

・ナイトについて知りたい!
・固有パークは?
・背景物語も教えて!
とDBDのキラー、ナイトについて詳しく知りたい方向けの記事となっています。
「ナイト」の基本性能と特殊能力
| 移動速度 | 4.6m/s | 脅威範囲 | 32m |
| 背の高さ | 平均 | 難易度 | 普通 |
特殊能力『グラルディア・コンパニーア』
「執行人」「暗殺者」「看守」の3体の衛兵を操り、追い詰める能力。
特殊アビリティ:衛兵巡回

①能力ボタンを押すと「衛兵巡回モード」が発動します。
②発動後、移動して巡回経路を作ります。
③モードが終了すると自動で衛兵が出現し、今作った巡回経路を探索していくれます。
衛兵の特殊アビリティ:狩り

・衛兵が巡回中に生存者を発見すると、記章旗を地面に刺しその生存者を一定時間追跡してくれます。衛兵によって生存者がダウンした場合、ナイトはキラーの本能の通知を受けることができます。衛兵は生存者に攻撃を当てると即座に消滅。
・衛兵はパレットや乗り越え可能な場所を通過することができます。また発電機やパレットに向かって命令すると、それを破壊してくれたります!※「イラプション」「海の呼び声」など発電機を蹴って発動するパークは発動しないので注意が必要。
3種類の衛兵
衛兵には3つの種類があり、毎回同じ順番で、異なる衛兵が召喚される。
| 名前 | 特徴 |
| 執行人 | ・パレットや発電機などの破壊速度が速い ・狩りの効果時間が長い |
| 暗殺者 | ・生存者を狩る最中の移動速度が高く ・攻撃を命中させると「深手」効果も付与する |
| 看守 | ・回時間が長く、探知能力が高い |
・衛兵を使うタイミングは「フック周辺に衛兵キャンプ」「修理中の生存者へのけん制」「チェイス中のミリ出し」「索敵」かなと思います。特にチェイス中に出す時は、長く巡回経路を作らず、その場で出すぐらいの距離が良いかなと思います。衛兵威嚇で距離を詰め自分で仕留める立ち回りが良さそう!
・注意点として、衛兵の発電機破壊では「イラプション」や「海の呼び声」などの効果は発動しません!パークの効果を活かしたい時は自分で破壊しましょう!
ナイト「固有パーク」
| パーク名 | 解放レベル | 優先度 |
| 隠れ場なし | 30 | ★★★★★ |
| 呪術:闇との対面 | 35 |
★★★★☆ |
| ヒュブリス | 40 | ★★★☆☆ |
※優先後は筆者の主観になります。
隠れ場なし

| 発動条件 | ・発電機を破壊する |
| 効果詳細 | ・発電機を破壊すると、3/4/5秒間、自分の位置から24メートル以内に立っている生存者全員のオーラが視える |
| 効果詳細 | 「隠れ場なし」効果解説 |
呪術:闇との対面

| 発動条件 | ・何らかの方法で生存者を負傷させる |
| 効果詳細 | ・何らかの方法で生存者を負傷させると無力なトーテムが点灯し、このパークが発動する。 ・発動中は、自分の脅威範囲外にいる他の生存者全員が25秒間隔で叫び声をあげ、それぞれのオーラが2秒間視える。 ・呪縛状態の生存者が瀕死状態、または回復した場合、呪いのトーテムの火が消え、このパークは解除される。 |
| 効果詳細 | 「呪術:闇との対面」効果解説 |
ヒュブリス

| 発動条件 | ・生存者が自分を怯ませる |
| 効果詳細 | ・生存者が自分を怯ませると、その生存者が10/15/20秒間、無防備のステータス効果に苦しむ。このパークには20秒間のクールダウンがある。 |
| 効果詳細 | 「ヒュブリス」効果解説 |
ナイトの能力と相性の良いパーク

| パーク名 | ・死人のスイッチ |
| 効果詳細 | ・生存者をフックに吊るすと次の(20/25/30)秒間、死人のスイッチが発動する。 ・発動中、生存者が発電機の修理を完了する前に中断すると、発電機は死人のスイッチの効果が終わるまでエンティティによってブロックされる。 |
| おすすめポイント | ・発電機付近に衛兵を召喚させることにより、確実に発動させることが可能になる。 |
ナイト“おすすめアドオン”
| アドオン名 | 効果解説 |
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・看守を召喚した後、ナイトの移動速度が6秒間10%上昇する。 |
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・衛兵を召喚する際、暗殺者が2回連続で現れる。 |
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・全衛兵の巡回時間が6秒増加する。 |
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・巡回中の衛兵の探知範囲が6メートル拡大する。 |
ナイト“対策”
・衛兵の狩りが発動中、生存者はフックから別の生存者を救助するか、記章旗を掴むか、狩りの時間が終わるまで逃げる必要があります。
・ナイトが衛兵を出す動きをしたら、出来るだけ距離を離す。
ナイトの背景物語

タルホーシュ・コバッチには子供時代の記憶はあまりない。
しかし皮肉にも彼は、その数少ない記憶を一生追い続けることになった。
子供のころ、村で耳にした人々が泣き叫ぶ声。
母親に無理やり飲まされた薬のような黒くてドロドロとした液体。
気を失って硬い床の上に倒れたこと。
そして、共同墓地で大勢の死体の下に埋まった状態で目が覚めたこと。
そのときに聞こえた村が燃える音。
血まみれの死体を押しのけ、よじ登り、ようやく死体の山から抜け出したとき、死と破壊と沈黙に包まれた世界が待っていたこと。
途方もなく冷え切った沈黙…
そして得体の知れない物体の存在に気づいたとき、突然甲高い音が耳に響き、肌がチクチク痛み出した。何が起きているのかは分からなかったが、彼にはそれが痛みでも悲しみでも恐怖でもなかった。
それは何か別の感情。
それは…
畏敬に似たものだった。
自分の周りで何が起きているのか理解しようとしていたタルホーシュは、男たちが後ろから近づいてくることに気づかなかった。
そして抵抗する暇もなく馬車に乗せられ、他の奴隷たちと同じように小さな木の檻に入れられた。
彼はただ、その光景に心を奪われ目を見張るだけだった。
自分を揺らす馬車がイタリアに向かっていると告げられても、タルホーシュはただ木の割れ目から流れていく景色を見つめ、その胸は得体のしれない興奮に高鳴った。
その日からタルホーシュはグラルディア・コンパニーアの一員となり、カディール・ハカムのもとで修業を積んだ。
そこで彼は武器の扱い方や鎧の鍛造法、騎士道の掟など、自分の主人に忠実に仕える術を学んだ。
月日は流れたが、敵対心に溢れ競争心の強い傭兵たちの中に友人と呼べる者はタルホーシュにはできなかった。
しかし、優れた技能と腕力、知恵を持ち、怖いもの知らずの彼についていけば、戦場で勝利を味方につけ、いつの日か自由を手に入れられると信じる者が現れた。
彼を支持した傭兵のうち、3人がタルホーシュに永久の忠誠を誓った。
それが「忠実な3人」として知られるようになる、彼の取り巻きだ。
アレハンドロ・サンティアゴはグラルディア・コンパニーアの鎧職人として修業を積んだ男だった。
デュルコス・マレセクは敵に忍び寄り、音を立てずに止めを刺すことを得意とした。
サンダー・ラウトは体も力もタルホーシュに勝るとも劣らない大男で、巨大な戦斧を愛用した。
グラルディア・コンパニーアが遥遠の地へ部隊を送るたびにタルホーシュは勝利を重ねた。月日が経ち、彼の手によって幾多の敵が葬られた。
しかし、どんなに敵を殺しても、その惨状はタルホーシュが子供のころ村で経験したものに匹敵するものではなかった。
その後、戦いでの勇気が認められたタルホーシュは爵位を授かり、自由の身となった。ハンガリー出身の奴隷は解放され、彼の残虐な行為は報われたのだ。
しかし、彼の心は満たされないままだった。彼の心は、掴みどころのない、説明しがたい何かを欲していたのだ。
自分よりも下等な者に従うことに嫌気がさしていたタルホーシュはグラルディア・コンパニーアを抜けて、独立した。しかし、軍団のリーダーは彼の「取り巻き」を解放することに同意しなかった。
取り巻きの解放に必要な金貨を手に入れるため、タルホーシュは裕福なイタリアの領主のために働くことにした。
雇い主はポルトスクーロ公のビットリオ・トスカーノ。彼は世界中を旅する学者で、謎に包まれた神秘家たちの秘密結社が隠したという、古代の知識を集めていた。
タルホーシュは、ビットリオの探検隊に参加することになった。探検隊は古代の学校にあった柱の一部を探していた。ビットリオは、その石が善悪を超越した完璧な世界を開く鍵だと信じ、その石を「楽園の石」と呼んでいた。
探検隊はフランスのローマ時代の遺跡を調査してから、ピレネー山脈を越えてスペインに入った後、ポルトガルの都市シントラにある地下墓地へとたどり着いた。
聖なる場所として拝められてた地下墓地に入って石を手に入れるためには、タルホーシュはその入り口を守る村人たちを殺さなければならなかった。
人を殺めたくないビットリオはタルホーシュに別の方法を見つけるよう命じた。しかし、騎士道の名を借りて人々が殺された惨劇を体験していたタルホーシュは、見せかけの名誉だとビットリオの命令に背いた。
タルホーシュはビットリオが野営地に戻るのを待ってから、大きな鬨の声をあげながら地下墓地へと突進した。そして、行く手を阻む者を一人残らず切り倒し、謎の石を手に入れた。
ポルトスクーロに戻ったタルホーシュはビットリオを地下牢に閉じ込め、石に刻まれたシンボルの意味を教えるよう要求した。
ビットリオがその要求を拒むと、タルホーシュはビットリオの家族や友人を拷問し、見せしめにその死体を村の通りに並べた。
しかし、何をされてもビットリオが石の秘密を明かすことはなかった。
怒りに狂ったタルホーシュは、ビットリオの富を使って小さな軍隊を編成した。
タルホーシュは数か月のうちにグラルディア・コンパニーアのもとへ軍を進め、その兵舎を破壊し、彼の取り巻きたちを解放した。
そして、虫けらのように敵を切り倒し、彼らの「正義」でがんじがらめになった頭を並べて、自分の「勇気」を証明した。
そのうちに、隣国の領主たちがタルホーシュは悪の化身だと信じるようになり、ポルトスクーロを悪から救うため「道徳的」で「高潔」な軍隊を編成した。
しかし、タルホーシュにとって領主たちなど脅威ではなかった。
彼にとって領主たちは法と規律と決まり事で自らの欲と野心を覆い隠した臆病者に過ぎなかった。
そして、法と規律と決まり事は、「闇」から逃れるための手段…タルホーシュが無条件で受け入れた闇から逃れる手段にすぎなかった。
領主たちが軍隊を進める中、タルホーシュは正当な罰としてビットリオに死を与えるため地下牢へと向かった。ビットリオに情けを見せる気など微塵もなかった。
小さな牢獄に入り、松明に照らされた通路の奥へと足を進めた。そのとき、ビットリオを殺せば彼の秘密も永遠に葬られてしまうという思いが一瞬頭をよぎった。しかし同時にその秘密が誰かの手に渡ることもなくなるだろう…タルホーシュにとってはそれで十分だった。
そして地下牢の鍵を開け、扉を蹴り開けた。二歩足を進めると空っぽの牢屋に立っていた。周りをいくら見回しても、そこにいるのは自分と大量のネズミだけだった。
しばし呆然とした後、タルホーシュは肺の底から怒りの咆哮をあげた。するとそのとき、戦いの音が突如、町に響き渡った。彼はすぐさま地下牢から抜け出し、曲がりくねった階段を駆け上がり、月明かりに照らされた扉から飛び出した。
そして、血と内臓が飛び交う血の海を突進し、次から次へと敵を切り倒した。「道徳的」で「高潔」な領主たちは、炎のついた岩や木の幹を町中に降らせ、家々を破裂し、村人を虫けらのように押しつぶし、地面を震わせ、干し草や木材の山に火をつけて、町を巨大な火の海に飲み込ませた。
大虐殺と混沌の中で「取り巻き」の三人がタルホーシュと合流し、四人で一丸となって死の竜巻を引き起こした。
その姿に、彼らの勇気が幸運をもたらしたと言う者もいれば、別世界の何かが彼らを守っていたと言う者もいた。
それが何であれ、彼らは虫を踏み潰すように、いとも簡単に何十人もの戦士を倒した。虐殺を続ける彼らの傍らで、倒された死体から奇妙な霧が立ち上がり、鎧をガタガタと揺らし始めた。タルホーシュが気づいたときには、その霧で目の前が見えなくなっていた。
遠い昔、母に飲まされた液体のような色をした深い霧。
タルホーシュはその霧の中をよろめきながら手探りで足を進め、方向の感覚が取れないまま仲間を探した。
ほとんど混じりけのない暗闇の中で、どれだけ時間が経っただろう…突然霧が晴れて、瓦礫が燻り、腐敗した死体が散乱した村が姿を現した。その幻想的な荒れ地の向こうには、崩れかけた巨大な塔が見えた。タルホーシュは感嘆して、その光景を見つめた。聞き覚えのある甲高い音が耳に響き、肌がチクチク痛み出した。
彼の心がずっと探していたものが、ようやく見つかったのだ。タルホーシュは幸せに満ちて立ちすくんだ。ビットリオも、あの石も必要ではなかった。
彼自身で自分の楽園を見つけたのだ。彼は見つけたのだ—
美と恐怖を。
そして—
卓越した世界を。
~おしまい~
ナイトのアーカイブストーリー【学術書14】
「全ては闇」記憶151

彼の村が燃えている。馬に乗った戦士たちが剣を振り回し、斧が頭蓋骨を叩き割る。人の首が飛び、次々に死体の山ができていく。彼の父親も村人に混ざって戦っている。
彼の母親は小さな木のテーブルの上で何かをこしらえている。叫び声がどんどん近づいている。彼は母親の顔を見つめた。その顔には不安も、混乱も、恐怖も見えない。
母親は何かを決心したような真面目な表情で、ドロッとした黒色の液体を用意している。これを飲めば、外で起こっている「騒動」を忘れて、よく眠れるそうだ。
彼女は家族を支え、彼の心を支えていた。彼は母親のこれほど真剣な様子を見たことがなかった。小さな藁葺き屋根の家の外では人々が次々と殺され、村は無法状態になっていた。それでも彼は母親のおかげで身の危険を感じなかった。
母親は自分が煎じた薬を小さなコップに入れ、彼の兄弟と姉に渡した。そしてタルホーシュに向かい、彼を安心させるようにうなずいた。そして、すべてはなるようになると言いながら、彼がそれを飲み干すのを手伝った。
ドロドロとした苦い液体が彼の喉を通っていく。その耳には叫び声やわめき声、金属のぶつかり合う音が響いていた。
彼は唇から足へと感覚がなくなっていくのを感じた。視界はぼやけ、騒音は小さくなっていった。彼は母親の温かい腕の中で眠りに落ちた。目の前は真っ暗になり、やがて沈黙だけが彼を包み込んだ。
目を覚ますと、彼はズタズタに切り裂かれた死体の山に埋もれていた。
命を失った目や切り裂かれた喉が彼の目に入る。そして奇妙な音に包み込まれた。馬がいななく声。子供たちが泣く声。
騎士たちが笑い、騒ぐ声。幼きタルホーシュは、自分に寄りかかっている青ざめた顔を見つめた。彼は目を細めて、その顔を観察した。
するとその顔の表情がくっきりと浮かびそれが自分の叔父であることが分かった。その目は恐怖に大きく見開き、その口からは死の悲鳴が聞こえてくるようだった。
タルホーシュは叔父の死が怖くて、悲しいことだと分かっていた。でも彼は怖くも、悲しくもなかった。タルホーシュは家族の死を悲しまないことが悪いことだとも分かっていた。
しかし、彼は罪悪感を感じなかった。タルホーシュは自分が何を感じているのか、言葉にできなかった。
彼はただ、たじろぐことなく自分の周りの惨状を見つめた。すると突然、彼は誰かの手に掴まれ、穴から引き出された。見知らぬ一行に連れ去られる中、彼は燃え上がる村を見つめた。その耳には甲高い音が鳴り響いた。
「全ては闇」記憶152
タルホーシュは鎧を纏い、馬に乗ってポルトガルへと山道を進んだ。
雇い主の領主によると「楽園の石」と呼ばれる遺物がシントラという街の地下墓地に眠っているらしい。
トスカーノ公の目当ては金儲けではなく、希望を手に入れることだそうだ。彼はこの石を使って別の世界へ行き、この世界を救う知識を見つけるつもりだ。
彼は古代の番人たちの失われた知識によって、暴力や残虐行為に満ちた無秩序状態の世界に平和や調和、秩序を取り戻したいと思っている。
タルホーシュは暴力のない世界など愚かな考えだとあざ笑った。生まれてから死ぬまで人生に暴力はつきものだ。暴力を避けようとすることは、生きることの恐怖から逃れようとする臆病者のすることにすぎない。
この世に唯一存在する「害」は、貴族や領主たちが自分たちの利益のために作り出した嘘や自然に反する法や規律だ。人間が作り出す法や規律や書物は、この世の真理を隠し、歪めようとする。
タルホーシュの価値観は全く違っていた。何が「善」であるのか。何が「悪」であるのか。それは無意味な詮索にすぎない。すべてはこの世界の一部として、ただ存在する。善悪の区別は曖昧で、謎に包まれている。タルホーシュにこの謎を理解したふりをするつもりはない。
その代わり、彼はその謎を受け入れ、彼の剣を振り回してきた。そして、法律を盾に人々の命を奪う者たちを軽蔑した。タルホーシュにとって彼らはすべて偽善者だった。
タルホーシュは違う。彼には罪悪感や恥を感じる必要も、人生の真理から逃れる必要もない。
そして今、トスカーノは街を前にして探検隊の足を止めた。地下墓地の入り口を護衛たちが守っているからだ。トスカーノは深くため息をつき、首を横に振った。彼は罪のない者を犠牲にするつもりはない。彼は馬の向きを変え、タルホーシュに別の方法を見つけるよう命令した。
「全ては闇」記憶153
別の方法を探せだと!?嫌悪感がタルホーシュの体を突き抜けた。自分の胸に剣が突き刺さり、肺に穴を開けられたような気がした。
その命令に彼は言葉を失い、反抗のまなざしを雇い主に向けた。
別の方法を見つけるだと?
なんのために?
トスカーノが夜、眠られるようにか?それとも、善と悪、正義と不義、文明と野蛮の区別といった、くだらない議論に奴が時間を無駄にするためにか?
そもそもトスカーノの財産は全て、暴力と虐殺によって築かれたものだ。自分たちが作った秩序や法によって正当化された暴力によって・・・
やつの財産は暴力の賜物にすぎない。
タルホーシュは歯を食いしばった。トスカーノに対する嫌悪感が憎しみへと変わっていった。そしてタルホーシュに別の考えが浮かんだ。
トスカーノには祖先が残した品を手にする資格はない。
遺物?
古代の石?
暴力のない世界へと導くもの?
そんなものを信じるとは、なんて愚かなやつだ!
楽園など存在しない!
存在したとしても、タルホーシュはそれに関わりたいとも思わなかった。
彼はため息をつき、拳を握り締めた。ウジ虫のようにトスカーノを潰してやりたいと思った。これまでに仕えたどの領主よりも、トスカーノを憎んだ。古代の番人や彼らが持つという高度な知恵の話は、
もうたくさんだ。トスカーノは従者を引き連れ、馬に乗って走り去ろうとしている。そのときタルホーシュは思った・・・
すべてを手に入れてやる!すべてを手に入れる・・・
そう、タルホーシュは自分にできることをするまでだ。彼はトスカーノの石も遺物も街も全て自分のものにしてやろうと思った。そして、あの臆病者に見せつけてやるんだ。
いつも自分の胸に存在した、この世の真理を・・・誰にも邪魔はさせない。街の護衛たちにも、トスカーノが残した3人の騎士たちにも。タルホーシュはさっと馬から降り、剣を抜き取った。
「全ては闇」記憶154
太陽が沈みかける中、タルホーシュは3人の騎士たちと戦った。騎士たちは一丸となって襲い掛かってくる。タルホーシュは血だらけの剣で騎士を一人ずつ倒していった
。その中の一人は負けることを拒み、右腕を腱一本でぶら下げながら立ち上がった。そして血まみれの剣を左手で握り、反撃してきた。タルホーシュはその攻撃をかわし、剣を突き出した。剣は騎士の鎖帷子を貫き、彼の胸に刺さった。騎士は息を荒げて膝をつき、死を恐れる言葉を口にしてから、地面に倒れ込んだ。
タルホーシュは街の方に目を移した。そこでは護衛たちが目を光らせている。彼らが暗闇から様子をうかがう中、タルホーシュはシントラの古代地下墓地へと歩み寄った。
「全ては闇」記憶155
護衛たちが古びた扉の前に立っている。粗末な剣を身につけた体格のいい若者たちだ。
彼らはどんな愚か者がやって来たのかと、たいまつの火をタルホーシュのほうに向けた。彼らの目にさっと恐怖が宿るのをタルホーシュは見逃さなかった。
身長2メートルのタルホーシュは、自分の恐ろしさを知っている。
彼は道を開けるよう護衛たちにうながした。
しかし、護衛たちは剣を抜いてそれに応じた。タルホーシュは自分の心臓から闇が噴き出し、血管に流れ込むのを感じた。
護衛たちはタルホーシュを囲い込み、ゆっくりと迫ってくる。
タルホーシュは剣を握り締めた。そして恐れることなく周囲を見渡した。護衛の一人が名誉やら聖なる場所やらと戯言を叫んだ。次の瞬間、護衛たちが怒りの叫び声をあげ、一斉に攻撃してきた。
タルホーシュが護衛たちに応戦する。まるで時がゆっくりと流れるように彼の剣は絶え間なく動き、夕日の下でヒラヒラと輝いた。剣は護衛の手や足を切断し、背中を打ち砕き、首を切り裂いていく。護衛たちは死者を守るため、叫び声をあげながら飛び掛かってくる。
一方、タルホーシュは痛みや苦しみや恐怖の中で「生きること」を肯定するため、より一層奮い立つ。最後に残った護衛が命乞いをしながら、逃れようとしている。
タルホーシュはその男を切り倒し、邪悪な笑みを浮かべながら木の扉へと向きを変えた。そして剣から血をぬぐい、たいまつを拾い上げて闇の中へと足を進めた。
「全ては闇」記憶156
タルホーシュは死に囲まれていた。死の匂いが彼の鼻を刺す。
それは何世紀も前に埋葬された遺体の匂いではなく、この墓地に住むネズミやゴキブリたちの死骸が腐っていく匂いだ。
たいまつに照らされた古代の壁には石や頭蓋骨や骨が奇妙な装飾品のように並べられている。タルホーシュは恐怖に怯える数えきれないほどの魂を感じた。
臆病者たちめ…
ある骸骨には壁から飛び出した槍が突き刺さっている。
墓荒らしから貴重な石を守るために古代人が用意した罠にかかったのだろう。他にも冒険家たちの亡骸がいたるところで目に入る。
槍が仕掛けられた穴に落ちた者。
岩に押しつぶされた者。
揺れ動く刃で真っ二つに引き裂かれた者。
タルホーシュは何かに導かれているような気がした。
それは暗くて冷たくて原始的な存在だ。彼が敷石の上に足を置くとカチッという音がした。すると次の瞬間鋭い刃の大鎌が恐ろしい弧を描きながら飛び出してきた。とっさに身をかがめた彼の頭上を刃が飛んでいく。彼の首はもう少しで切り落とされるところだった。
タルホーシュはたいまつを使って、行く手を阻むクモの巣を燃やした。歩き続ける彼の体にベタベタとした糸が絡まってくる。
気がつくと、毛の生えた巨大クモが彼の体に食いつこうと鎧の上を這い回っている。たいまつでクモを払い落とすと、クモたちは燃え上がった。
別の洞窟ではコウモリの大群に鉢合わせた。コウモリたちは彼から逃げようと金切り声を上げながら飛び回った。あらゆる方向からコウモリたちに体当たりされ、立っているのも難しい。
滴り落ちる汗が目に染みる。
彼はまばたきをしながら足を進めた。
突然、足元の地面が開き、タルホーシュは自分が落ちていくのを感じた。彼はとっさに、開いた地面の端に手を伸ばした。なんとかつかまったが重い鎧が穴の底へと彼を引っ張っている。
彼は力を振り絞って、何とか罠の上へと身を引き上げた。タルホーシュが前進を続けると、ようやく装飾が施された古代の墓室につながる細い通路に出た。彼は墓室を塞いでいる石板を押し動かした。
墓室の中には鎧を着た古代戦士の骸骨があった。鎧は変色しているが、錆びてはいない。戦士の胸当ての横には大きな石のお守りが置かれている。「楽園の石」だ。
「全ては闇」記憶157
タルホーシュは自分が通った道を引き返した。たいまつの火が次第に弱くなって消え、周囲は暗闇に包まれた。彼は手探りに足を進める。
来るときに見かけた罠が待っているはずだ。穴を避け、降りかかる刃を避けながら歩き続けた。人肉を貪ろうと無数のクモが鎧に張り付いてくる。
やがてほのかな明かりが前方に現れ、大きくなっていった。やっと外へと抜け出したタルホーシュは勢いを取り戻し、生き残った数人の護衛を片付けながら街を通り抜けた。
そして馬に飛び乗り、闇の中へと姿を消した。タルホーシュが野営地に戻ると、不敬を働いた彼を罰しようと戦士や騎士たちが待ち構えていた。戦士たちが大声をあげながら向かってくる。激しい攻撃を避けるタルホーシュにどっと疲れが襲い掛かる。今の彼では騎士たちに「力」では敵わないだろう。
しかしタルホーシュは、敵を倒すのは自分の「力」ではないことが分かっていた。それは彼の武術でもない。彼は闇を受け入れる「器」にすぎないのだ。
闇が彼の体となり、技となり、彼の体を使って敵の首や腕や足を切り落とすのだ。
何かに触発された、聖なる存在のように。トスカーノが騒ぎに気づき、暴力を止めるよう大声で命令した。
タルホーシュは墓で手に入れた石を空高くかかげた。トスカーノは石に描かれた謎のシンボルに思わず目を見張った。
これが欲しければ力ずくで手に入れるしかないぞ。
ひざまずくか、俺にかかってこい。
トスカーノは直ちに武器を置くよう従者たちに命じた。これ以上の流血をさけるためだ。戦士たちはひざまずき、頭を垂れた。そしてトスカーノはタルホーシュにより囚われの身となった。
「全ては闇」記憶158
タルホーシュは地下牢に入り、トスカーノを見下ろした。地面に座るトスカーノの周りには人間の頭部や手足が腐敗し、ウジが湧いている。
トスカーノはタルホーシュのほうを見上げ、液体の滴る籠に目を移した。タルホーシュはひざまずき、籠の蓋を開けた。
トスカーノにパンや飲み物でも恵むのかタルホーシュは食べ物の代わりに籠から人間の頭を取り出した。
そしてそれをゆっくり見てからトスカーノに彼の名前を聞いた。
カバリエリ。タルホーシュは、その見開いた目がトスカーノのほうを見るように、腐敗した頭の山にカバリエリの頭部を置いた。そして別の頭部を取り出した。
アルノ。こいつは臆病者だ。情けなく命乞いをしやがった。
タルホーシュは血まみれの頭部をまた2つ取り出して、彼らの恐怖に怯える目が領主のほうを見るように置いた。そして最後の頭部を取り出し、たいまつの灯りでその顔を照らした。
こいつは嫌いではない。命乞いはしなかった。これは取っておこう。
タルホーシュはその頭を籠に戻した。彼はしばらくトスカーノの顔を見てから立ち上がり、地下牢を後にした。
トスカーノにまた仲間の頭を残してやった。あいつらの目を見ていれば、秘密の本や遺物を隠した場所を白状する気になるだろう。別の世界から持ち出されたという本や遺物。その世界は完璧だと言われている。
タルホーシュにとって完璧な世界が存在するとしたら、それは文明の嘘や偽りのない世界だろう。
「全ては闇」記憶159
タルホーシュは地下牢の扉に近づいた。そして扉を開けずに隙間から地下牢の中を覗き込んだ。
トスカーノがウジに囲まれ、地面に横たわっている。大量のハエが飛び回り、室内がよく見えないほどだ。お前はウジにまみれて暮らしたいのか。こんな風になる前にウジを潰そうとは思わなかったのか。
トスカーノはなにも答えない。
そのまぶたがゆっくりと開いただけだ。貴族どもは俺に攻撃を仕掛けようとしている。その理由はなんだと思う?俺が奴らと同じことをしているからだ。
だが、俺は奴らみたいに嘘はつかない。奴らに言わせると・・・俺は狂っているらしいな。
タルホーシュはあざ笑った。お前には俺が狂っているように見えるか?生きることは狂気に満ちている。俺はそれをそのまま受け入れるだけだ。そういう意味では、俺は「狂気に満ちている」と言えるかもしれないがな。
タルホーシュは扉を開け、ゆっくりと地下牢に入った。そしてウジを踏み潰しながら、狭い室内を歩き回った。
ある男が貴族から食べ物を盗んだせいで村が破壊されたことがある。
たった数個のリンゴのために村は瓦礫の山となり、村人たちは切り裂かれた。たった一人の男の空腹とたった一人の男の「おごり」のために、多くが苦しみ、死んでいった。
この世界ではそんなことが繰り返されてきた。タルホーシュはトスカーノに目を向けた。彼は口を閉ざしたままだ。
俺は人殺しが気に入らないのではない。俺が耐えられないのは、正義を名目にした偽善行為が称賛されることだ。そんな話こそ狂っている。タルホーシュはハエの大群を押し切るようにトスカーノに近づいた。
そして床に刻み込まれたシンボルを見つめ、ひとりで笑った。
「全ては闇」記憶160
タルホーシュは地下牢に入ってトスカーノの横にしゃがみ込み、お湯の入った木の容器を渡した。そして囚人がその水を飲み干すのを眺めた。
地面に刻み込まれたシンボルの数が増えている。タルホーシュはそれを見て、笑みを浮かべた。
俺は最近街で何をしたと思う?
このシンボルの形に死体を並べたんだ。
それに他の奴らの首も置いてやったよ。
あと、小さな軍隊があちこちから迫ってきている。俺の悪行を止めようとする「高潔」な軍隊さ。だがね、俺の古い友人たちが、その戦いに力を貸してくれるんだ。
タルホーシュが息を吸い込むと、腐っていく死体の匂いがした。あいつらの本当の目当ては俺じゃない。噂によると・・・
貴族たちはお前が俺から隠しているものに興味があるらしい・・・
お前はいったい俺から何を隠しているんだ?
俺は貴族たちに石をくれてやろうとしたが、やつらはそれには興味を示さない。お前が隠している知識は、それほど特別なものなのか?
タルホーシュはシンボルが見えるように床のウジを払いのけた。やつらの狙いは、完璧な世界じゃないだろうな?タルホーシュはあざ笑った。
大量の知識を持っていても、お前には分からないようだ・・・この世界はそのままで完璧だということが。そのことが今ここで分からないのなら、お前がどこに行こうが、どんな知識を得ようが、常に満たされず、なにかを探し続けるだろう。
タルホーシュは物思いにふけりながら、トスカーノをじっと見た。人生を自分が思い描いた姿ではなく、ありのままの姿で受け入れたとき、楽園は訪れる。
人生の恐怖から逃げるのではなく、その恐怖を受け入れたとき、楽園は訪れる。そのとき、お前は自分の狂気に気づくだろう。知識を探求することがいかに無益なことかを。
ウジ虫の命さえ奪うことを拒むお前のこだわりがいかに愚かなことかを。タルホーシュが拳を叩きつけると、ウジ虫が白い塊となってのたうち回った。
彼はその白い塊を指で拾い上げ、じっと見てから切断された頭のぽっかりと開いた口の中に投げ入れた。彼はその頭をじっと見た。
彼の瞳に、ある記憶が蘇ってくる。ここから遠く離れたところに小さな村があった。小さな軍隊がこの村に近づいてくる。
野蛮人たちを成敗すれば、この世界を彼らの住みやすい場所にできるのだろう・・
村人たちは殺されること、囚われの身になることを拒み、自らの手で死ぬことを選んだ。
タルホーシュはまたウジ虫を拾い上げ、死体の口に投げ入れた。その村に家族全員に毒を飲ませた母親がいた。彼女にはためらいも良心の呵責もなかった。
俺はその後、あれほどの意志の強さと愛を見ることはなかった。
これまで数多くの貴族や騎士に出会ってきたが、どいつも嘘と偽善に身を固めた臆病者だった。タルホーシュは腐っていく死体の口の中に、ウジ虫を再び投げ入れた。そして立ち上がってハエが飛び回る室内を横切り、たいまつの火に照られた入り口で立ち止まった。
まだ彼女に匹敵する者には出会っていない。ガラガラと音を立てながら地下牢の扉が閉まる。暗闇が再びトスカーノの体を包み込んだ。
~おしまい~



