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【DbD】ナイトのアーカイブストーリー「全ては闇」【学術書14】

 

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きまぐれ

本記事では、ナイトのアーカイブストーリー「全ては闇」について記載します。

 

この記事を書いた人
こんにちわ。きまぐれです。当ブログでは、DbD(デッドバイデイライト)に関する情報を分かりやすく発信してます。ぜひ参考にしてください。

 

ナイトの基本性能

移動速度 ・4.6m/s
脅威範囲 ・32m
特殊能力 ・「執行人」「暗殺者」「看守」の3体の衛兵を操り、追い詰める能力。
固有パーク 隠れ場なし
呪術:闇との対面
ヒュブリス

>>参照:ナイト詳細はこちらから

ナイトのアーカイブストーリー


www.youtube.com

 

物語と一緒に解放されたナイトの“アーカイブムービー”になります。こちらも合わせてお楽しみ下さい。

「全ては闇」記憶151

彼の村が燃えている。馬に乗った戦士たちが剣を振り回し、斧が頭蓋骨を叩き割る。人の首が飛び、次々に死体の山ができていく。彼の父親も村人に混ざって戦っている。

彼の母親は小さな木のテーブルの上で何かをこしらえている。叫び声がどんどん近づいている。彼は母親の顔を見つめた。その顔には不安も、混乱も、恐怖も見えない。

母親は何かを決心したような真面目な表情で、ドロッとした黒色の液体を用意している。これを飲めば、外で起こっている「騒動」を忘れて、よく眠れるそうだ。

彼女は家族を支え、彼の心を支えていた。彼は母親のこれほど真剣な様子を見たことがなかった。小さな藁葺き屋根の家の外では人々が次々と殺され、村は無法状態になっていた。それでも彼は母親のおかげで身の危険を感じなかった。

母親は自分が煎じた薬を小さなコップに入れ、彼の兄弟と姉に渡した。そしてタルホーシュに向かい、彼を安心させるようにうなずいた。そして、すべてはなるようになると言いながら、彼がそれを飲み干すのを手伝った。

ドロドロとした苦い液体が彼の喉を通っていく。その耳には叫び声やわめき声、金属のぶつかり合う音が響いていた。

彼は唇から足へと感覚がなくなっていくのを感じた。視界はぼやけ、騒音は小さくなっていった。彼は母親の温かい腕の中で眠りに落ちた。目の前は真っ暗になり、やがて沈黙だけが彼を包み込んだ。

目を覚ますと、彼はズタズタに切り裂かれた死体の山に埋もれていた。

命を失った目や切り裂かれた喉が彼の目に入る。そして奇妙な音に包み込まれた。馬がいななく声。子供たちが泣く声。

騎士たちが笑い、騒ぐ声。幼きタルホーシュは、自分に寄りかかっている青ざめた顔を見つめた。彼は目を細めて、その顔を観察した。

するとその顔の表情がくっきりと浮かびそれが自分の叔父であることが分かった。その目は恐怖に大きく見開き、その口からは死の悲鳴が聞こえてくるようだった。

タルホーシュは叔父の死が怖くて、悲しいことだと分かっていた。でも彼は怖くも、悲しくもなかった。タルホーシュは家族の死を悲しまないことが悪いことだとも分かっていた。

しかし、彼は罪悪感を感じなかった。タルホーシュは自分が何を感じているのか、言葉にできなかった。

彼はただ、たじろぐことなく自分の周りの惨状を見つめた。すると突然、彼は誰かの手に掴まれ、穴から引き出された。見知らぬ一行に連れ去られる中、彼は燃え上がる村を見つめた。その耳には甲高い音が鳴り響いた。

「全ては闇」記憶152

タルホーシュは鎧を纏い、馬に乗ってポルトガルへと山道を進んだ。

雇い主の領主によると「楽園の石」と呼ばれる遺物がシントラという街の地下墓地に眠っているらしい。

トスカーノ公の目当ては金儲けではなく、希望を手に入れることだそうだ。彼はこの石を使って別の世界へ行き、この世界を救う知識を見つけるつもりだ。

彼は古代の番人たちの失われた知識によって、暴力や残虐行為に満ちた無秩序状態の世界に平和や調和、秩序を取り戻したいと思っている。

タルホーシュは暴力のない世界など愚かな考えだとあざ笑った。生まれてから死ぬまで人生に暴力はつきものだ。暴力を避けようとすることは、生きることの恐怖から逃れようとする臆病者のすることにすぎない。

この世に唯一存在する「害」は、貴族や領主たちが自分たちの利益のために作り出した嘘や自然に反する法や規律だ。人間が作り出す法や規律や書物は、この世の真理を隠し、歪めようとする。

タルホーシュの価値観は全く違っていた。何が「善」であるのか。何が「悪」であるのか。それは無意味な詮索にすぎない。すべてはこの世界の一部として、ただ存在する。善悪の区別は曖昧で、謎に包まれている。タルホーシュにこの謎を理解したふりをするつもりはない。

その代わり、彼はその謎を受け入れ、彼の剣を振り回してきた。そして、法律を盾に人々の命を奪う者たちを軽蔑した。タルホーシュにとって彼らはすべて偽善者だった。

タルホーシュは違う。彼には罪悪感や恥を感じる必要も、人生の真理から逃れる必要もない。

そして今、トスカーノは街を前にして探検隊の足を止めた。地下墓地の入り口を護衛たちが守っているからだ。トスカーノは深くため息をつき、首を横に振った。彼は罪のない者を犠牲にするつもりはない。彼は馬の向きを変え、タルホーシュに別の方法を見つけるよう命令した。

 

「全ては闇」記憶153

別の方法を探せだと!?嫌悪感がタルホーシュの体を突き抜けた。自分の胸に剣が突き刺さり、肺に穴を開けられたような気がした。

その命令に彼は言葉を失い、反抗のまなざしを雇い主に向けた。

別の方法を見つけるだと?
なんのために?

トスカーノが夜、眠られるようにか?それとも、善と悪、正義と不義、文明と野蛮の区別といった、くだらない議論に奴が時間を無駄にするためにか?

そもそもトスカーノの財産は全て、暴力と虐殺によって築かれたものだ。自分たちが作った秩序や法によって正当化された暴力によって・・・

やつの財産は暴力の賜物にすぎない。

タルホーシュは歯を食いしばった。トスカーノに対する嫌悪感が憎しみへと変わっていった。そしてタルホーシュに別の考えが浮かんだ。

トスカーノには祖先が残した品を手にする資格はない。

遺物?
古代の石?
暴力のない世界へと導くもの?

そんなものを信じるとは、なんて愚かなやつだ!
楽園など存在しない!

存在したとしても、タルホーシュはそれに関わりたいとも思わなかった。

彼はため息をつき、拳を握り締めた。ウジ虫のようにトスカーノを潰してやりたいと思った。これまでに仕えたどの領主よりも、トスカーノを憎んだ。古代の番人や彼らが持つという高度な知恵の話は、

もうたくさんだ。トスカーノは従者を引き連れ、馬に乗って走り去ろうとしている。そのときタルホーシュは思った・・・

すべてを手に入れてやる!すべてを手に入れる・・・

そう、タルホーシュは自分にできることをするまでだ。彼はトスカーノの石も遺物も街も全て自分のものにしてやろうと思った。そして、あの臆病者に見せつけてやるんだ。

いつも自分の胸に存在した、この世の真理を・・・誰にも邪魔はさせない。街の護衛たちにも、トスカーノが残した3人の騎士たちにも。タルホーシュはさっと馬から降り、剣を抜き取った。

「全ては闇」記憶154

太陽が沈みかける中、タルホーシュは3人の騎士たちと戦った。騎士たちは一丸となって襲い掛かってくる。タルホーシュは血だらけの剣で騎士を一人ずつ倒していった

。その中の一人は負けることを拒み、右腕を腱一本でぶら下げながら立ち上がった。そして血まみれの剣を左手で握り、反撃してきた。タルホーシュはその攻撃をかわし、剣を突き出した。剣は騎士の鎖帷子を貫き、彼の胸に刺さった。騎士は息を荒げて膝をつき、死を恐れる言葉を口にしてから、地面に倒れ込んだ。

タルホーシュは街の方に目を移した。そこでは護衛たちが目を光らせている。彼らが暗闇から様子をうかがう中、タルホーシュはシントラの古代地下墓地へと歩み寄った。

 

「全ては闇」記憶155

護衛たちが古びた扉の前に立っている。粗末な剣を身につけた体格のいい若者たちだ。

彼らはどんな愚か者がやって来たのかと、たいまつの火をタルホーシュのほうに向けた。彼らの目にさっと恐怖が宿るのをタルホーシュは見逃さなかった。

身長2メートルのタルホーシュは、自分の恐ろしさを知っている。

彼は道を開けるよう護衛たちにうながした。

しかし、護衛たちは剣を抜いてそれに応じた。タルホーシュは自分の心臓から闇が噴き出し、血管に流れ込むのを感じた。

護衛たちはタルホーシュを囲い込み、ゆっくりと迫ってくる。

タルホーシュは剣を握り締めた。そして恐れることなく周囲を見渡した。護衛の一人が名誉やら聖なる場所やらと戯言を叫んだ。次の瞬間、護衛たちが怒りの叫び声をあげ、一斉に攻撃してきた。

タルホーシュが護衛たちに応戦する。まるで時がゆっくりと流れるように彼の剣は絶え間なく動き、夕日の下でヒラヒラと輝いた。剣は護衛の手や足を切断し、背中を打ち砕き、首を切り裂いていく。護衛たちは死者を守るため、叫び声をあげながら飛び掛かってくる。

一方、タルホーシュは痛みや苦しみや恐怖の中で「生きること」を肯定するため、より一層奮い立つ。最後に残った護衛が命乞いをしながら、逃れようとしている。

タルホーシュはその男を切り倒し、邪悪な笑みを浮かべながら木の扉へと向きを変えた。そして剣から血をぬぐい、たいまつを拾い上げて闇の中へと足を進めた。

「全ては闇」記憶156

タルホーシュは死に囲まれていた。死の匂いが彼の鼻を刺す。

それは何世紀も前に埋葬された遺体の匂いではなく、この墓地に住むネズミやゴキブリたちの死骸が腐っていく匂いだ。

たいまつに照らされた古代の壁には石や頭蓋骨や骨が奇妙な装飾品のように並べられている。タルホーシュは恐怖に怯える数えきれないほどの魂を感じた。

臆病者たちめ…

ある骸骨には壁から飛び出した槍が突き刺さっている。

墓荒らしから貴重な石を守るために古代人が用意した罠にかかったのだろう。他にも冒険家たちの亡骸がいたるところで目に入る。

槍が仕掛けられた穴に落ちた者。
岩に押しつぶされた者。
揺れ動く刃で真っ二つに引き裂かれた者。

タルホーシュは何かに導かれているような気がした。

それは暗くて冷たくて原始的な存在だ。彼が敷石の上に足を置くとカチッという音がした。すると次の瞬間鋭い刃の大鎌が恐ろしい弧を描きながら飛び出してきた。とっさに身をかがめた彼の頭上を刃が飛んでいく。彼の首はもう少しで切り落とされるところだった。

タルホーシュはたいまつを使って、行く手を阻むクモの巣を燃やした。歩き続ける彼の体にベタベタとした糸が絡まってくる。

気がつくと、毛の生えた巨大クモが彼の体に食いつこうと鎧の上を這い回っている。たいまつでクモを払い落とすと、クモたちは燃え上がった。

別の洞窟ではコウモリの大群に鉢合わせた。コウモリたちは彼から逃げようと金切り声を上げながら飛び回った。あらゆる方向からコウモリたちに体当たりされ、立っているのも難しい。

滴り落ちる汗が目に染みる。

彼はまばたきをしながら足を進めた。

突然、足元の地面が開き、タルホーシュは自分が落ちていくのを感じた。彼はとっさに、開いた地面の端に手を伸ばした。なんとかつかまったが重い鎧が穴の底へと彼を引っ張っている。

彼は力を振り絞って、何とか罠の上へと身を引き上げた。タルホーシュが前進を続けると、ようやく装飾が施された古代の墓室につながる細い通路に出た。彼は墓室を塞いでいる石板を押し動かした。

墓室の中には鎧を着た古代戦士の骸骨があった。鎧は変色しているが、錆びてはいない。戦士の胸当ての横には大きな石のお守りが置かれている。「楽園の石」だ。

 

「全ては闇」記憶157

タルホーシュは自分が通った道を引き返した。たいまつの火が次第に弱くなって消え、周囲は暗闇に包まれた。彼は手探りに足を進める。

来るときに見かけた罠が待っているはずだ。穴を避け、降りかかる刃を避けながら歩き続けた。人肉を貪ろうと無数のクモが鎧に張り付いてくる。

やがてほのかな明かりが前方に現れ、大きくなっていった。やっと外へと抜け出したタルホーシュは勢いを取り戻し、生き残った数人の護衛を片付けながら街を通り抜けた。

そして馬に飛び乗り、闇の中へと姿を消した。タルホーシュが野営地に戻ると、不敬を働いた彼を罰しようと戦士や騎士たちが待ち構えていた。戦士たちが大声をあげながら向かってくる。激しい攻撃を避けるタルホーシュにどっと疲れが襲い掛かる。今の彼では騎士たちに「力」では敵わないだろう。

しかしタルホーシュは、敵を倒すのは自分の「力」ではないことが分かっていた。それは彼の武術でもない。彼は闇を受け入れる「器」にすぎないのだ。

闇が彼の体となり、技となり、彼の体を使って敵の首や腕や足を切り落とすのだ。

何かに触発された、聖なる存在のように。トスカーノが騒ぎに気づき、暴力を止めるよう大声で命令した。

タルホーシュは墓で手に入れた石を空高くかかげた。トスカーノは石に描かれた謎のシンボルに思わず目を見張った。

これが欲しければ力ずくで手に入れるしかないぞ。

ひざまずくか、俺にかかってこい。

トスカーノは直ちに武器を置くよう従者たちに命じた。これ以上の流血をさけるためだ。戦士たちはひざまずき、頭を垂れた。そしてトスカーノはタルホーシュにより囚われの身となった。

「全ては闇」記憶158

タルホーシュは地下牢に入り、トスカーノを見下ろした。地面に座るトスカーノの周りには人間の頭部や手足が腐敗し、ウジが湧いている。

トスカーノはタルホーシュのほうを見上げ、液体の滴る籠に目を移した。タルホーシュはひざまずき、籠の蓋を開けた。

トスカーノにパンや飲み物でも恵むのかタルホーシュは食べ物の代わりに籠から人間の頭を取り出した。

そしてそれをゆっくり見てからトスカーノに彼の名前を聞いた。

カバリエリ。タルホーシュは、その見開いた目がトスカーノのほうを見るように、腐敗した頭の山にカバリエリの頭部を置いた。そして別の頭部を取り出した。

アルノ。こいつは臆病者だ。情けなく命乞いをしやがった。

タルホーシュは血まみれの頭部をまた2つ取り出して、彼らの恐怖に怯える目が領主のほうを見るように置いた。そして最後の頭部を取り出し、たいまつの灯りでその顔を照らした。

こいつは嫌いではない。命乞いはしなかった。これは取っておこう。

タルホーシュはその頭を籠に戻した。彼はしばらくトスカーノの顔を見てから立ち上がり、地下牢を後にした。

トスカーノにまた仲間の頭を残してやった。あいつらの目を見ていれば、秘密の本や遺物を隠した場所を白状する気になるだろう。別の世界から持ち出されたという本や遺物。その世界は完璧だと言われている。

タルホーシュにとって完璧な世界が存在するとしたら、それは文明の嘘や偽りのない世界だろう。

 

「全ては闇」記憶159

タルホーシュは地下牢の扉に近づいた。そして扉を開けずに隙間から地下牢の中を覗き込んだ。

トスカーノがウジに囲まれ、地面に横たわっている。大量のハエが飛び回り、室内がよく見えないほどだ。お前はウジにまみれて暮らしたいのか。こんな風になる前にウジを潰そうとは思わなかったのか。

トスカーノはなにも答えない。

そのまぶたがゆっくりと開いただけだ。貴族どもは俺に攻撃を仕掛けようとしている。その理由はなんだと思う?俺が奴らと同じことをしているからだ。

だが、俺は奴らみたいに嘘はつかない。奴らに言わせると・・・俺は狂っているらしいな。

タルホーシュはあざ笑った。お前には俺が狂っているように見えるか?生きることは狂気に満ちている。俺はそれをそのまま受け入れるだけだ。そういう意味では、俺は「狂気に満ちている」と言えるかもしれないがな。

タルホーシュは扉を開け、ゆっくりと地下牢に入った。そしてウジを踏み潰しながら、狭い室内を歩き回った。

ある男が貴族から食べ物を盗んだせいで村が破壊されたことがある。

たった数個のリンゴのために村は瓦礫の山となり、村人たちは切り裂かれた。たった一人の男の空腹とたった一人の男の「おごり」のために、多くが苦しみ、死んでいった。

この世界ではそんなことが繰り返されてきた。タルホーシュはトスカーノに目を向けた。彼は口を閉ざしたままだ。

俺は人殺しが気に入らないのではない。俺が耐えられないのは、正義を名目にした偽善行為が称賛されることだ。そんな話こそ狂っている。タルホーシュはハエの大群を押し切るようにトスカーノに近づいた。

そして床に刻み込まれたシンボルを見つめ、ひとりで笑った。

「全ては闇」記憶160

タルホーシュは地下牢に入ってトスカーノの横にしゃがみ込み、お湯の入った木の容器を渡した。そして囚人がその水を飲み干すのを眺めた。

地面に刻み込まれたシンボルの数が増えている。タルホーシュはそれを見て、笑みを浮かべた。

俺は最近街で何をしたと思う?
このシンボルの形に死体を並べたんだ。
それに他の奴らの首も置いてやったよ。

あと、小さな軍隊があちこちから迫ってきている。俺の悪行を止めようとする「高潔」な軍隊さ。だがね、俺の古い友人たちが、その戦いに力を貸してくれるんだ。

タルホーシュが息を吸い込むと、腐っていく死体の匂いがした。あいつらの本当の目当ては俺じゃない。噂によると・・・

貴族たちはお前が俺から隠しているものに興味があるらしい・・・

お前はいったい俺から何を隠しているんだ?

俺は貴族たちに石をくれてやろうとしたが、やつらはそれには興味を示さない。お前が隠している知識は、それほど特別なものなのか?

タルホーシュはシンボルが見えるように床のウジを払いのけた。やつらの狙いは、完璧な世界じゃないだろうな?タルホーシュはあざ笑った。

大量の知識を持っていても、お前には分からないようだ・・・この世界はそのままで完璧だということが。そのことが今ここで分からないのなら、お前がどこに行こうが、どんな知識を得ようが、常に満たされず、なにかを探し続けるだろう。

タルホーシュは物思いにふけりながら、トスカーノをじっと見た。人生を自分が思い描いた姿ではなく、ありのままの姿で受け入れたとき、楽園は訪れる。

人生の恐怖から逃げるのではなく、その恐怖を受け入れたとき、楽園は訪れる。そのとき、お前は自分の狂気に気づくだろう。知識を探求することがいかに無益なことかを。

ウジ虫の命さえ奪うことを拒むお前のこだわりがいかに愚かなことかを。タルホーシュが拳を叩きつけると、ウジ虫が白い塊となってのたうち回った。

彼はその白い塊を指で拾い上げ、じっと見てから切断された頭のぽっかりと開いた口の中に投げ入れた。彼はその頭をじっと見た。

彼の瞳に、ある記憶が蘇ってくる。ここから遠く離れたところに小さな村があった。小さな軍隊がこの村に近づいてくる。

野蛮人たちを成敗すれば、この世界を彼らの住みやすい場所にできるのだろう・・

村人たちは殺されること、囚われの身になることを拒み、自らの手で死ぬことを選んだ。

タルホーシュはまたウジ虫を拾い上げ、死体の口に投げ入れた。その村に家族全員に毒を飲ませた母親がいた。彼女にはためらいも良心の呵責もなかった。

俺はその後、あれほどの意志の強さと愛を見ることはなかった。

これまで数多くの貴族や騎士に出会ってきたが、どいつも嘘と偽善に身を固めた臆病者だった。タルホーシュは腐っていく死体の口の中に、ウジ虫を再び投げ入れた。そして立ち上がってハエが飛び回る室内を横切り、たいまつの火に照られた入り口で立ち止まった。

まだ彼女に匹敵する者には出会っていない。ガラガラと音を立てながら地下牢の扉が閉まる。暗闇が再びトスカーノの体を包み込んだ。

~終わり~