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【DbD】ブライトのアーカイブストーリー(背景物語)「学術書12」【人間性知能】

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ブライトのアーカイブストーリー(仮)人間性知能

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きまぐれ

 

本日は学術書12-矛盾で解放される「ブライト(タルボット・グライムズ)」のアーカイブストーリー(背景物語)をご紹介していきます。

こんにちわ。きまぐれ(@kimagure_DbD)です。
当ブログでは、DbD(デッドバイデイライト)に関する情報をお届けしています。初心者さん・中級者さん向けに分かりやすい解説を心掛けております。どうぞよろしくお願いいたします。(※総プレイ時間約3000時間程度の若輩者です)

 

 

ブライトの基本性能

移動速度 ・4.6m/s
脅威範囲 ・32m
特殊能力 ・壁や障害物に激突後、「能力ボタンを押すと死の突進が発動」する。
固有パーク ・ドラゴンの掌握
呪術:血の恩恵
不死

>>参照:ブライト詳細はこちらから

聞き流しはこちら


www.youtube.com

音声の方が聞きやすいって方は、こちらでお楽しみください!全編字幕&音声付き動画になります!

ブライトのアーカイブストーリー(背景)学術書12

記憶1721

木の椅子に座ったタルボットは、ぼんやりと目を開け、記憶がおぼろげな旅からゆっくりと戻ってきた。花と鮮やかな色が覚えている。青色、そして紫色。奇妙な過密のような液体を滴らせて、光輝いている。別の世界の奇妙な青と紫の花。タルボットは苦しそうにため息をつきながら、定かではなかった。自分は思考の速さで旅をして時間に抗い、未来の一瞬を体験したのか。

それともあれは、覚えていない過去の記憶を組み合わせ、想像で組み立てた精巧な幻想だったのだろうか?どちらにしろ、とてもリアルに感じられたので、その時はそれだけで十分だった。

タルボットは手に握った消しに目をやった。たった一輪の花に、自分を内なる世界、そして未知の世界を通って外なる世界にまで誘うことができる力があるなど驚きである。

グライズムさん、戻ってきたんですね!

タルボットは我に返ると、東インド会社の出資者であるジュニウスを見た。タルボットはこの男の全てを軽蔑している。黒のスーツとワックスをつけた口髭で自己表現する様子から、タルボットに向ける眼差し、そして自分と同業者のやりたいことを利益という観点から正当化しなければならなかったことを全てを軽蔑している。

ここで何をしているんです?

北アフリカの遠隔地でサンプルを採取するために、あなたの・・・なんて言えばいいでしょう・・・専門知識が必要なのです。

今は他の任務遂行中だ。他に送り込める科学者がいるだろう。

いますよ。

問題があるのか?

派遣した他のいくつかの遠征隊とともに姿を消してしまったのです。

タルボットは、黒い煙、アヘンの眠気を誘う香り、尿、汗、吐瀉物が充満する地下室の匂いを取り込むと、背を向けた。地下室には藁布団を敷いたベッドが2つ並び、その横にはアヘンを温めるためのナッツオイルランプが置かれた小さなテーブルがある。アヘンはその後、ライフル銃ほどもある長さのパイプに入れられる。

男たちは目をつぶった状態でうめき、ニヤニヤしている。一人の男はタルボットを見つめ、パイプを唇に当てながらゆっくりと大きく笑った。アヘンの粒をするたびに、地獄のような焼けつく音がする。

ジュニウスは咳払いをした。グライムズさん、分かってください。東インド会社にとってこれほど重要な任務はないんですよ。

「重要」という言葉から利益になるということだとタルボットは理解した。

記憶1722

ジュニウスの話は正確ではなかった。遠征から実際に戻ってきた科学者がいるのである。学生時代の友人であり、ライバルでもあったトマスだ。ブリード(ジュニウスはこう呼んでいる)への旅から戻ってきたトマスは、何を見たのか、何を体験したのかを一言も話さなかった。

実際、戻って以来、一言も話していないという。そして、旧友と会えばトマスもきっと刺激されるだろうと話しながら、ジュニウスはロンドンの薄い汚れた道を歩き、タルボットをトマスの家まで案内した。数分後、二人は質素な住居の入り口に近づき、ジュニウスが強く扉をノックした。

医師が扉を開け二人を出迎えると、トマスの意識は粉々に崩壊していて彼からは何も聞き出せないことを説明した。それから医師は2人を小さなジメジメした部屋に案内した。そこでは、パロボットのかつての同級生がベッドの端に座り、神経質に体を揺すっている。近くのテーブルに置かれた蝋燭が、暗闇の中でトマスを照らしている。タルボットは雪ゆっくりとした足取りで、トマスに近づくとやつれた顔と自分を見つめる。

うつろな目を見てゾッとしたタルボットは、隣にある椅子に座った。

旧友よ...

君がかなり困難な任務から戻ってきたと聞いたのは、ほんの数日前のことだった。

トマスは答えないが、その目には突然涙が溢れている。

大丈夫だ!何があったのか、私に話してくれ。

トマスは話そうとしたが、支離滅裂なことをつぶやくだけにとどまった。しばらくして、一筋の涙がトマスの青白い頬を伝い、トマスは震える指を何とかキャビネットに向けた。

タルボットは立ち上がり、ジュニウスを通り過ぎると、革の鞄を手にした。袋を開けて日記を出すと、トマスに見せたら。トマスは頷きながら必死に言葉を発ししようとするが、突然目を見開き、言葉の代わりに地獄のような叫び声を放った!叫びは息をするたびにどんどん大きくなっていく。

慌てふためいた医師が駆けつけて、二人を部屋から追い出した。タルボットは最後にもう一度、友人を見つめて、何がこのようなストイックで素晴らしい精神を壊してしまったのだろうかと考えた。

記憶1723

タルボットは馬車の中でノートを呼んでいる。正気を失った科学者の支離滅裂で不穏な考えしか書かれていない。ノートに書かれた内容を信じるとしたら、トマスは暗い民話から出てきた亡霊によって、人々が獲物のように常にかられる世界で永遠に生きてきたことになる。

トマスが姿を消していたのはたった一週間なのに、日記には何百日分もの記入がある。何千、かもしれない。全く意味をなしていない。ジュニウスも分からないようだ。タルボットはこの経理係を誤解していたことに気づいた。ジュニウスは思ったよりも情に厚く、トマスに心から同情しているようだった。

利益にしか目がないにもかかわらず、以外に人間味がある。

タルボットはジュニウスが実は二人の人間であり、東インド会社が彼をおかしくしているのかもしれないと考えた。東インド会社の社員としてのジュニウスは、まるで違う人間だ。あたかも東インド会社が、ジュニウスが他の誰かになれるような何かを与えているかのようである。

完全な他人になれるような何か…

おそらく保護か…

あるいは匿名性か…

その両方かもしれない。

タルボットは、自分と自分の研究についても同じことが言えるのかもしれないと思った。しかし、東インド会社に保護され、匿名性を与えられても、他者への思いやりを持ち続けることができるとなぜか確信している。

それでも…タルボットは友人のノートを身をもってではなく、好奇心を持って読み進めた。彼は自分のこの客観的に物事を捉える気質について思う。

自分は人間味に欠けているのか…
それともより人間らしい人間なのだろうか…

動物なら怒り、憤り、嘆きに任せて安濃することができる。人間が動物といにするのは、知性であり、より大きな利益のために感情を抑える能力である。

それでいて…

タルボットは人間が機械と言いにするのは感情だと考えずにはいられない。いや、感情ではない。共感である。他の人が感じていることを、その人が経験しているであろうこと…苦しんでいるであろうことを想像するだけで、それを感じることができる能力である。それが、知性の単純なメカニズムを超えた能力だ。

相手の立場に立って考えられるということは、なんと素晴らしい力なのだろう。これが理由で、詩や物語が存在し得るのである。共感がなければ、人間は何か別のもの…より小さなもの…より昆虫に近いものとして再定義されなければならないだろう。

それでいて…

共感変数が心の客観性を達成するための大きな障害となっているようだ。真実を探求するための障害に。しかし、人間性を失ってしまうのなら、心の客観性に何の意味があるのだろう?

 

 

記憶1724

灼熱のアフリカの白い太陽の下、川の上流にあるこの小さな船で兵士の護衛とともにどれほどの時間を過ごしたのか、タルボットは分からない。東インド会社の兵士だ。東インド会社は巨大企業であるため、世界でも有数の傭兵部隊を有している。素晴らしいものだ。国王や国の評判を落とすことを恐れず、結果を気にせずに、好きな時に好きなことをするーーー

タルボットはそんな姿に内心感心している。船尾でくつろぐ兵士たちをじっと見つめた。匿名で人間を狩り、殺し、拷問する場所を見つけた、若く無慈悲な男達である。料理人のオズワルドは、様々な植民地で鎮圧した反乱の話や、他の地で発見した素晴らしい料理の話をする。

カルダーは反体制派を何人も捕まえている有名な追跡者で、悪党から切り取った耳のコレクションを見せてくれた。ダリンは、沈黙が流れると婚約者の話をし始める。彼女は美しく、陽気で、良家の子女だという。彼は彼女への愛情を、他の誰よりも自分自身に言い聞かせるために口に出しているのだと、タルボットは感じた。ダリンは、彼女への愛と兵士という仕事への情熱との間で悩んでいて、両方は手に入れられないと理解しているようだ。彼女はあまりに多くの質問をして、考えたくないことを考えさせ、良心を思い出させるのだろう。

タルボットにはその気持ちが十二分に分かる。彼もかつては人を愛したからだ。エナである。しかしエナへの愛は十分でなかった。少なくとも実験を辞めようと思うには十分でなかったのだ。エナは彼の仕事に、彼の研究所に嫉妬していた。そこで長い時間を費やすことも、そして実験に傾けたエネルギや思いにも。

エナが実験室をめちゃくちゃに壊して火をつけた時、彼女がどれほど自分を愛しているのかをタルボットはすぐに理解した。破壊された自分の実験室を見て、自分が彼女に与えている苦痛や苦悩をすぐに感じたのである。そして、タルボットはそれ以上そのような感情を、あるいは罪悪感を感じたくなかった。

記憶1725

炎天下の中、ラクダに乗ったタルボットは、額から滴る汗をぬぐいながら体やその他の兵士の後について、砂に覆われたテントの並ぶ広大なキャンプにやってきた。砂漠用の衣服を着た男が近づいてきて、ファーリーと名乗ると、彼らはラクダを止める。タルボットはラクダから降り、挨拶を交わす。その後タルボットはファーリーの後を追い、ひそひそ声で話す隊員たちに囲まれた無数の炊事場を通り過ぎてキャンプの中を歩き、一番大きなテントに入った。

ファーリーがタルボットに向き直る。これは、なんと言えばいいか…通常ではないんですよ。これからあなたに話すことは、他の誰にも話してはいけません。

タルボットが小さくうなずく。

ファーリーがテントの奥の方へ行き、フラップを持ち上げると、遠くに巨大な黒い霧の塊が見える。内側から紫や青の不思議な光が放たれている。

あれは何なのだ?

ファーリーは霧の塊をじっと見つめた。私たちはブリードと呼んでいます。

考えられる説は他の次元…
なんて説明すれば良いのでしょう…
他の次元が私たちの次元に溢れ出しているというか…

この現象は以前にも確認されており、記録もされているのですが、こんなに長い間あるのは初めてです。しかし探索には十分でないでしょう。あなたにあの中に入って、草木を見つけたら記録を取り、サンプルを採取していただきたいのです。

タルボットは霧の境界を鋭い目で見つめた。これが他の次元だとどう結論付ければいいのかわからないのです。だから、グライズムさん。あなたにここまでご足労をいただいたんです。

もっと経験のある科学者を選ぶことができたはずだ。少なくともーーー

すでに送り込みました。戻ってこなかったのです。もちろん彼らの安否を気遣っています。ですが、あなたがこの異常な現象の中に入ってサンプルを持ち帰ることができたなら、彼らの犠牲は無駄ではなかったということになります。

タルボットは眉間にしわを寄せる。

ファーリーため息をつき、フラップを占めると、タルボットに向かいます。あなたが提案している…何でしたっけ?実験の質の改善ですか?それも検討いたします。つまりお望みの被験者を提供できるということです。

王の怒りに触れるぞ。

グライズムさん、私たちが答えるべきは王ではありません。

記憶1726

私たちが答えるべきは王はありません。

タルボットは、その言葉の意味するところを何度も考えながら、ノート、道具、小瓶を入れた革のカバンを準備した。鞄を閉じると考えた。王でないならば、東インド会社は誰のためあるのだろう?ジュニウスはかつて、東インド会社はまるで人間のようであり、人間同様の敬意が払われる存在だと言っていた。

しかし、東インド会社が人間だとは思えなかった。他の何かに見える。他の異質のなにか…おそらく獣のようなものだろう…人間を装っている獣だ。破壊と略奪のために世界に解き放たれ、たくさんの命を奪い、拳ほどの金を持って主人のもとに帰ってくる闇の存在。

タルボットには、この暗闇の一部であることを長い間嫌っている自分がいた。しかし時間が経つと共に、罪悪感も乗り越えて、その獣が何の咎めもなしに世界でできること、そして主人の為に達成できることの純粋な力と技能に敬服する方法を見つけるようになった。

獣が問題の種になる時が来たら、主人は獣の命をそっけなく絶ち、獣と獣が引き起こした苦痛、死、恐怖の全てを忘れ去られた墓に葬ることができるのである。しかし、金はそうではない。略奪品は違う。主人が全てを維持し続けられるのだ。金と略奪品は懐に入れ、そのうちそれを使って新しい獣、もしくは複数の獣に生命を吹き込むことができる。

東インド会社は人間ではないかもしれないが、何らかの声明であることに違わない。そして金がその生命力なのだ。その血なのである。

タルボットは、突然鼓舞されたような気分になった。金がエネルギーなのだ!いや、金ではない。通貨だ。通貨がエネルギーなのだ。いやエネルギーではない。人々に命令を下し、支配する変数だ。組織を操作するための…そうだ…この考えは考察する価値がある。追求する価値がある。東インド会社とその主人の為になるなにかだ!

タルボットは、人間をエネルギーや方程式に還元して理解する方法はないだろうか自問した。

すると、ノートを取り出すし「組織エネルギー方程式」という概念を書留める。方程式を書くと、それをかき消し、また他の方程式を書く。方程式を検討し、ため息を吐くと、再びかき消す。人間を実際に化学式に還元し、出力と可能性を決定することができるのだろうかと、彼は長い間考える。

それは奇妙なアイデアだった。おそらく、惨いアイディアでさえある。それでも、このアイディアには「足」があった。獣のような足が。封じ込み、支配できるエネルギーのようなものとして人間を扱うことは確かにもっともな話である。一つの変数、人間らしさの変数以外は。

つまり共感である。

エネルギーの流れを制御、操作、予測するための変数としての通過の強力さは、人間が生活の中で通貨に置く価値に正比例する。しかし…人間の変数を削除する、または減少させる方法があるに違いない。何とかして通貨を集合的な神、または少なくとも半神に変えるのだ。組織が恐れ、祈る対象であり、常に思いめぐらす存在に。全てを支配する唯一神。組織エネルギーを刺激し、ショックを与え、指示を行う唯一の変数。

タルボットはノート見つめて、声に出して笑った。なんという馬鹿らしいアイデアだ!足などない!タルボットや他の誰もが、人間の変数を排除する実験を行えるような世界は、現在にも未来にもありえないのだ。そんなことは、東インド会社でさえも許されないだろ。

だが、もし……もしあるとしたら…

…いかなる王や帝国よりも、組織を支配するのにはるかに強力で効果的だろう。

その方程式が化学の皮をかぶった、想像力豊かな走り書きにしすぎないことに気づいたタルボットは、方程式をかき消した。際限なしに組織で実験を行う自由が、東インド会社に与えられたとしても、この実態のない人間の変数を方程式から排除するのは言うまでもなく、減少させることでさえどのようにできるのか、想像もつかない。いかなる文化や共同体も、多様な信念や価値観も、そのような神は半神の存在を決して許さないだろう。

自分の理論の不条理さに首を左右に振ると、タルボットはノートを閉じ、鞄に入れて、旅に出かける準備をした。

記憶1727

タルボットは背後から聞こえる息をのむ声や、ため息を無視して霧の壁に向かって従者を先導した。中に入る前に立ち止まった。オズワルドが引き返したほうがいいという。戻るのであれば、インドで習ったとても美味しい料理を作ってくれるらしい。カルダーは自分たちが払われている金額を考えれば、引き返すことは不可能だと言った。ダリンがカルダーに賛同する。

タルボットはコメントをメモすると、指でほぼ液体のような霧をつついた。すると、霧は巻きひげを伸ばしタルボットをつつき返した。信じられないタルボットは再度霧を突いて、同じ反応があるかどうか見た。

しかし、霧は続き返さなかった。

最初の反応は自分たちの体熱によるものかもしれない。意識を持つかすみや霧が存在するなど馬鹿げた考えである。タルボットが長い間、霧を見つめると、ブリードの中から自分の名前を呼ぶエナの声が聞こえた。ため息をつき、声を無視したタルボットは心を落ち着けて、集中して考えられるようにとアヘンチンキを服用したことを一瞬後悔する。そして、皆が息をのみ、霧についての不安を囁く中、タルボットは目をつぶり、未知に向かって小さい一歩踏み出した。

 

 

記憶1728

タルボットが目を開くと、見たことがあるような火山岩石層に絡まっている、青と紫に輝く奇妙なつったんだ目に入った。見たこともないほど大きなカラスが、暗い空を旋回して鳴いている。二人の東インド会社の兵士がタルボットの隣に歩み寄り、信じられないと言わんばかりに目を見開いている。

タルボットはカルダーとオズワルドの方を向いた。二人の後ろの霧の道を注視し、ダリンが入ってくるの待った。君たちの仲間は?

カルダーとオズワルドはダーリンが見当たらないことに気づき、霧を手で払いながらダリンの名前を呼ぶ。カルダーは霧の中に詰め寄るが、タルボットはその肩に手をおいて静止する。ここは持っている場所とは違うところなのか?

体が当たる元から離れるどういう。意味だ?

放っておけばいいんじゃないのか?

タルボットは自分達とキャンプを分離している霧に近づいた。思うに、引き返してキャンプに戻ったのだろう。

カルダーとオズワルドはタルボットと視線を交わした。すると、カルダーは一歩踏み出し、青と緑の暗闇へと二人を先導した。

やがて、青く光る花蜜のような物質が水脈を流れるツタだらけの壁に差し掛かり、行く手を阻まれた。タルボットは手を伸ばし、小さな花から慎重に花びらを引っ張ると、小瓶に入れた。

カルダーが高いシュッという音とともにマチェット引き抜くと、ツタは突然震えたように見えた。

タルボットは何か不穏な感覚を覚え、振り下ろそうとしていたカルダーの腕をつかんだ。

やめたほうがいい…

馬鹿げている…

カルダーは腕を振りほどくと、ツタを滅多切りにして、紫の物質を全身に受けながら、道を切り開いた。

切り刻まれた蔦は一瞬で縮み、燃えさしのように朽ち、小さな霧となった。まるでカルダーの殺気に気付いたかのように、他のツタがその姿を引っ込めるのをタルボットは口をぽかんと開けて見ていた。脅威から逃げているようだ。

カルダータルボットを肘で突き、しっかりするようにと身振りで示した。しかし、カルダーが一歩進むと、足元の火山岩が突然パックリと開き、黒い霧が吹き出し太い蔦がするすると伸びてきて、カルダーのブーツに触れた。

タルボットが止める暇もなく、カルダーはツタを蛇であるかのように踏みつけた。体が笑って首を振ると同時に、突然ツタが生き返り、カルダーの足首にまとわりつき、ありえない力でその足をちぎり取った。カルダーは苦悶の叫びをあげ、熱い動脈の血しぶきが冷たい闇に飛び散った。

タルトはごくりと唾を飲み込み、オズワルドはパニック状態でカルダーを助けようとしている。タルボットは叫び続ける男を通り過ぎて、好奇心と懐疑の混ざった眼差しで、引き下がりつつあるツタを見つめる。

このもう一つの世界は、意識を持っているのかもしれない。人間を分析し試す。生命力を持つ世界。どのような目的があるのか、僕には分からない。だがーーー

叫び声が突然、タルボットの思考を中断した。カルダーの方を向き、怒鳴りたい衝動を抑えた。おそらくひどい苦痛に苛まれている彼に、人の思考を妨げる意図はなかったはだ。タルボットは素早く心配の表情をつくり、震えるカルダーの身体の横に膝をついた。人は足なしで、どれくらい生きられるのだろう?

オズワルドはキャンプに連れ帰ってくれと泣きわめいている。しかし、今までどの科学者によっても観察や研究がなされたことのない驚異を観察して研究できるこの唯一の機会を、タルボットは失うつもりはなかった。だが、オズワルドと口論する時間を無駄にしたくない。オズワルドはきっと理解してくれないだろう。タルボットは、カルダーをキャンプまで運ぶには、まず傷の手当てをする必要があると告げた。

オズワルドが同意すると、タルボットは自分が調合した、どんな会社が製造したものよりも強力な調合薬であるアヘンチンキのビンゴ取り出した。瓶をカルダーの口につけると、この薬が痛みを和らげてくれると伝えたから、その中身を震える口に流し込んだ。

まもなくしてカルダーの震えは止まり、目をむくと、息を引き取った。タルボットは小さな笑みをこぼしたが、突然首の付け根にピストルの銃身を感じた。

カルダーになにをした?

タルボットは目を閉じて、死を待った…

記憶1729

オズワルドはタルボットを人殺しと呼びわめいている。オズワルドの指が引き金を引こうとした時、大きな霧の雲が急突進してきて拳のようにオズワルドを掴み、叫び足をばたつかせるオズワルドを闇へと下がっていった。

タルボットは震える足で立ちつくし、訝しげに様子を伺った。まるでこの世界が彼を守っているかのようある。まるで…何らかの理由のためにタルボットを生かしているようだ。タルボットは突然カルダーとオズワルドに対して罪悪感を覚えた。それが消え失せると、輝くツタや花に照らされた、尖った岩石でできた螺旋状の道を進んでいった。かなり進んだはずのところで、またあの声が聞こえる。

ありえない。エナの声。タルボット足を止め、後ろを振り向きまた振り向き、必死に探した。今度はアヘンチンキの効果でないことは確かだった。この場所だ。タルボットを守っていたのではない。まるで猫がネズミにそうするようにからかっていたんだ…タルボットは目を閉じると、耳を塞ぎ、紫の螺旋状の道を進み続けた…

記憶1730

天蓋のように上で咲き誇る花々から、青く輝く水滴が滴り落ちる。花びらが舞い、その動きを目で追ったタルボットは、それを空中でつかんだ。丸い形と滑らかな手触りを観察して、小瓶に入れる。そして他の小瓶を取り出し、この異世界の液体の雫を集め始める。ケシのように心の扉を開けることができるのだろうか?突然、首を絞められ喘ぐ声が、ほぼ完全な静けさを被った。小さなねじれた木々や茂みの中を探すと、大きなように背中をつけて、浅く早い呼吸をしているオズワルドがすぐに見つかった。手で腹の傷を覆っている。オズワルドはタルボットを見上げた。

早く…頼む…あいつが戻ってくる…

タルボットは助けるか、そのまま進むか迷った。

あいつって?誰が戻ってくるんだ?誰にやられたんだ?

タルボットは震えながら息を吸い、かばんを開けるとオズワルドの傷口を縫うための糸を探し、オズワルドの隣に膝をついた。

野獣人間が…俺たちを狩っているんだ。何も聞かないんだ…無敵だよ…銃で撃ってもナイフで切っても刺しても、俺の後を追ってくる…

体力を温存しておけ。

他の奴らは見つけた。生きている…あいつは…人間で何かを作っているんだ。

タルボットは糸を手に取ると、深い切り傷を縫い始める。鞄に目を向けると、ツタや花から採取した青く輝く液体が目に入った。これに何の効果があるかはわからない。そして、分かるまでは、まだ時間がかかるだろう。

タルボットはオズワルド見つめた。いや、無理だ。やめたほうがいい。しかし、今は緊急事態だ。それが未実験の液体にかけてみることを意味したとしても、オズワルドを助けるためにできる限りの事をしなければいけない。

選択肢などというものは、ないに等しい。

タルボットはためらった後、小瓶を手にしてじっと見つめた。自分に嘘をついていることは分かっている。他にオズワルドを助ける方法があることも分かっている。だが、東インド会社がタルボットの人体実験の提案をまだ公式に承認していないことも分かっている。人体実験には長い時間がかかるだろう。非常に長い時間だ。そして彼には長い時間など残っていない。このようなチャンスに巡り合えるのは、これを逃せば何年先になるかわからない。

一滴だけ与えれば…たった一滴だけ…そうすれば、花蜜のような分泌物にどのような薬成分があるか、もしくはないのかが分かるのだ。

分泌物は異世界からの贈り物である。東インド会社がタルボットの提案の真価を議論している間に、研究所の戸棚で小瓶が埃をかぶっているのを何年も見つめるような事態だけは、どうしても避けたい。実際、率先して実践したことで感謝されるはずだ。

タルボットはゆっくりと、傷口に小瓶を近づけた。小瓶の口を少し傾けて、小さな一滴をネトネトした傷口には落とした。オズワルドの血が分泌物を吸収するのを待ち、じっくりと観察した。

最初は何も分からないように見えた。すると、突然オズワルドの顔が恐怖で歪み、体がねじれた。火のような青い光がオズワルドの中を駆け巡り、青や紫の水泡で体が覆われ始めた。

タルボットは驚きの目で見ている。こんなものは見たことがない。なんと素晴らしい。たった一滴が数分で、オズワルドの全器官をショック状態に陥れるなんて。変異とエネルギーの放出だけでも不可能に見えた。それなのに…自分の目の前で起きていたのだ。

水疱が一つ一つ沸騰して紫の膿とともに破裂するたびに、オズワルドが悲鳴を上げる。

この恐ろしい光景を目の当たりにして、自分が料理人にしてしまった行いを自覚すると、タルボットの驚きは恐怖に変わった。タルボットの頭は、このかわいそうな男を助ける方法を必死に探すが、なすすべがない。悲鳴の中、肉体から離脱したエナの声が自分の後ろで反響していた。

タルボット!あなた一体何をしたの?何をしたのよ!?

タルボットは後ずさりすると踵を返し、渦巻く相反する感情が自分を駆け巡る中、このありえない世界の狂気の中を突き進んでいった。

何をしてしまったのだ?私は一体何をしてしまったんだ!?

タルボットは太いツタの中をよろよろと歩き、光り輝く花の咲いた岩や死体をよじ登った。地面に転げ落ちたタルボットは、大儀のためであると自分に言い聞かせた。料理人はどちらにしろ死ぬ運命だった。自分は重要なことをしている。自分は思考の速さで人間を他の世界に運ぶほど強力な化学物質や化合物を探しているのだと。

世界の間を旅する唯一の方法は、思考の速さである。そして、その中に見知らぬ未知の世界への扉がある…その鍵を探そうとする努力は、一料理人の命を上回るのだ。

石によじ登ったタルボットは、黒い霧の塊に囲まれていた。それをじっと見つめていると、何か蒸気の皮膜のように波立つ小さな細胞を見つめている自分に気付き、パニックを起こしていた心は驚きとともに静まる。するちとーーー

霧はゆっくりと消え去り、太く黒い葉で覆われた木が現れた。

タルボット書を見つめていると、木の幹がもじもじ動いているのに気づく。その木は人間出てきた。彼は消息不明になっていた従業員を見つけた事に気づき、驚く。タルボットは目を見開き、開いた口が塞がらないまま、ゆっくりと死の木に近づいて行く。美しいと同時に、恐ろしい。これは…


崇高だ。

その言葉しか思い浮かばない。

タルボットがゴツゴツした木に近づくと同時に、黒い葉が突然飛び立つ。大きなカラスだ。空を見上げると、カラスは闇の中へと消え去っていった。すると、石を踏む音が聞こえ、タルボットが視線を移すと目の前に野獣人間が立っていた。その生き物は、まるでタルボットのことを知っているかのように、大きな口を開けて、青く光るめでタルボットを見ていた。タルボットの疑念の目を覗き込むとためらいを見せ、葛藤しているようだ。突然---

生き物が何か恐ろしいことを金切り声で叫ぶと、その手から蔦が伸びて、タルボットの体に巻きつき胸を締め付けた。タルボットは息ができず、意識を失っていく。

はっと息を飲んで目を開けると、タルボットは炎天下の砂漠に一人でいることに気づいた。どれだけの間、気を失っていたのかはわからない。自分の体を木から離そうとしたのは覚えている。誰かが自分に助けを求めていたのも覚えている。全てが目の前で蒸発する中で、サンプルを採集したのも覚えている。そして思い出す。焼け付くような白い太陽の下、歩き、崩れ落ち、突然他の世界やアヘン窟で目を覚ますのだろうかと思ったことを。

ラクダに乗った男達の蜃気楼が自分の方へと近づいてくくるが、タルボットは座った姿勢を保つのが難しかった。しっかりと握った自分の拳に気づき、ゆっくりと開けて見ると、中には青と紫の花が握られていた。

 

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