルに置いてある上位機種の珍しいサンプラーを除いて、おかしなものは見当たらなかった。興味をそそられ、再生ボタンを押す。連続した激しい悲鳴が部屋中に響き渡る。叫び声は...本物だ。ホラー映画から取ったサンプルだろうか?


それでも、彼女が最初に抱いた不安な考えを完全に振り払うことはできなかった。もしそれが本物だとしたら・・・?


次に見つけたものは、彼女をさらに不安にさせた。ナイフ研ぎの道具だ。砥石と、掃除道具などが一式揃っている。


レコーディングスタジオで聞こえてきた以前の会話が、彼女の心の中で再生され、る。若いアーティストのルーカスがトリックスターに自己紹介したとき、彼が手、に持っている派手なナイフについて尋ねる。トリックスターは、常に刃物を持ち、歩いていると答える。


ユンジンは砥石を手に取る。ステージの小道具を研ぐのはなぜ?確かにトリックスターは、子供の頃に本物のナイフを使ってスタントをしていたが、今はもうその必要がない。このようなナイフへのこだわりは、ショーのためだけではない。それに、ナイフを使わないのに、研ぐ意味はあるのだろうか?彼女は身震いしている。


扉からまた音がする。ユンジンは低石を置いた。


また後で来てって言ったじゃ...


トリックスターが部屋に入ってきて、彼女は不意を突かれる。彼と目が合った。
彼は数年前に契約したときの不器用な若者のままだ。彼に足を引っ張られてたまるものか。


彼の激怒と彼女の怒りが交錯する。ユンジンはサンプラーを手に取る。


あなたは夜に一体どこをほっつき歩いてるの?それに、このホラーの真似っこは、何よ。マスコミに知られたらどうするの?あなたのキャリアは終わってしまうわ。


トリックスターはため息をつき、NOSPINの死後に心が暗い方向に追い込まれてしまったと認める。彼らの死についてほとんど語らないが、彼女はその理由が分かる。あの日のことは、今でも彼女の夢に出てくる。時は経っても罪悪感は消えない。


ユンジンは、テーブルの上に彼の携帯電話を見つける。


トリックスター、ミニバーから何か飲みなさい。今日のリハーサルは中止よ。


彼女はサンプラーを預かり、コンサートまでホテルの敷地内にいるようにと念押しする。彼は納得してうなずく。


よし。彼女の策が成功するためには、彼女が信頼していると彼に思わせなければ、ならない。  

嘘の反復 記憶448

ユンジンはホテルの部屋から外を眺めている。外は容赦なく雨が降り続き、街の一部では鉄砲水が発生している。彼女はスタッフに電話する。嵐がどんなにひど、くても、ショーは続けなければならない。


しかし、彼女のみぞおちあたりの不安の高まりは天気のせいではない。トリックスターはどこか怪しい。どれだけ儲けをもたらすとしても、無視できない予感が、する。彼は誠実そうに見えるかもしれないが、長年の経験から彼女は誰も信用す。ることはない。


ユンジンは携帯電話を手に取り、トリックスターの社用電話のGPSトラッカーを有効にする。リオの巨大な地図の上に、彼の居場所が青い点で表示されている。

彼女の直感は正しい。彼はもうホテルの敷地内にはいない。


追跡が始まった。トリックスターに新しいトリックを教えてやろう。


ユンジンはトリックスターの居場所の近くでスピードを落とす。彼女が近付くと、灰色のセダンが突然走り去る。彼女は携帯電話を確認する。地図上では青い点がどんどん遠ざかっていく。トリックスターは発車した車に乗っているに違いない。


ユンジンはアクセルを踏み込み、スピードを上げる。何回か曲がった後で彼女は、セダンに追いつくが、セダンは右に急旋回する。ユンジンも続いて、ブレーキを踏みながらハンドルを引っ張る。彼女の車は曲がり角でドリフトしながら、狭くて汚らしい路地に向かって滑っていく。


セダンは加速して左に向きを変え、路地に入っていく。ユンジンはハンドル操作を繰り返し、左にドリフトしていくが、水たまりのできたアスファルトでタイヤがハイドロプレーニング現象を起こし、車が制御不能になる。


衝突音が雷のように書いた。ユンジンの頭がハンドルに押し付けられる。白い光がフラッシュする。それから、首から腰にかけて焼けるような痛みが彼女の体を、襲う。


ユンジンは咳き込み、痛みにあえぐ。少しの間は息をすることしかできなかった。息を吐くと痛みがわずかに和らぐ。ラジオからは大音量のロックが流れてい」る。とてもうるさい。彼女は前に手を伸ばし、ぼーっとしたままスイッチを切る。左の眉の上の部分がヒリヒリする。彼女は額をそっと触って、痛みに顔をしかめる。指には一滴の血が滴っている。


フロントガラスは助手席側にヒビが入っている。エンジンはゆっくりと動き、偵て重に身を乗り出す。


OK。すべて大丈夫。私は無事よ。


彼女は外を見る。車は助手席側から街灯に衝突した。もっとひどいことになっていたかもしれない。


馴染みのある音が、彼女の思考を遮った。携帯電話だ。ユンジンはゆっくりと前かがみになり、座席の下を探した。携帯電話を手に取ると、画面のロックを解除する。トリックスターの「助けて」というテキストメッセージだ。


なぜ彼は助けを求めるのだろう....彼女は何か見逃していたのだろうか?それとも...彼女が追いかけているのはトリックスターではないのかもしれない。


ユンジンの心臓が一瞬止まる。殺人予告。トリックスターの一番のファン。もしかしたら熱狂的なファンが、トリックスターが毎晩外に抜け出していることを知り、攻撃を決意したのかもしれない。突き詰めると、誘拐と殺人予告は密接に関連している。


彼女は悪態をつく。トリックスターを追いかけるために、彼女はボディガードを置き去りにしていた。トリックスターであるジウンに何があったとしても、また、彼女が盲目すぎてそれを止めることができなかったとしても・・・いや、違う。彼女の良心はすでに十分すぎるほどの罪悪感を感じている。


ユンジンはシートベルトを締め直す。彼女が車のキーを回すと、エンジンがガラガラと音を立てる。彼女は歯を食いしばって再度トライする。


火事にはならないはず…彼を見捨てられないわ。


彼女は再びキーを回す。また回す。3回目で、エンジンは前のように回り始める。彼女はダッシュボードに自分の携帯電話を置き、青い点を追う。

嘘の反復 記憶449

ユンジンはGPSを頼りに、廃墟となった倉庫に面した荒れ果てた駐車場にたどり着く。青い点は動いていない。


ここだ。ジウンはどこかにいるはず。でも一体どこに?


ユンジンが車から降りると、痛くて震える体に激しい雨が降り注ぐ。日光が暗い嵐の雲に覆われている。駐車場には壊れた車がたくさん停められている。ユンジンは携帯電話のライトを使って灰色のセダンを探す。雷が鳴り響く中、彼女の携帯電話は車の窓についた血まみれの手形を照らし出す。彼女はドアに近付き、中を覗き込む。突然、何かが動いた。彼女はドアを開ける。


ネズミが車から飛び出す。後部座席には、ジウンの携帯電話、ぼろきれ、ロープが残されていた...


ユンジンはチクチク痛む目を閉じる。手遅れだったかもしれない。
泣いている場合ではない。ジウンがまだ生きているなら、助けを必要としている。はずだ。


ユンジンは携帯電話を手に取り、警察に電話し、それから警備員に連絡する。この熱狂的なファンが何を企んでいても、それはもうすぐ終わる。  

嘘の反復 記憶450

ユンジンは雨の中をふらふらと歩きながら、手がかりとなる痕跡を探している。凍てつく風が濡れた体に吹き付ける。しかし、止まることはできない。ジウンの安全が確保されるまでは。


白い名刺が落ちた水たまりをネズミが走る。エンジンは血に染まった名刺を手に取る。「マグヌム・オプス、音楽プロデューサー」と書いてある。彼女の名刺だ。ジウンを誘拐した犯人が知っている人物かもしれないということに気付き、彼女は身震いする。


遠くでパトカーのサイレンが鳴っていたが、それが自分が呼んだものなのか、それとも嵐に巻き込まれた人に向けられたものなのかは分からない。エンジンはジウンの名前を大声で呼ぶ。サイレンと雷に絶望しながら叫ぶ。そのとき、駐車場の向こう側の廃墟となった倉庫のほうから悲鳴が聞こえる。


彼女は倉庫に駆け付け、広い扉のところにたどり着く。取っ手にはチェーンが巻かれ、南京錠で固定されている。その間に警察が現場に到着する。
倉庫から残酷な悲鳴が聞こえてくる。


彼女に待っている暇はなかった。NOSPINに起こったようなことは、二度と起こしてはならない。絶対にだ。


地面に落ちている鉄パイプを拾うと、南京錠に何度も叩きつける。


ジウン!ジウン!!


南京錠が壊れて扉が開く。