きまぐれDbD

DbDの楽しさを発信中!

【DbD】アーティスト(カルミナ)特殊能力と固有パーク解説【Dead by Daylight】

 

f:id:Rainbow_Color:20200919001636j:plain

・アーティストについて知りたい!
・どんなパーク持ってるの?
・背景物語も教えて!

とDBDのキラー、アーティストについて疑問を抱えている方の悩みを解決できる記事となっています。

カラスを自在に操る、DBDオリジナルキラーです。

 

アーティスト「基本ステータス」

移動速度 4.6m/s 脅威範囲 32m
背の高さ 平均 難易度 普通

アーティスト特殊能力

固有能力「さいなむ害鳥」

段階 説明
1. チャージと発動 ・能力ボタン長押しでチャージ
・攻撃ボタンで不吉なカラスを呼び出す
・素早い再使用:能力ボタンを保持しながら攻撃ボタンを押す
2.カラスの飛翔 ・小範囲にダメージを与える
・飛翔コースはキラーに表示される
3.飛翔コース外の効果 ・ダメージを与えなくなる
・障害物を通過可能
・近くの生存者の位置を明らかにする
4.生存者周辺 ・カラスが生存者周辺に群れを形成
・群れのオーラをキラーに表示
5. 群れの撃退 ・生存者は撃退アクションまたはロッカーに隠れて撃退可能
・撃退時、オーラはキラーに表示されない
6. ダメージ条件 ・群れに囲まれている生存者が2羽目の不吉なカラスに攻撃されるとダメージを受ける

アーティスト「固有パーク」

パーク名 カテゴリー 実用度
不吉な包囲 発電機ブロック ★★★★★
悶絶フック:共鳴する苦痛 発電機遅延 ★★★★★
呪術:ペンティメント 発電機・治療遅延 ★★★★☆

不吉な包囲

発動条件 ・生存者を初めてフックに吊るすたびに1トークンを獲得
効果詳細 そのフックから16メートル離れた際、全ての発電機が12秒間ブロックされる。
・4トークンに達すると、フックから16メートル離れた際、エンティティが全ての発電機を40秒間ブロックする。
・オブセッションのオーラが6秒間表示される。
効果解説 「不吉な包囲網」詳細はこちら

悶絶フック:共鳴する苦痛

発動条件 ・生存者を初めて悶絶のフックに吊るす
効果詳細 ・生存者をフックに吊るすとトークンを1個失い、修理進行度の最も高い発電機が爆発して進行度が即座に25%失われ、さらに後退し始める。
効果解説 「悶絶フック:共鳴する苦痛」詳細はこちら

呪術:ペンティメント

発動条件 ・破壊されたトーテムが生まれる
効果詳細 復活のトーテム1つ:生存者の修理速度が30%低下
・復活のトーテム2つ:生存者の治療速度が30%低下
・復活のトーテム3つ:生存者がダウンした時の治療速度が30%低下
・復活のトーテム4つ:生存者の脱出ゲート開放速度が30%低下する
・復活のトーテム5つ:全てのトーテムがエンティティによってブロックされる。
効果解説 「呪術:ペンティメント」詳細はこちら
 

アーティスト立ち回りポイント

カラスの有効範囲はマップ全域

アーティストの特殊能力『さいなむ害鳥』は、設置地点からマップの端まで効果範囲が広がります。ただし、この能力は上下への移動はできませんので、高低差がある場所では注意が必要です。

からすがまとわりつくオーラが視える

f:id:Rainbow_Color:20211110042533j:plain


キラーは、生存者にカラスがまとわりついている時、その生存者のオーラを視認できます。これにより、障害物に隠れていても生存者の位置を把握できるため、優位に立ち回ることができます。

生存者はカラスにまとわりつかれたら、アビリティボタンを押して速やかに振り払うようにしましょう。

さいなむ害鳥はライトで消せる

f:id:Rainbow_Color:20211110044404j:plain


ハグの罠同様、飛び立つ前(待機中)の「さいなむ害鳥」もライトで消す事が出来ます。タイミング的には難しそうですが知識として持っていると役立つかもです。

「アーティスト」と相性の良いパーク

パーク名 おすすめポイント

f:id:Rainbow_Color:20211110044855p:plain
不協和音

不協和音で通知された場所に「さいなむ害鳥」を飛ばし、発電機の妨害を行う。


死人のスイッチ

生存者をフックに吊るした後、発電機を修理しているサバイバーに向けて「さいなむ害鳥」を飛ばすと「死人のスイッチ」が発動してくれます。


使い方は一緒ですが「さいなむ害鳥」の有効範囲がマップ全域なので、発電機遅延と索敵両方の効果を生み出す事が出来ます。

 

アーティストの背景物語

 

カルミナ・モーラは才能ある芸術家だが、幼い弟の死に自責の念を抱いていた。チリ南部、岩の多い沿岸の村で育った彼女は、パタゴニアの雄大なる風景を写生するのが好きだった。家の外に座り、隣にある木に巣作りしたカラスに餌をやりながら、印象深いフィヨルドを描く。

カルミナは子供の頃、母親が突然失踪したことを自分のせいだと思っていた。母親に見捨てられたのはお前のせいだと父親に責められたことで、母と別れた悲しみはさらに増した。そしてまだ自分も子供だったにもかかわらず、弟マティアスの面倒を見るのは彼女の役目となった。

1年後のある日、カルミナがマティアスと一緒に外で絵を描いていると電話が鳴った。父親は庭から動かず、ビールを飲んでいる。急いで家に入ったカルミナは電話を取って数秒で切ったが、外に戻った時にマティアスの姿がどこにも見当たらなかった。父親に聞くと、マティアスを全く見ていなかったと言う。カルミナは弟の名前を呼びながら、そこらじゅうを探し回った。すると家のすぐ近くにある小川に、明るい赤色の上着が落ちているのが見える。マティアスのジャケットだ。小川に飛び込んだカルミナが見つけたのは、瞬きせず、うつろな目で水面に浮かぶ弟だった。マティアスは川に落ち、溺れ死んでいた。

カルミナの突き抜けるような泣き叫ぶ声が空に響いた。川岸でカルミナを父親が見つけた時、彼女はカラスの群れに囲まれながら弟を両腕にしっかりと抱きしめ、すすり泣いていた。弟の遺体が父親に奪い取られると、カルミナは声が枯れるまで泣き続けた。

翌日の朝、世界はまるで暗闇に覆われたかのようだった。父親は何も言わなかった。言わなくても伝わったからだ。カルミナは、何もかもが自分のせいで起きたということを悟っていた。数ヶ月が過ぎても、弟を失った記憶は朝露のように鮮明だった。自己嫌悪に陥った彼女は絵も描けなくなってしまった。マティアスのいない人生なんて無意味だ。

マティアスの誕生日の朝、どんよりとした空の下、カルミナは家から少し離れたところにある狭い橋まで歩いた。自分に救いをもたらすものは何もない、彼女はそう確信していた。母親はいなくなり、弟は死んで、父親はすべてを自分のせいだと思っている。カルミナは、生きる糧をすべて失ったと思い込んだ。

橋の柵まで歩くと、その下には激しく流れる川が見えた。地元では「飛び降りスポット」と呼ばれている。車が何台か横切るも、誰も止まろうとはしない。誰も気に掛ける人はいないようだった。柵を乗り越え橋の縁に立つと、カルミナの足が震えた。見下ろすと、川の水が巨大な岩に勢いよくぶつかっては流れていく。カルミナは目を閉じた

すぐに会えるからね、マティアス。

すると突然、耳障りなカラスの鳴き声が空いっぱいに鳴り響いた。目を開けたカルミナが見たのは、自分のほうへと向かって飛んでくる黒い羽の大群だった。羽の大群が分かれて空が見えると、光沢のある黒カラスが上から飛び降りてきた。そのうち1匹が彼女の肩に留まり、まるで魂を覗き込むかのようにカルミナの目をじっと見つめている。カルミナが柵を持つ手をゆるめると、そのカラスはうるさく鳴いた。カルミナは困惑して、カラスを見た。

別のカラスが柵に留まり、また別のカラスも留まった。橋の柵はあっという間に集まってきたカラスで覆われ、カラスたちは彼女の側を離れようとしなかった。不可解で見定めるような目線を大量に感じる。まるで試されているかのようだ。一瞬でも下を見るとカラスの怒涛の鳴き声が響き、カルミナの悲観的な衝動は妨げられた。カラスは彼女の幸せを願っているようだった。縁からぶら下がった彼女の黒髪が風に揺れるなか、カルミナはカラスを自分と同類だと思った。マティアスが死んでから、初めて自分は独りではないと感じた。

カルミナは家に帰り、もう一度生きてみることにした。カラスは去ったが、自分の身に何かが起きれば戻ってくる気がした。

壮絶な体験に刺激されたカルミナは筆を手に取り、その後何週間もかけてその出来事を絵で表現した。黒インクを使って黒い羽の大群が群がる「飛び降りスポット」と、自分の命を救ってくれたカラスの群れを描く。その体験がきっかけで、彼女の特徴である黒インクを使ったシュルレアリスムの芸術が生まれた。

数年後には色彩が闇を突き破り、表現方法が変わったことでアート表現の幅が広がった。カルミナは人通りの多い街角で大規模の壁画を描き、壮大な衣装をデザインして、過激な詩を朗読した。カルミナのアートは地元で起きた近しい人の悲劇を表現したもので、そんな作品を見た地元民は彼女のアートを無視することはできなかった。そして彼女が芸術を披露する場には、どこにでもカラスがついてきた。

カルミナのパフォーマンスはますます目立つようになり、他の芸術家から「鼓舞するアートスタイル」が注目されるようになった彼女は、イコノクラスムの視点を理解してくれる画家のグループと付き合うようになる。彼女のパフォーマンスがきっかけで大規模なシュルレアリスム運動が起きると、社会現象にまで発展した。

名声を得たカルミナに「ヴァック・レーベル」という多国籍企業から仕事の依頼が舞い込んだが、このグループ企業を調べると、彼らが評判の悪い下院議員を選んで芸術作品を贈与していたことがわかった。ヴァックに仕事を委託されたアーティストたちは、その後姿を消しているようだった。

カルミナはヴァック社の政治汚職との関係性を暴こうと、同社の依頼を引き受けることにした。その翌週、カルミナは霊園にある地下墓室に巨大な壁画を描いた。作品の内容は、シュルレアリスムな死に神がチリ人農家の畑を刈り取るという、ヴァック・レーベルのロゴだ。壁画を描く時には、政治革命を詠った詩を縫い付けた演劇用のドレスを着ていた。

彼女の作品は汚職に関する過激な論争に火をつけ、それによってカルミナは批判の的になった。匿名で殺害の脅迫をいくつか受けたカルミナは、安全のため親しい友人たちを連れて父親の家に避難した。

その夜、覆面の武装集団が家に押し入りカルミナと友人たちを素早く取り押さえると、ワゴン車に乗せて走り去った。

次の日の朝、乾いた風に乗って飛んできた砂が顔に触れ、カルミナは目を覚ました。砂漠のど真ん中で、手足が縛られた状態で椅子に座っている。友人たちは縛られ、地面に横たわっていた。カルミナの顔に影がかかる。カルミナは見上げた。

長いローブに身を包み、黒っぽいフードをかぶって顔を隠した男が近づいてくる。男はローブから銀のナイフを取り出した。

カルミナの手を掴むと、男は聞いたことのない言語で聖歌を暗唱しはじめた。カルミナは男から目を離さなかった。男は暗唱をやめると、突然ナイフを一気に振り落とした。

カルミナが苦痛で悲鳴を上げ、目を覚ました友人たちが見た光景は恐ろしいものだった。カルミナの切断された手が砂に落ちている。

フードを被った男は満足げな笑みを浮かべた。これではもう絵を描けないなぁ?カルミナは男に向かって金切り声で罵りの言葉を浴びせながら、拘束から逃れようと身をよじらせた。

男はカルミナの顎を掴んだ。彼女は男に唾を吐きかけた。

男は低く唸ると彼女の口をこじ開け、舌を掴み出した。カルミナは手錠を外そうともがいている。男は強烈な一撃でカルミナの舌を切り落とした。

彼女は苦痛で喘いだ。男がローブでナイフを拭くと、血の跡が残った。これではもう詩を朗読できないだろう?

カルミナの胸が悲しみで押しつぶされる。苦みよりも鮮明だった。制御できないほどの怒りに圧倒され、嘆きと喪失感で正気を保てなくなる。カルミナは弟を亡くしていた。その痛みに立ち向かうための唯一の手段を、彼女は失ったのだ。カルミナは弟が死んだ日と同じくらい泣き叫んだ。

荒れ地に騒々しいカラスの鳴き声が響き渡った。空は黒い雲のつむじ風で覆われている。黒い鳥が血塗れになったカルミナの腕に留まった。見上げると、雲から激流のような勢いでカラスが飛んできて、フードを被った男に向かって突っ込んでくる。

飢えたカラスたちが男の肉体を容赦なくついばむなか、自分の描いたシュルレアリスムの作品が実現していく様子を見ながらカルミナは微笑んだ。

ところが、カラスのターゲットが地面に横たわる友人たちに移ったのを見て、彼女の心臓は怒りで飛び出そうになった。苦痛と罪悪感、恐怖の波が押し寄せ、カルミナは叫んだ。しかし叫んでも無駄だ。飢えたカラスは制御できないのだから。

友人たちの苦痛に満ちた叫び声が強烈さを増すなか、カルミナの目に闇が掛かった。誰かの死が訪れる。次もまた、彼女のせいで。

濃く、黒い霧がカルミナを包んだ。

~おしまい~

アーティストのアーカイブストーリー「学術書19」

記憶3602

彼女は床に座り、窓の外の鳥を見つめながら、薄い紙の上で鉛筆を細かく動かしている。そして鉛筆を容器に戻すと、もっと芯の柔らかい鉛筆を手に取り、その先を紙に押し付けた。一週間前にもらったばかりの12本の鉛筆は、どれも半分の長さになっていた。少し力を入れ過ぎた鉛筆の芯が折れる。

ドアの向こうでは父親が声を上げている。機嫌の悪い父親がよく口にする言葉だ。彼女は動揺することなくスケッチブックに荒々しく描かれた絵に平行線や輪郭を何本も加え続ける。

・・・子どもたちを甘やかしている・・・

彼女は鉛筆を削りながら、また気分が悪いとでも言おうかと考えた。夕食を抜いて部屋にこもって絵を描こう。彼女が食卓に来れば、両親は言い争うのを止めるだろう。しかし沈黙はもっと苦痛なものだった。皿をこするフォークの音。フォークをこする歯の音。それは言葉のない苦しみだ。

・・・将来のために準備させるんだ・・・

鉛筆の先が「瞳」に集中する。光の方向を想像し、跳ね返って瞳孔に映し出される様を表現する。

・・・ちゃんとした仕事につくために・・・

ドアがバタンと閉まる。カルミナの体が少しだけ震え、鉛筆の先が紙を、「瞳」を突き抜けた。彼女は息を吸い、スケッチブックをひっくり返した。

彼女の部屋のドアがゆっくりと開く。母親だ。

気分はどう?

悪くないわ。

母親は彼女からスケッチブックを取って、リュックを掴んだ。心配しないで。鉛筆ならまた買ってあげるから。でも、ちょっと荷物をまとめてちょうだい。

どうして?どこか行くの?かもしれない...カルミナ、何を描いているの?母親は目を細めて紙に描かれた真っ黒な鳥を見た。

カラスよ。今日、窓の外にいるのを見たの。

この辺では見かけない鳥ね・・・お父さんの本で見た鳥じゃないの?それか夢に出てきたんじゃない?

違うわ。今だってここに...

彼女が窓を指さすと、そこにあの鳥の姿はなかった。

記憶3655

ミナ、これなんて読むの?

カルミナはシートベルトを緩め、マティアスの方に身を乗り出した。ページの上の指は、長い単語の1つを差している。ムルシエラゴ。彼女がゆっくりと読み始めると父親の声がそれを遮った。

手伝うんじゃない。

彼女は単語を読むのを止め、父親を睨みつけた。必死でそれを読もうとするマティアスの目に涙が込み上げてくる。

カルミナは視線を膝に戻し、マティアスが見えるようにメモ帳の上に鉛筆を擦り始めた。彼は瞬きをして涙を払いながら、鉛筆が描く絵を見つめる。短い毛の生えた体に、薄っぺらの大きな翼に、小さな耳。

あ、ムルシエラゴ(コウモリ)。

弟はその言葉を簡単に口に出し過ぎた。カルミナはバックミラーに再び目を向けた。父親は一瞬驚いて眉をひそめたが、すぐにその表情は苛立ちに変わった。そして目線を変えることなく後ろに手を伸ばし、彼女の膝からメモ帳を取って空いた助手席に放り投げた。

自分で学ばせるんだ。

カルミナはそっと鉛筆をポケットにしまった。これまでもらった物の中で一番の贈り物だった鉛筆のセット。残りは一番使いにくい5H一本になってしまった。

マティアスが手を伸ばして彼女の手を握り締める。そして二人は黙ったまま車に肩を揺らされた。  

記憶3661


フロントガラスに雨が打ちつける中、カルミナの母親が運転する古い車が埃っぽい田舎道を駆け抜ける。ヘッドライトの薄暗い明かりは、細い三日月ほどの明るさしかない。マティアスは恐怖に怯え、疲れ切ってめそめそ泣いている。

大丈夫よ、マティ。すぐに休む場所を見つけるから。

左右に車を引っ張られながらも、母親がなんとか車を運転する。一対のヘッドライトが前方からやってくる。彼女はゆっくりと息を吐き、アクセルから足を離してハンドルの手を緩めた。

対向車が通り過ぎると、彼女は再び息を吐いた。そして手を伸ばしてマティにサンドイッチを渡した。前の座席の背もたれに光が当たり、カルミナは目を細めた。今通り過ぎた車が向きを変えたのだ。

お母さん…?

しーっ、ミナ、大丈夫よ。

母親が再びアクセルを踏み込み、軋むような音を立てながら不器用にギアを切り替える。その音にマティアスがまた顔を歪める。ヘッドライトがどんどん近づいてくる。ヘッドライトはもう一つ、いやもう二つ追いかけて来る。

ミナ・・・母親が娘に話しかける。その声はいつもと違う。まるで大人と話すような、オブラートに包まない口調だ。きっと彼らはあなたを壊そうとするわ。でもそれに負けちゃだめよ。

車に追いつかれるまで、それほど時間はかからなかった。最初の1台が体当たりすると、彼らの車はスピードを失い、道路脇へと回転した。3人は衝撃に備えて息を止め、車内が一瞬沈黙に包まれる。

しかしその沈黙は長続きしない。カルミナの横の窓が割られ、鍵を外した手が彼女を引きずり出す。カルミナは叫びながら弟に手を伸ばすが、その身体は追っ手に引っ張られ、その手は空中を掴むのみだ。弟は彼女の目の前でトラックの後ろに入れられ、彼女も別の車に放り込まれた。

母親の車のテールライトが再び点灯し、追っ手のトラックめがけて後ろ向きに猛スピードで走り始めた。しかし発進するやいなや3台目のトラックが突っ込んできて母親の車は動かなくなった。追っ手は車のエンジンをかけ、彼女の家に向かって走り出した。

カルミナモーラ、親父さんのところに帰るぞ。

記憶3709

カルミナは岩だらけの海岸に一人で座り、湾を眺めている。岩場には冷たい風が吹き抜け、カモメの鳴き声が響き渡る。彼女はそっと目を閉じ、潮風を吸い込んでから芝生の上に寝そべった。そして母親が去り、父親が残るという考えを頭から追い出した。手のひらに感じる柔らかい草だけに神経を集中させよう。

やがて穏やかなカモメの会話が静まり、聞き慣れない新たな鳴き声が彼女の耳に聞こえてきた。しわがれ声の切迫した叫び声。彼女はパッと目を開けるが、周りがはっきりと見えない。頭上の雲の中に浮かび上がってしまったのか…起き上がって目をこすると、別の風景が目に入った。

のんびりと空を舞うカモメの姿はもうない。代わりに耳障りな真っ黒の鳥たちがいる。あの時、窓の外にいた鳥にそっくりだ。鳥たちはゾッとするほど緊迫した様子で鳴き声を上げている。彼女は左に、そして右に顔を向けた。周りには何百もの鳥が立ち、翼を羽ばたかせている。

彼女は恐ろしくなり、リュックを掴んで家に向かって全速力で駆け出した。そして、鳥たちの叫び声が打ち寄せる波と甲高い風の音にかき消されるまで走り続けた。

ミナ?

マティアスが困惑した表情で彼女を見上げる。

マティ、今の聞こえた?あの・・・鳥たちが?

マティアスは彼女を見つめてから、おもちゃの車のほうに視線を落とした。僕には何も聞こえなかったよ。  

記憶3720

家の中は静まり返っている。マティアスが亡くなって以来、聞こえるのは沈黙だけだ。朝、カルミナは学校に行き、父親は仕事に出る。夕方、カルミナは家に帰り、食事をし、自分の部屋に閉じこもる。父親は夜遅くに帰宅し、すぐに眠りにつく。珍しく二人が口をきくときには、父親は前よりも残酷なことを言った。

その日はマティアスの命日だった。彼女は病気だと言って学校を休んだ。木にカラスの姿はない。あの鳥が窓から見えると彼女は恐怖を覚えたものだが、それがいないとより一層孤独を感じた。彼女は最後の鉛筆を耳に挟み、真っ白なスケッチブックを見つめた。手には安物の黒いペンを持っている。でも、何もアイデアが浮かんでこない。

カルミナは途方に暮れ、裏庭に向かった。そしてペンを折って、木の皮にインクを塗り付け、木に紙を押し付けた。指の関節が痛くなるまで押し続ける。紙を木から離して見てみると、インクはほとんど転写していない。ちょっとした汚れがかろうじて見て取れるだけだ。

彼女が家の中に戻ろうとすると、家の前に車が止まる音が聞こえた。朝ここで父親に出くわしたら、彼と話さなければならない。きっと怒鳴られるだろう。彼女は身をかがめ、窓越しに耳を澄ませた。

父親が家に入ってくる。そして、別の人間の足音も聞こえる。

ああ。彼女は絵を描くのを完全に止めてしまったんだ。

それはよくないな。

でも頼まれた通り、他のデータはまだ集めている。

分かった。彼女にプレッシャーをかけ続けるんだ。何か変化に気づいたら教えてくれ。

ドアが閉まり、家は再び静まり返った。カルミナは家の脇に忍び出て、角からこっそり様子をうかがった。父親と黒服の男が黒いトラックに乗り込んでいく。それはあの夜の黒いトラックにそっくりだ。彼らを乗せた車は猛スピードで出ていった。彼女は壁のそばで凍り付いたように座り込んだ。彼らは・・・自分のことを話していたのか?彼女の絵のことを?彼女の…データ?

彼女はずっと孤独だった・・・でも、孤独のほうがこれよりましだ。こんなの生きているとは言えない。

記憶3778


彼女があの橋に行った夜、すべてが変わった。どん底にいた彼女の元に、木にいた鳥が戻ってきた。そして他の鳥たちも。鳥たちは海岸で見たときのように叫び声を上げていた。でも彼女は恐怖を感じなかった。自分を見てくれる目。それは監視の目ではなく、ただ自分を見守る目だった···

街に抜け出すのは驚くほど簡単だった。父親は娘がそんなことをするとは想像もしていない。その日彼女は学校の前を通り過ぎて港へ向かい、小さな貨物船に忍び込んだ。以前の彼女なら怖かっただろう。父親も船乗りも黒いトラックの男たちも···でも今は違う。彼女はそのどれにも恐怖を感じなかった。自分は一人ではない。多分マティアスが鳥たちを送ってくれたのだろう。船が街に到着する。母親は以前、その街の美術学校のことを話してくれた。彼女はその足でその学校に向かい、美術学部を見つけ、開いているドアを叩いた。そして色褪せたリュックからインクが塗られた羊皮紙を取り出し、自分の最新作について話し始めた。

ピア・・・?

彼女の体が凍りつく。母親の名前だ。今なんて言いました・・・?

彼女が机のほうを見上げると、濃いひげを生やし、埃っぽいツイードのジャケットを着た70代の男性が見つめ返している。

ああ、悪かったね。ただ、君が私の昔の生徒によく似てたものだから。
...

カルミナは学校に入るには若すぎたものの、フィゲロア博士は彼女の指導に時間を割いてくれた。彼は、彼女の母親は類まれな芸術的才能に恵まれ、それは国に変革をもたらす可能性があったほどだと言った。そして母親が20年前にアートシーンから姿を消したことを話した。母親から最後に受け取った手紙はただならぬ内容で、そのとき妊娠していた母親は、生まれてくる子供に「彼ら」が何をするのか相当な恐怖心を抱いていたそうだ。

カルミナは彼から芸術に関する一般的な法則や歴史を学んだ。しかし、彼女が自分の才能を自由に発揮できるよう、彼があえて細かい指示を出さないことにも気づいた。君が生み出すアートは世界を癒すことができる。彼はそう言っていた。彼は少しずつ母親のことを話してくれた。母親が感じた恐怖のことや、描いているものが生きた本物のように「目の前に現れる」と母親が打ち明けたこと・・・カルミナは自分もそうだとは言わなかった。目の前に現れるカラス。霧。地面から伸びる爪。彼もそれを尋ねることはなかった・・・尋ねる必要もないのだろう。彼女はそう思っていた。

彼女は月に一度彼と会い、学校の近くで過激なパフォーマンスアーティストやビジュアルアーティストたちと一緒に暮らすようになった。仲間の中には学生や新卒者家出人がいた。強烈な個性を持つ若者たちと暮らすのは大変なこともあったが、学べることも多く、自分が尊重され、理解される空間で暮らせることが嬉しかった。特に最近名声が高まりつつある詩人のフローレスは、カルミナの面倒をよくみてくれ、彼女が言葉やパフォーマンスを使って自己主張できるよう促してくれた。春の足音が聞こえてくると、その家に住む仲間たちは明るく現代的な未来を見据えた学際的なショーを計画し始めた。

しかし春の訪れは、避けられない変化を意味していた。

記憶3791

あの日フィゲロア博士の行方が分からなくなった。他にも多くの者が姿を消していた。二度と彼から連絡がくることはないとカルミナは悟っていた。そのことはみんな分かっていた。

彼女の目の前で新しい家族がバラバラになっていく。各自が自分の部屋に閉じこもり、それぞれのアートに没頭する。誰もが自己表現することを恐れている。彼女は最初は一人一人に、そしてコミュニティ全体に話しかけようとした。二度と静まり返った家に住むつもりはない。

彼女はみんなで話し合うため、全員を居間に呼び出した。フローレスも椅子で前かがみになっている。

私たちのショーについて話したいの。

テキスタイルアーティストで洋裁師のトーマスが鼻先で笑った。ミナ、まさか本気じゃないよな。そんな口の利き方はないとフローレスが彼を咎める。そして二人の口論が始まった。画家のルイスが二人をなだめようとするが、口論は悪化するばかりだ。

カルミナの脳裏に両親が喧嘩する姿が蘇ってくる。そして、その後に訪れる氷のような沈黙。それは何日も、何週間も続いた。彼女があの頃感じた、どうしようもない孤独感···

彼女はふと、家の正面にある大きな窓から外を眺めた。木々がいつもより黒ずんで見える。

カラスたちだ。

鳥たちは家の中の口論に対抗するかのように騒がしく鳴き始めた。あの日海岸で耳にしたのと同じように・・・絶え間なく続く、狂ったような鳴き声・・・

いい加減にして!

彼女の声に同居人たちが凍りつく。彼女自身も自分の大声に驚いて固まってしまった。カラスたちも一斉に鳴くのを止め、彼女は自分に集まる何百もの視線を感じる。

私は長い間、恐怖に怯えて生活していたの。あの頃にはけして戻らないわ。

~おしまい~